第4話 変人だ…!
4月7日 12:03
ふと目が覚めて、上体を起こした。
「あっ、レオ。起きたか。」さっき気絶した場所から少し離れた森にいた。セージが運んでくれたのだろう。
「俺、どのくらい気絶してた?」痛む後頭部をさすりながら、俺は聞いた。
「30分くらい。まだ痛むか?」
「あぁ、でも多分大丈夫…」と言って顔を上げた目の前に、知らない女子がいた。
「…女子がいる!?」
「かっこいい…。」
「誰ですかっ!?」女子に慣れていない俺はセージの後ろに隠れた。
セージが「俺もよく分かんないんだけどさ…」と言うと、「私の名前はデイジー・ドナシアンです。モノセロス学園の普通科、高校一年生です。あの、さっきの戦い見てました。ほんとにかっこよかったです!」と早めの口調で女子が言う。
セージは「え?あ、まあな。正直あんな弱っちいの俺の相手じゃないけど…」と照れて顔を赤くした。
しかしデイジーが「えっ?あ、あなたもかっこよかったですけど、それ以上に…」と俺に手を伸ばしてきた。「あなたがすっごくかっこよくて…。」
「うぇえぇぇっ!?普通かっこいいのって敵を倒したやつじゃないの…?」セージは恥ずかしさとショックでしゃがんでいた身をさらに縮めた。
「それより、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺はセージ・リュカ。こっちはレオ・ユルヴィル。こいつ女子の前だと話せなくなるから気を付けてね。」聞き取るのがやっとなくらいの声量でセージが言ってくれた。
デイジーは俺の怪我の手当をしながら、「私、やられてる人が好きなんです…。」と聞いてもいないのに話しだした。
俺は気になって「やられてる人…?」と聞いた。
セージは元気をなくしてだんまりしている。
「そう。頭や首を打って気絶してたり、殴られてたり、切られたり、首絞められてたり…。ただし、いつもはクールで顔も整ってる人に限ります!さっきのあなたなんかどストライクでしたね。」
「あんまり嬉しい言葉ではないけど…。」
「血よりかは拘束系の方が好きなんです。鎖や縄で縛られてるやつ。血まで出ちゃうとちょっとやりすぎかなー、みたいな?あと、顔をむぎゅーってされてるのも好きですね。」
だんだんデイジーの話に興味を持ち出したセージが、「こう?」と言って両手で俺の顔を挟み、「むぎゅ」と言った。
デイジーは「あ、可愛い。でもそれよりも…」と笑うと、片手で俺の顔を、もう片方の手で右手を掴むと、顔を押し出して手を引っ張った。「こっちですね。わぁ、かっこいい!」
俺が「ギブ!!!」と掠れた声を精一杯出すと、「あ、すみません。」と言って手を離してくれた。
「特殊な性癖をお持ちなんですね…。」とセージがつぶやくいたが、そんな言葉ですまされない。この人変人だ…!
「だから、昔からたくさん冒険の本を読んでは、怪我ばかりの登場人物にキュンキュンしてたんです。」
するとセージが「それなら、チームのマネージャーか何かに…」と言いかけた。
「ちょ、セージ!?」それ以上言うな。こんな変人、もう関わりたくない…!
「えっ、チームって?」デイジーはかなり興味津々だ。
「魔法使いの若手チーム!作ることになったんだよな、なあ、レオ?」セージ、まさかこの変人が気に入ったのか…?
デイジーは「マネージャー、やりたいです!」と俺の返事を待たずに言った。
俺は「で、でも…危害を加えられたら迷惑どころじゃ済まないし…。」と言った。
「大丈夫ですよ、私自分から怪我させたりしないんで。」
「だってさ!いいじゃん、レオ!」そう言うセージは乗り気だ。
俺は「もう…!仕方ないなぁ…」数十分も二人から説得され、ついにデイジーがマネージャーになることを承諾してしまった。
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