妄想

 4月1日、午前7時頃。

 「行ってきまーす。」

 「あ、せーちゃん待って。」 

 ちゅ

 「行ってらっしゃい!」

 熱々のカップルの姿があった。

 もうお互いもう付き合って5年だというのに、毎度同じように行き帰りのキスをしている。


恋人愛と言うには十分すぎるだろう


そう十分過ぎる程に。



ぺら、ペラ。

誠四郎が仕事に出ている間、透華はというと結婚祝いの準備をしていた。


というのも、桜井正人が結婚式をあげるのだ。

お相手は、田代由美子(たしろ ゆみこ)さん。とても規律に厳しく、周りから「鬼」「鉄仮面」などと言われていた程だ。


話してみると、過去に誠四郎に助けられたことがあり、二人は意気投合。二人は誠四郎を見守る会などを設立させ、学校の大半が加入したそうだ。

その中で過ごしているうちに、少しずつ相手を意識し始めた。そして今に至る。

私のいない間に進展した二人の恋を過去に戻って見返したい。

透華がそう思える程に二人はお似合いだった。

 (このまま行けば、夫婦仲が深まり、夜の営みがあり、子供を作って、せーちゃんと私と子供達で川の字で寝て!)

 ブレーキを失った暴走列車の様にどんどんあらぬ方向へ広がっていく。

 「名前はどうしよう。男の子だったらかっこいい方がいいかな?女の子だったらかわいい方がいいかな?両方だったら」

 

 

 プルルルルル、プルルルルル。


 「ひゃっ!」

 突然鳴り出す電話に乙女の悲鳴をあげる。

 相手は誠四郎だ。

 「も、もしもし?」

 「? もしかして、タイミング悪かったかな?」

 透華の動揺が伝わったのか、誠四郎が電話越しに優しく問いかける。

 「ち、違うの、スマホ落としちゃって。」

 素直に話せばいいのだが、はかどりすぎる妄想が邪魔をして、電話から聴こえる電子音声にすら興奮してしまう。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 体が熱を帯び、胸が締め付けられる。

 

 「だ、大丈夫?」

  優しく呼び掛ける声に吐息混じりの返答で答える。


 「ちょっと、疲れちゃったのかも。」

 「そう?じゃあベットで休んだら?」

 「で、でも、私に何か用事があったんじゃないの?」

 「それは後でも出きることだから。透華の体調の方が大事だよ。」

 誠四郎の気遣いが更に透華の胸を締め付け、愛しさで胸がいっぱいになる。

 「うん。ありがとう。」

 「じゃあね」

 そう言って電話を切った。

 

 体が更に熱を帯びるのが分かる。

 「愛してる。」

 スマホを胸に抱き寄せる。

 

 そして、いつか生まれて来る男の子の名前が決まった。

 冬星。

 寒い冬の中の小さい希望。〝私達の〟一等星だ。


 あとがき


 おはようございます。Sニックです。

 今回もこの作品を読むために待っていただき、誠に感謝を申し上げます。最近の話の繋げ方に苦戦している状況です。だいぶ話の道筋は決まっているのですが、どうしても繋げる方法を知らなさすぎるようで、投稿が遅くなっている状態です。

 それでは、今回はここまでにしようとおもいます。

 改善点や誤字脱字がありましたらご報告お願いします。またね!

 


 


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