第13話 父上!

 9月1日 9:18

 「俺がジョーの相手をするから、みんなは魔物を退治してくれ。出来るだけ死体処理しやすい殺し方で。セージは俺のサポートに回ってくれ。常時脳内を見て作戦を読み取って欲しい。」俺は共に森に来たチームの仲間と城のペリドットに指示をした。

 目の前にいるジョーは、何十、いや、何百もの魔物を引き連れている。魔物は一応生物という分類に入るが、生物を作り出す魔法は存在しない。きっとジョーは森中の魔物をかき集めて来たのだろう。一気に倒せるいい機会だ。

 俺含め全員が戦闘態勢に入る。

 「かかってこい、ジョー。」という俺の言葉の後、ジョーは俺に拳で攻撃を仕掛けてきた。魔法は使わない作戦だろうか。セージも驚いている。

 他の皆も魔物退治を始め、俺とジョーとセージ,他の皆で場所が分裂していった。

 まだジョーは魔法を使わない。俺も意地になって魔法を使わず、殴り返したり蹴りを入れたりする。

 「俺はお前より魔力量が少ないらしい。」こいつ、任命式の様子を見ていたのか。

 「だから魔法を使わずに戦ってるんじゃないのか?俺が魔法を使ったらお前死ぬぞ。」

 「使ってみろよ。男気がないなんて言わないから。お前は俺より下だ。」

 この言葉に腹を立てたのは俺ではなくセージだった。彼は魔法で油の塗られた鎖を作ると、それを敵の首に巻き付け、炎を出した。「今すぐその言葉を撤回しろ。さもないと本当に殺すぞ。今回は封印じゃ済ませない。」

 「撤回なんかするもんか。事実を言ったまでだ。今だってお前ら二人とも、何も分かっちゃいない。」

 敵が全て言い終わる前にセージは鎖に引火したが、ジョーはふわっと消えてなくなる。

 敵が消える直前、俺は気付いてしまった。「セージ、あいつ影がない!分身だ!」

 セージも勘付いて、二人で森を飛び立つ。「きっとあいつは城だ。父上を狙ってる。父上が俺の相談役になるだろうと思っているんだ。」事実だけど!

 

 「父上!」俺とセージは父上の自室に入った。そこには、床で頭から血を流している大臣、金縛りにあっている側近、ベッドで眠る父上とその腹に短剣を刺そうとしているジョーがいた。

 俺はジョーを金縛りにかけたが、短剣が見当たらない。

 「ゔっ…。」という唸り声で父上の腹を見ると、短剣が刺さっていた。ジョーは短剣を透明化し、金縛りにあうより前に落としたのだ。

 俺は言葉も出せずただ父上に駆け寄り、治癒の魔法をかけようとする。

 …背後にいる敵も気にせずに。

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