復讐者の理由 更生者の依存

 『復讐』俺は誠四郎と友人、親友になってから、したいと思う時が来るとは思わなかった。

 親父が飲んだくれの時は、毎日にビクビクしてたからそんな余裕もなかったし、ましてや誠四郎と会ってからは、楽しい、嬉しいと感じることしかなかった。

 こんなに幸せで良いのかと思った程だ。俺は、誠四郎との生活を、全く疑わなかった。

 だからこそ、誰にも分かるわけがない。予想できる筈がない。

 数年後に、こんな善人が自ら命を投げ出そうとするなど。

 俺はその幸せを失って、最初に感じたのは後悔だった。

 あの時、それが誠四郎に本当の意味で助けられた時、誠四郎の支えになるって誓ったのに、俺は支えになってやれなかったと。

 それから1日、誠四郎のいない通学路、学校、帰り道、やにかをやるにも、意味を感じなかった。

 そんな時、俺を動かしてくれたのは、やっぱりと言うか、誠四郎だった。

 俺は、あいつの願いだから、あいつがいたから、幸崎を見捨てない選択を選べた。 

 幸崎を最低限、手伝おうと思えた。

 

 俺は誠四郎との偶然の出会いを通して、本当の幸せを知って、本当の愛を知った。

 


 そして今回、斎藤が作り出した事実もあった。

 人は、人の為に、体を動かすことができる。どんなに絶望することがあっても、人の幸せを願うことができると。

 

 でもそれは、生まれる筈がなかったことなのだ。


 斎藤の純然たる悪意に対抗できる誠四郎の善意が有るからこそ成り立つ。誠四郎の犠牲があっての事実。

 対立が成り立たない場合はただ、人の人生が、狂わされるだけだ。そして、誠四郎のような善意を持つのは、奇跡と紙一重た。


 端的に言うと、どの様な過程があれ破壊者がいる限り、犠牲者は出続けるということだ。

 

 

 それは誰だろうと許されない。



 俺は誠四郎の親友として、誠四郎の人生を狂わせた斎藤宗太が許せない。

 そして、幸せを知る者として、破壊を続ける斎藤宗太を見逃す訳にはいかない。

 

 俺は、斎藤宗太の復讐者だ。

 憎悪を、義務を、復讐心に込めて、斎藤宗太を絶望させる。

 

________________________

    

 〝私〟が私に聞いてくる。

 「ねぇ〝私〟、せーちゃんのこと愛してる?」

 私は答える。

 「私は、せーちゃんを愛してる」

 すると、違う私が聞いてくる。

 「では、私の裏切りはなぜ?」

 再び私は答える。

 「それは、先輩に私が堕ちてしまったから」

 私が聞いてくる。

 「じゃあ、私にとって愛って何?」

 私はその質問に答えられない。

 「私にとっての、愛………」

 私が聞いてくる。

 「私は何を理由に、せーちゃんを愛してる?」

 「理由?」

 「「「私は、本当にせーちゃんを愛してるの?」」」

 私と私と私は、同じこと口にした。―――――――

 

 

―私は目を覚ました。時計を確認すると、今は午前4時と表示されている。

 どうやら、随分早く起きてしまったようだ。

 私はもう一度眠りに着くために、目をつぶるも…

 

 「あの夢はなんだったんだろ」

 

 私は夢のことを考えていた。

 夢にしては、質問が現実の状況と一致していて、私はついつい考えてしまう。

 「私のせーちゃんへの愛……」

 今はもう穢れてしまって、私の愛が本物か、私にとっての愛が何なのか、答えが出ない。

 私はせーちゃんを愛してる。心から。 

 でも、理由は?と聞かれると、どうしてなのか、分からない。

 


 私は理由を考えているうちに、意識を手放した。

 

