第14話 ずっと遠くで呼んでくれる人
9月1日 9:31
俺は父上の方に気を取られ、背後でジョーが斧を振り下ろそうとしていることに気付かなかった。気づいた頃には既に斧は首上5cm程まで来ていた。諦めて、俺が先に死ぬのか、と思ったその時、ジョーごと向こうへ引っ張られて行った。
セージが手を巨大化させ、ジョーを掴んだのだ!
そう言えばセージの父親は血を流しながら床で倒れていた。
「ここは俺に任せろ。」
「ありがとう、セージ。お前の父さんも一緒に手当てしてもらうよ。」
「いや、その必要はない。もう死んでるから。」…え?死んだ…?俺の思考は止まったが、セージはジョーの首を締めている。「後頭部を強く打って死んでる。俺はこいつと離れるから、お前はお前の父さんに集中しろ。」そう言うとセージは、ジョーを掴んだまま、飛び立って行った。
「レオ…」父上が俺の手を弱く引っ張る。
「父さん、今傷の手当をしますから。喋らないで、深呼吸して下さい。」俺はまた魔法をかけようとした。
しかし父上はまたそれを止める。「手当ての魔法は体力がいるだろう。お前は次の戦いに備えて体力を温存しなければな。わたしも、もうそろそろ死ぬ。世代交代というところか。」そしてフッと笑った。
「何てこと言うんですか!まだ、俺は何もできない。待って下さい、父上…!」
「一昨日倒れた時、この光景を夢で見た。人生初の正夢だった…。だから昨日、遺書を書いて、この部屋の机に、しまって、おいたんだ…。分からない、ことも、それを見れば、きっと、解決するだろう…。そうだ…図書館を、見て、みるといい。ペリドット、という本を、読むと、考えも、晴れ、目標を、定め、自覚を、持つことが、できる、だろう…。レオ、最後に、これだけ、言わせて、くれ。お前、は、わたしの、自慢の、息子だ…。」父上はそう言って微笑むと、俺から手を離した。というより、息絶えた。
「父上…?そんな、嫌だ!帰って来て!父さん、父さん!!!!嫌だぁぁぁ!!」いつも遠くで俺を呼んでくれてた父さんが死んだ。その俺には到底信じられない事実が、俺を押しつぶそうとしてくる。叫んで叫んで喉が疲れて、嗚咽と共に涙が溢れてくる。「…セージ…。」そうだ、セージも父親を亡くしている。それなのに、どうしてあんなに自我を保てるのだろうか?無事なのか?今頃どうしているのか?どこへ行ったのか?ジョーは?魔力量だと完全にジョーがセージを上回っている。次はたくさんの疑問が押し寄せてきて、俺はセージのところにワープした。
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