第5話 鼻高いと鼻血って似合うんだよねぇ…

 4月9日 8:35

 入学して二日目。

 「今日は体力テスト,実力テストを行う。今すぐジャージに着替えて、グラウンドで待ってろ。」襲撃の時お世話になった、魔法科のエヴァンス先生が言った。


 うちのクラスは生徒が10名しかいない。そのため、普通科とやることが同じ体力テストは3組と合同でやる。学年全体の人数は130名。その内1,2,3組は普通科。4組は魔法科だ。

 合計50名が広いグラウンドに集合し、クラスごとに並んだ。

 「これから体力テストを始めます。まず、3組は走り幅跳びから。4組は長距離走から。はい、移動開始。」


 体力テストでは、やはり魔法は禁止されているため、素の筋力・持久力・柔軟性などが問われる。だからこれはあまりメンバー決めには関係ないだろう。とりあえず良い記録を出すことに集中しよう。

 「ペアになって、タイムを測ったり、それを記録したり、応援をしてあげろ。男子は1.5km。女子は1kmだ。くれぐれも怪我はしないように。回復の魔法は体力を使うし面倒だからな。」


 「6分15秒!」走り終わって息を整える俺に、ペアのセージが言った。

 また平均値かよ。幼い頃から魔法以外は何でも平均値だった。悔しさと疲れで地面に寝転び、ゼエゼエと荒い呼吸をした。

 「大丈夫ですか?相変わらずかっこいいですねぇ…。息切れもストライクゾーンなんです。」いつの間にか俺の顔の真上にデイジーの顔があった。

 「タメ口でいいよ。」俺は前から気になっていたことを言った。何だかスッキリした。

 「次、合同でソフトボール投げみたい。ボール拾い一緒にやらない?」

 …それってボールが当たって気絶すること期待してる?なんて言おうとしてしまった自分がまた悔しい。


 俺とセージとデイジーは、ボール拾いをしようと移動した。

 3人で10mのラインに並んでいたが、いつの間にかセージとデイジーが5mほどに後ろに行っていた。

 それに気付いて振り返り、2人に向かって「おい!」と言った時、他方から「危ないぞ!」と声がした。しかし声に反応して向き直った直後、3組の男子が投げたボールが俺の鼻に直撃した。 

 

 「次、4組ー!」3組の生徒全員が測定を終え、俺達の番になった。

 デイジーはボールがぶつかったことによる俺の鼻血の手当をした後、「鼻高いと鼻血って似合うんだよねぇ…。んでもって肌が白いと血が似合うんだよねぇ…。あぁ、かっこいい。」と呟いている。

 そんなことは無視して、「あの子、今年の一年で一番可愛いって言われてる子じゃね?」ソフトボールを片手に準備を整えている少女のことを指差して、セージが言った。

 「そう言えば、うちのクラスでも話題になってたよ。4組で唯一の女子、モテるためだか何だか、魔法で顔イジったのかなって。」

 「そんなの高校生に出来るわけないだろ。元が可愛いんだよ。」セージのテンションは上昇していた。

 「10m!」誰かが彼女の記録を口に出す。

 「なあレオ、彼女チームに入れるのはどうかなぁ…?」セージはお菓子をねだる子供のように、目をキラキラさせて言った。

 「またそうやって勢いでチームに入れようとして…。いいか、もっと慎重に行こう。」

 「ごめん、もうテレパシー送っちゃった。良いって返事も来てる。」

 「セーーーーージィィィ!!!!!」

 

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