 私は気がつくと、暗闇の中にいた。

 「ここ、何処だろう」

 そう呟くと、隣から聞きなれた声が答えた。

 「透華の記憶のなかだよ。」

 声の持ち主はせーちゃんだった。

 「えっ、せー、ちゃん?本当にせーちゃんなの?」

 私はすがるように声を出す。

 「うん、そうだよ。あくまで、透華の記憶の僕だけどね。」

 「そ、そうだよね。せーちゃんは今眠ってるもんね。」

 胸から込み上げるものを抑えて、私は冷静をよそおう。

 そんな私に、記憶の中のせーちゃんは控えめな笑みを浮かべて、私にいった。

 「透華、悩んでることない?」

 私は抑えていた、感情が溢れそうになって、涙声で少しずつ答える。

 「私のせーちゃんへの愛、が、本物かどうか、分からなくて。私が、なんで、せーちゃんを、愛してるのか、理由が分からなくて。」

 せーちゃんは私の背中をさすりながら、うんうんと頷いて聞いてくれる。

 「私の、愛が、本物じゃないん、じゃ、ないかって。」

 言い切ったとたん、私の胸の中の物が、抑えられなくなった。

 記憶の中のせーちゃんは叔母さんと同じように、でも、より優しく、私を抱き締めてくれた。

 後悔の涙じゃなくて、私の愛が偽物なのではないかという不安から来る恐怖で私は泣いていた。

 



 私が落ち着いて、少ししてから、せーちゃんは

私をは抱き締めながら私に言い始めた。

 「僕はね、人を愛することに偽物も本物もないと思ってる。透華がどんな理由で、僕を愛しているかなんて、あってもなくても良い。」 

 「うん。」

 「僕だって、透華を愛していることに理由なんてない。僕はね、ただ透華といるだけで、透華と話してるだけで、透華が笑っているのを見るだけで、幸せになるんだ。そういうのをね、僕たちは『愛してる』って言うんじゃないかな?」

 「うん」

 せーちゃん言葉の一言一言が、私を包んでいく。

 「透華、思い出したくたくないかもだけと、僕が飛び降りる時、透華に何て言ってた?」

 「あ、愛してるって、幸せになってねっていってた。」

 「そうだよね。透華が幸せだと僕もすごく幸せになれる。透華はどう?僕と生活してて、幸せだって思った?」

 「うん。すごく幸せだった。」

 「そうか、よかったよ。じゃあちゃんと僕のことを愛してくれている。透華が僕に相談出来なかったのも、僕の為なんでしょ?」

 「うん。」

 「じゃあそれは、僕に幸せになって欲しいって思ったってこと。結果がどうでも、僕を愛してくれている証拠だよ。ありがとね、透華。」

 「私も、ありがとう、せーちゃん。やっぱり私、せーちゃんのこと愛してる!」

 「それは、現実の僕が起きたときに、いって欲しいな?僕、きっと待ってるから。」

 「うん!待っててね!―――――――――

 

 

 

 午前7時、私は起きた。

 夢の中のせーちゃんは私の記憶のせーちゃんだけど、きっと、こっちのせーちゃんも同じことをいってくれる。

 もう、私の愛に迷いはない。

 せーちゃんを二度と手放さないように、せーちゃんを愛するために、私はもう一度、絶対の愛を持って、やり直しの生活を望む。


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あとがき

 今回は正人と、透華のそれぞれの思いを書かせて頂きました。

 この作品、週刊ランキング、総合315位、恋愛ランキング15位、になることができました!まさか私の作品が、こんなに読んで頂けるとは、一ヶ月前には予想してませんでした。

 読者の皆さんには感謝しか有りません!("⌒∇⌒") 

 本当にありがとうございます!

 今後とも、皆さんに読んでいただけるよう。作品を作っていくので、よろしくお願いします!

 あっ、誤字脱字 改善点ありましたら、レビューに書き込んで下さい!

 それでは!改めて、この作品を読んで下さりありがとうございます!またね!          

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