第14話
ペンダントが見つかってひとしきり泣いた後、三人の制服は泥や煤にまみれ、汗だくの状態で保健室に向かった。養護教諭の古町は驚いた様子だったが、三人を快く受け入れ、貸し出し用のジャージと、汚れた身体を拭くための湯とタオル、さらにスポーツドリンクまで用意してくれた。
「本当はプールのシャワー室に行ってらっしゃいって言いたいんだけど、生憎点検中なのよ。これで我慢して頂戴。今日一日はジャージで過ごすことになるけど……」
「充分です。ありがとうございます」
「古町先生、今度生徒会室に寄ってね。お礼の紅茶を淹れるから。……半ちゃんが!」
「お前が淹れろ。……と言いたいところだが、仕方がねぇ。良い品質の茶葉を探しておく」
「ふふっ。ありがとう。気持ちだけいただいておくわ。松田先生に差し上げて」
「あー……それもそうですね。一番とばっちりを受けてましたから」
和やかな空気で繰り広げられる話に、糸魚川は顔についた泥を落しながら妙な違和感を覚えた。
まるで古町と生徒会が共謀しているようではないか。いや、すでにあの公開処刑が校内全体に広がっているのだ。教師内でも事実確認に勤しんでいるころだろう。そう考えることにした。
「それで古町先生、垣田はどうなったか聞いてますか?」
「うーん……松田先生と担任の先生で面談してたのを聞く限り、厳重注意で様子見が打倒かしら。後で糸魚川くんにも聞かれると思うけど……」
「注意だけ? あんなことをしておいて?」
「ごめんなさいね、ほまれちゃん。生徒会長として許せないと思うけど、学校側は何事も大きくしたくないのよ」
「でも!」
「いいんです、轟木先輩」
ヒートアップするほまれに、糸魚川が制止をかける。存分に泣いた目はすっかり赤く腫れていた。
「僕も大事にはしたくありません。垣田と僕がこれ以上関わらなければいいだけの話だし、厳重注意を受けたら次は謹慎だってわかるでしょう。ペンダントが見つかった、それだけで充分です」
糸魚川の言葉にほまれは不満げな顔をしていたが、渋々了承した。何とも煮え切らない表情を浮かべていたが、半井に『後でココア淹れてやる』と宥められて妥協した。
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