第15話 何で死ぬんだよ
9月1日 9:47
俺がワープした空の真下では、セージがまだ巨大化している腕でジョーを掴んでいた。
ここは元々海が広がっていたはずだが、セージが凍らせたのだろう。
ジョーは首だけではなく、上体をがっつり掴まれている。骨のきしむギシギシという音が聞こえてくる。
俺は氷の上に降りたが、俺の手でジョーを倒したり、セージを手伝ってやる気はない。
この敵はセージが一人で封印したいだろうと思ったからだ。別にセージの脳内を覗いた訳ではない。幼馴染みの勘だ。
そろそろジョーの肋骨が全て折れてしまう、そう思ったその時、ジョーが犬歯を鋭く伸ばしたかと思うと、それでセージの手に噛み付いた。最初の何回かは手から血が出るくらいだったが、ついに貫通まで行ってしまった。
流石のセージも手を緩め、元のサイズに戻った手の出血を止めようとおさえる。「くっそう…こうなったら正々堂々と戦うぞ!魔法なしの拳勝負だ!」相手の肋骨を何本も折っておいて正々堂々などと言えるものだろうか?
セージがそのおかしさに気付いているかは分からないが、少なくともジョーは不満を持っているようだった。
セージはジョーが何か言う前にジョーに殴りかかっていった。ジョーは勢いで後ろに倒れ、その顔をセージが殴る。「俺の父さんはなぁ、いつも馴れ馴れしくて、友達みたいな態度取ってきやがって、それでいて厳しくて、勉強しろ、訓練しろってうるさくて、愛情表現が下手で、逆ギレばっかりして、地雷が多くて…それで…俺の父さんなんだよ!」そう言いながら、泣きながら、何度も殴った。次は胸ぐらをつかむと、「何も言えなかったじゃねえか…!何も話せなかった…。死ねって思ったこともある。消えろって言ったこともある。でも何で本当に死んじまうんだよ…!何で殺すんだよ!今までのこと謝りたい…。最後にかけた言葉…うるせえクソ親父って…謝りたい…今までのことも全部!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!」と嗚咽をあげた。そうだ、確かセージは反抗期で、父親と仲が悪かった。
ジョーの顔はぐちゃぐちゃで、痛々しかった。でもやつは、魔法を使ってセージをふっ飛ばした。「お前らが先に俺の父さんを殺したんだろうが!」
「は?」俺とセージは同時に声を出した。
「キラージャック様は生まれたばかりで捨てられていた俺を拾って下さったのだ。例え本当の父親でなくても、あの御方は俺を育てて下さった…。俺の父さんを、お前らは殺したんだ!だから仕返しにお前らの父親も殺してやった。どうだ、分かったか?自業自得なんだよ。」
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