第12話 新国王任命式

 9月1日 9:00

 城のバルコニーには、車椅子に乗った父上と、セージの父である側近、大臣がいる。下の広場では俺やセージを含めたペリドットが整列しており、その後ろに国民がゾロゾロと集まっている。ペリドットはジョーを除いて全員揃っているが、国民は全員ではない。任命式の様子は脳内で見れてしまうが、やっぱり生で見たい!という人しか城へ来ていないのだ。

 ラッパが鳴り、「皆の者、これから新国王の任命式を行う!」と大臣の声。

 国民や他のペリドットがざわめく中、俺は昨日の父上の言葉を思い出して、緊張していた。あの様子だと、次の国王は俺だ。昔から自分は国王になるだろうとは思っていた。でもこんなに早いとは。確かに高校に入って魔法を更に学ぶことになって、自分の魔力量が増えたことは分かる。そして、それが父上を除いて国内一位だということも。当分は父上に助言を頂くことになるだろう。

 「今から発表するのは、魔力量の大きさをトップ10化したものだ。これで一位になった者が国王となる。」父上の声が優しくもしっかりと響き渡った。

 大臣がトップ10の名前が書かれている紙を広げ、それを父上が拡大する。父上は汗を流し、苦しそうな顔をしていた。やはりあれだけでもきついのだろうか。

 「五位、クリス・ジョンソン。四位、セージ・リュカ。三位、ジョー・ギラドス。二位、トニー・リュカ。一位、レオ・ユルヴィル!」俺の名前が呼ばれた瞬間、この場が拍手と歓声と少々のブーイングに包まれた。

 「ということで、新しい国王はレオ・ユルヴィルとする。」

 大臣がそういった瞬間、大地が揺れた。

 「襲撃だー!!!」という声がどこからか聞こえ、俺はバルコニーへ飛んで父上の元へ寄る。「指示を!」

 「国王はお前だ。お前が指示をしろ。私はもう戦えない。」と父上。

 俺が決断を迷ってしまうと、敵はどんどん攻めてくる。だから俺は、俺の脳内以外にスローモーションの魔法をかけた。

 まず、敵の大将を探した。現在使われている魔法を確認してみると、森から大地に波動を送っている者があった。ジョーだった。敵の大将はジョーであるやつが森にいるということは、森の魔物たちをたくさん引き連れている可能性が高い。幸いペリドットは城に集まっている。

 俺は時間を遅めたまま、「俺含めたチームの5人、城の魔法使いは森へ行き、敵の封印に集中する。前のように国民をモノセロス学園へ避難させ、魔法科の先生とプロの魔法使いはバリアを張ったり魔物の襲撃に備える。生徒と余りの魔法使いは地域ごとに見回りをし、避難しそびれた国民がいないか探す。また新展開があればその度連絡する。」とジョー以外のペリドットの脳内に送り、時間の流れを通常通りに戻した。

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