第2話 最悪な魔法使いの襲撃
3月25日 6:06
「レオ、起きろー!」ドアの向こうでセージ・リュカの声が聞こえる。彼は俺の幼馴染みで、国王である父上の側近の息子。この親子もペリドットだ。
「うんうんうん、今起きた。ありがとう、セージ。」俺はベッドの上で上体を起こし、目をこする。俺の名前はレオ・ユルヴィル。次世代国王候補だと言われている。
支度を終え、部屋を出ると、セージは壁に寄りかかって待っていてくれた。「おはよう、レオ。最近目覚めが悪いな。」
「おはよう。今日も長い夢を見たような気がするんだよ。でも、どんな夢だったのか全く思い出せない。」食堂に向かって歩き出すと、セージもついて来てくれた。
「なんか、今、光らなかったか。」俺の投げかけた話題を無視して、窓の外を見ていたセージが言う。
俺はセージと同じように窓から外を見た。
が、普通では何も見えなかったため、魔法で視野をズームして見てみる。すると、遠くから物凄いスピードでこちらに接近してくるものがあった。よく見てみると直径1m位の岩がいくつも飛んできていた。その行く先は…
「父上!」
父上の部屋だと分かった瞬間、俺は走り出していた。もちろんセージもついて来てくれている。岩の速度に追いつけないと分かると、父上の脳内に直接警報を鳴らす。
その直後、岩が城に激突した。
「俺は父上の様子を見てくる。だから、お前は敵を見つけて攻撃をしかけてくれ。」
セージは「分かった。」と言って城にめり込んだ岩を魔法で持ち上げ、戦闘準備にかかった。
俺が父上のもとについたとき、父上はすでに体勢を立て直して戦闘準備に取りかかっていた。
「父上、お怪我は?無事なのですね?ご命令をお願いします!」
「私は大丈夫だ。敵はきっとキラージャック。私が相手をするから、お前を含めた城にいるペリドットは他の城の者たちを守れ。国民全員、モノセロス学園に避難させろ。後は分かるな?私が合図を出すまでそこで待っていろ。攻撃が来たら反撃を仕掛けてもいい。だが、あまり離れないように。町のペリドットたちにはもう避難するよう指示を出した。城のペリドットにだけ伝えろ。」
俺は「分かりました。どうか、ご無事で。」と言うとぐちゃぐちゃになった部屋を出て、城のペリドットにテレポートで指示を出す。
城を出る途中でセージに会い、「敵は見つかったか?」と聞く。
「いや。でも、キラージャックなんだろ?そいつを相手にできるほど俺は強くない。正直不幸中の幸いだよ。」
キラージャックとは、現在悪の魔法使いの中で最も強い男だ。数年前に一度同じような襲撃を仕掛けてきたが、父上が肉片にして海に散りばめたはずだ。回復が完了したのだろうか。
俺とセージを含めた城のペリドットが全員、唯一魔法を学べる学校、モノセロス学園に到着した。魔法科の先生と見られる人が国民を案内している。他のペリドットたちは避難している小さな子供に魔法を見せて泣き止ませたり、学園の外にバリアを貼ったりして様々な活躍を見せている。現在プロの魔法使いは30人程だが、魔法を使えるペリドット自体は200人程いるのだ。これなら確かに安心だろう。
「あの、俺たちにも何かできることを指示していただけますか。」一通り案内を終わらせた先生に聞いた。
「北の方の見回りをして来てくれ。まだ避難できていない国民がいるかもしれない。いなかったら国王陛下と敵の様子を邪魔しないように見て、出来そうなら応戦。ただし、安全は第一にな。」流石は教師。指示がテキパキしているし、安全を優先している。
「北は全員避難したようです。」見回りを一通り終え、テレパシーで先生に伝えながら、俺とセージは城へ向かった。
城では父上とキラージャックの戦いが終盤を迎えたようで、キラージャックの魔力量がだんだん小さくなっていた。
俺はまだ元気そうな父上に「応戦しましょうか。」とテレパシーを送った。少しすると、「多分あいつの弱点は視野が狭いことだ。後ろから巨大な箱か何かで閉じ込め、封印する。」と返事が来た。
俺はセージに作戦を伝えると、父上にビーム攻撃を仕掛けている敵の背後へテレポートした。
敵はゼエゼエと荒い呼吸をしながら、またビームを出そうとした。しかし、それを父上が阻止するよりも前に、俺の作った巨大な箱をセージが念力で押し出し、敵を閉じ込めた。
そしてすぐ父上が魔法をかけた上に暗号を作り、遠い海の底まで飛ばした。
キラージャックの封印が完了したのだ。
「失礼します。」ノックをした後そう言って、父上の部屋に入る。
あの戦いから5時間ほど経ち、城の修復や父上を含めた怪我人の治療も完了した。
父上は「おう。座れ。」と言って目の前の椅子に座るよう俺にすすめた。俺が父上に言われた通り椅子に座ると、「今日の襲撃で分かったことなんだが…俺の力もやつのせいで弱体化してきている。今日のような事件が次もあるとすると、もっと戦闘能力や団結力があった方が国民も安心してくれるだろう。だから、若いチームを作りたいと思って。」
この国には軍隊がない代わり、プロの魔法使いがそれぞれ自由に活動している。
「なるほど。それで、そのチームに俺が入れと?」
「入れというよりかは、作れ、だな。お前がリーダーとなって6名のメンバーを選び、チームを率いるのだ。」
「俺が、リーダー?」
「次世代国王候補として、皆を引っ張る力を養おうという考えだ。どうだ、やってくれるか?」
俺の答えはもう決まっていた。「もちろんです。責任を持ってやらせていただきます。」
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