息子の荷物

 「お兄ちゃん!」

 「ッ!」 

 まただ。 あれから数日、同じ夢ばかり見る。

 

 未だに手に生暖かい感触と鉄の匂いがこびりついて、朝起きれば吐き気をもよおす。

 助けられなかった思いが、体を覆い尽くす。


 (気持ち悪い。)

 鏡に写る自分は真っ青だ。

 いつもは調子よくイタズラをする自分は、大切な繋がりを失えば滑稽なほど無力だった。

 前に進むどころか、ビクビクと怯えて前を向くことすら不可能。

 お母さんも辛いはずなのに、子供として寄り添うことも出来なかった。


 情けなかった。自分だけじゃないって知っているのに、オレは自分のことで精一杯だった。

 

 只々自分の無力を反芻する日々を送っているだけだった。

 

 そんな生活を続けていたある日の暮れ際のこと。

 ピンポーン。と玄関の呼び鈴がなった。宅配だろう。

 (こんな時に来ないでよ。)と、心の中で毒を吐く。

 とは言っても、居留守を使う訳にはいかないので、重くだるい体をベットから起こし、玄関のドアへゆっくりと向う。

 そこには、予想もしなかった光景が広がっていた。

 

 「え…」

 あまりに予想を超えた光景に、あっけらかんとするオレ。

 

 視界が埋まるほどの幼稚園児達だった。

 

 「ど、どちら様ですか?」

 それは初対面である相手にたいしては丁寧な対応であるといえる。だが、この状況下では理解できていない自分が気まずくなるだけだった。


 しかし、相手は幼稚園児だ。そんな自分など関係はない。

 「お兄さん、これ。」

 と、目の前の女の子が花束を渡してくる。

 「えっと、何で…」

 何故初対面である自分に何故花束を渡してくるのか理解が出できず、理由を聞こうとすると、不意に女の子の名札が眼に入った。

 

 山谷 花。

 その名前が、自分の中で引っかかる。聞いたことがある。

 少し思考を巡らせれば、原因がすぐにわかった。


 「もも組の花ちゃん...。」


 そう、もも組の花ちゃん。天心の誕生日に仲良くなったという女の子。


 そう考えれば、この状況に納得がいった。


 「そうか、君が...。」


 オレはしゃがんで、もう一度聞きやすい声で問いかける。

 「君の名前は?」

 「花だよ。」

 「そうか、花ちゃんか。天心から聞いてるよ。天心と友達になってくれてありがとう。」

 「うん」

 「この花は天心に?」

 「うん。」

 渡された花束から花の匂いがする。とってもいい匂いだ。

 じんわりと素敵な匂いが心を包む。

 


 あぁ、本当に自慢の弟だ、天心。

 お前はいなくなっても、兄ちゃんにたくさんの笑顔をくれる。

 

 目の前には多くの友達がいる。よく見ると、奥にその親御さんもいた。


 (気づいてなかったのか僕、馬鹿だなぁ)

 自分の視野の低さに、笑ってしまう。


 そうだ、お礼を言わなきゃだ。


 「花ちゃん、みんなありがと。これを渡せば、天心も喜ぶよ。」

 「本当?」

 「うん。絶対。」

 「うん!」

 「君たちは、天心の自慢の友達だよ。」


 天心、今日プレゼントが届いたよ。世界一のプレゼントが。

 オレからのプレゼントは届いているかな?届いてなかったら、届くまで送り続けるよ。オレの愛情を。オレたちの繋がりを。

  

 


 早朝、男は目を覚ます。

 「オレか...。」

 口にする言葉は今ではくすぐったい。

 でもそれは、大切な思い出として今もあの子たちを思い出す。

 「今、どうしてるだろう。」

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 あとがき

長らくお待たせしてすいません、いいわけとしては細かい内容がぱっと浮かばなくなっておりました。すいませんでした!

 今後は、もっと早く出せると良いのですが、スランプ状態に陥らないようにしたいですね...。

 それでは、誤字脱字 改善点がありましたら、ご報告等お願いします。ありがとうございました。

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