第11話

「学校の裏に焼却炉があるだろ。そこでちょっと前に上級生に絡まれて、転んだ拍子に落としたんだよ。誰もいないときに来て探したけど、見つからなかったから諦めたんだ。でも早く返そうとはしてたんだぜ? 家族写真まで入れるほど大事だってことくらい、俺にだってわかるよ! 一週間くらいしたら机に入れておこうと思ったんだ。でもその前にあんなことになって……悪かったと思ってる。でもこれで本当のことを話したら、もっと悪くなると思って、どう謝っていいか……。でも無くしちまったもんはしょうがないだろ!?」


 半べそをかいてようやく自白した垣田の言葉に、糸魚川は心底呆れた。

 あれだけ言い逃れしようとした結果、こんな幼稚で下手な説明をされて誰が納得できようか。一発殴ろうとしていたのを止めてもらって良かったとすら思う。

 こんな奴に振るう拳は勿体無い。


「惨めだな。公開処刑で自白するくらいなら、最後まで悪役でいればよかったのに」


 半井が吐き捨てるように垣田に言うと、未だ自分は悪くないと更に泣きわめいた。

 教室の内外からの視線が垣田に注がれているため、覆すのは難しいだろう。それをよそに半井は糸魚川にチェーンを渡した。なじみのある、壊れた留め具を指でなぞる。間違いなくずっと身に着けてきた物だった。


「……間違いありません。僕のです」

「そうか。あとはロケットが見つかればいいのか」

「垣田くん、焼却炉ってレンガや土嚢が置かれてるところだよね?」


 ほまれが垣田に問い詰めると、先程の笑みに恐ろしさを感じたのか、首を縦に振って答えた。


「よし、じゃあ半ちゃん、行ってみようよ。松田先生、垣田くん達をお願いします。ああ、でもトイくんは借りていきますね」

「え?」


 まさかの指名に思わず声が出ると、半井とほまれが両腕を掴んで、教室を出ていこうとする。


「お、オイ、轟木、どこに行く気だ? 授業は?」 

「嫌だなぁ先生。そんなの決まってるじゃないですか」


 茶目っ気全開でウィンクをかますほまれに、糸魚川は嫌な予感がした。

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