第20話 緊急訓練
9月13日 8:40
新学期から数日、モノセロス学園1年4組の教室は、少しざわついていた。俺とセージが父親を亡くしたため休んでいたのが、今日初めて登校できたこともある。しかし、それ以上に、エヴァンス先生が来ていないことが原因だろう。彼はいつも必ず、8時40分から始まる朝会の5分前に教室に来る。それなのに、今日は朝会の時間になっても現れない。みんな、「何かあったのだろうか」、「休みなのだろうか」、「休みだとしたらもしや今日は最高なのか?」などと考え、話している。
急に、頭の中にエヴァンス先生の声が聞こえてきた。「おはよう、魔法科の生徒たち。夏休み、最悪の出来事があったのは覚えているはずだ。そこで、この学校では緊急訓練を行おうと思う。今日の俺は悪の魔法使いで、これから襲撃を始める。被害を最低限に抑え、悪の魔法使いを捕まえるのがお前たちに課せられた試練だ。精々頑張れ。」音声がプツっと切れたかと思うと、外で大きい音がして、地面が揺れた。
俺たちは全員外に出た。…が、思っていたものと全く違う光景に驚いて足を止めた。
グラウンドが、火の海と化していたのだ。振り返ると、学校が崩壊しかけ、悲鳴まで聞こえる。
上まで飛んで町を見渡すと、家々が燃え、学校と同じように崩壊しかけたり、既に崩壊しているものもある。
周りに魔法使いは見当たらないが、エヴァンス先生と、ペリドットらしき若い男2人が学校の屋上にいた。
俺はとりあえず下に戻ると、クラスメートの中の7人に消火活動と国民の救出を指示し、チームの5人で作戦会議をしてから屋上に向かった。俺とセージは敵の正面から、アレクセイとマックは背後から、キャシーは瞬間移動で頭上まで飛んで行った。
「目的は何だ?」俺はエヴァンス先生に聞いた。
「この国を滅ぼし、もう一度作り直すことだ。俺たちの望む国は今のものじゃない。」そう言うと敵は全員で炎を出し、こちらに向けてきた。
俺とセージが目の前に滝を出してその火を止めると、後ろから来ていたアレクセイとマックが敵に向かって波動を出し、動きを止めてくれた。
そして真上からキャシーが網を落として敵を捕まえた。「その網には油がついてるから、火を出すとあなたたちごと網が燃えるわよ。」
「今の彼女さ、超かっこよかった。ギャップ萌えってやつ?まじで最高だよ彼女。」セージが何かこそこそと言い出した。
「今はそういうのいいから。…いつでも嫌だけど。」俺はそう言いながら敵全員に金縛りの魔法をかけ、マックが作ってくれた檻に飛ばした。
金縛りの魔法を使った瞬間、今まで見えていた光景は全て消え、炎や壊れた建物が元通りになった。全て彼らの出した幻覚だったのだ。
「お疲れ様。やっぱりお前たちは強いなあ…。」訓練後、クラスの全員が教室に集合したのを確認して、エヴァンス先生が言った。「この二人はさっき一緒に敵役をやってくれたハリーとクリスだ。モノセロス学園を去年卒業しているお前たちの先輩方。」
年齢的に学園に俺たちの先輩はいないので、先輩という存在に初めて会った。ハリー先輩とクリス先輩、二人ともとても優しくて、強かった。また会える日が楽しみだ。
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