発狂の前兆

 「ただいまー。」

 「おかえりー。」

 午後7時頃、誠四郎fが家に帰ってきた。

 いつもは飛びついてくる透華。今日は台所からボコボコボコというおいしそうな音が聞こえる。珍しくまだできていないようだ。

 「ごめんね、もうちょっとで出来るから。」

 手伝おう。そう思ったせ誠四郎は、スーツをハンガーに掛け食事の用意の手伝いをし始める。しかし、それを透華の手が止める。

 「せーちゃんは疲れてるんだから椅子に座って休んでて。」

 「でも・・・」

 「私がしたいからしてるの!せーちゃんには私が作って、用意した料理を食べてほしいの!」

 したいと言われてしまっては、もう何も手を出せない。

 「わかったよ。じゃあお願い。でも急がなくて良いからね?」

 「うん。大丈夫もうすぐだから!」

 たったったった。

 「行っちゃった・・・」

 キッチンに戻った透華は、手慣れた手つきで料理をしていく。そんな透華だが、料理は誠四郎と透華が同棲する少し前だった。今では誠四郎も多種多様な料理で胃袋をがっちり掴まれている。

 少しずつ食事の用意がされている中、誠四郎は食卓に肘をつき、大きくなった透華の背中を見つめていた。

 (頼もしくなったなー。)

 思い浮かべているのは、高校生の頃。いつも誠四郎の背中にくっつき、甘えてくる透華は、すごく素直で、何かあれば簡単に壊れてしまいそうな危うさがあった。

 懐かしくなる時もある。でも、今の頼もしい透華は昔にはなかった気高さがあり、より一層魅力が増した。

 (まぁ、今も可愛いけどね!甘えてくれるし!)

 

 これがまさしく惚気である。


 「できたよーって、ニヤニヤしてどうしたのせーちゃん?」

 ニヤニヤというより、ニマニマとした笑顔を浮かべている誠四郎に、頭を傾げる透華。

 「何でも無いよ。」

 誠四郎はそう言ってはぐらかした。

 「えー教えてよー。」

 「ダメだよー。僕の秘密。」

 「えー教えてよー。」 

 「でもこれ言うと、透華が顔真っ赤にするからなー。」

 最近からかうこ覚えた誠四郎。

 「赤くしないもん。」

 そんな本音を言うと、透華は耳まで顔を真っ赤にする。

 

 「そういえば透華、今週の土曜日空いてる?」

 ポスポスと子供の照れ隠しのように誠四郎の背中を叩く透華は、唐突にあげられた問いにキョトンとした顔を浮かべる。

 「う、うん空いてるけど・・・。」

 

  ちょうど今日の帰り際。

 「お、いたいた。おーい。誠四郎-。」

 小学校からの親友 桜井正人は、誠四郎を見つけるなり、爽やかな笑顔を向けて向ってくる。

 「相変わらずイケメンしてるね、正人。」

 それに対して、あきれ顔を浮かべながら正人を茶化す。

 「誠四郎が茶化すことを覚えるなんて!?昔はあんなに純粋だったのにー。しくしく。」

 「馬鹿にしないでよ、あのときは疑うことを知らなかっただけだよ。僕が何年社会人やってると思ってるのさ。」

 「6年だな。」

 「そういうことじゃない。」

 「全く、合うたびにからかってくるんだから。」

 「まぁまぁ冗談はここら辺にしてさ、本題に入るんだが、うぉっほん。そのーだな?」

 「?」

 わざとらしく咳き込みをした後、少々気まずそうにし出す。

 「どうしたの?」

 

 「そのー俺結婚するだろ?」

 「うん。」

 「だからーそのー・・・」

 

 「もしかして友人代表スピーチのこと?」

 「うぇ?な、なんで・・・」

 「結婚式って聞いてもう用意してるよ。」

 「誠四郎、ありがとう。」

 「友人の晴れ舞台だからね。」

 「あと、」

 「ん?」

 「幸崎とはどうなんだ?」

 先ほどの感無量と言っ表情から一変、にやりと実に悪そーな表情を浮かべている。

 「そりゃもう、ラブラブだよ。正人の夫婦仲よりね!」

 「ほう?言いやがったな!」

 

 というのも、ここ2ヶ月仕事に追われていた誠四郎は、あまり透華との時間を作ることが出来なかった。そんな時に正人の結婚式の準備の手伝いである。隙間隙間で手伝ってはいたものの、そのほとんどは透華に任せっきりになってしまっていた。

 仕事はプレゼントのためとはいえ、透華も休暇は必要であるし、誠四郎自身透華との時間を過ごしたかった。幸い、今月の残業時間はかなりのものとなり、自称ホワイト企業である誠四郎の会社の上司からは、そろそろ休んでくれと何度も言われていた時であった。じゃあいっそ、長期休暇でもとって旅行でもしようと考えたのだ。

 「でも、なんで。」

 突拍子もないことに頭をかしげて頭にはてなを浮かべる。

 (うん。すごく可愛い。元々美人顔である透華が小動物みたいな挙動をしているのがたまらなく可愛い。)

 「ね~せーちゃーん。」「ね~ね~。」

 一向に答えようとしない誠四郎の体を揺らし、駄々をこねる子供のようにせがむ透華を、孫を見守る高齢者のように非常に和んだ表情を浮かべる誠四郎。

 精神年齢の差が垣間見える。

 「は、いけないいけない。どうしてかだったね。」

 


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あとがき

 一ヶ月ぶりですね~。久しぶりSニックです。今回はこんな感じでどうでしょう?次回がいよいよヤンデレなので、私としてもとしても非常に楽しみです。

 雑談なのですか、プロセカにクリア難易度が全然上がらないのでどうすれば良いですか?ちなみに親指勢です。

 それではここまでにして今回もここまで読んでくださりありがとうございました。

 誤字脱字 改善点があればコメントで教えてください!それではまたね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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