2話 泣く(今回は詩的)

 目の前に線路に落ちる崖がある。

 みんなより少し早めの帰宅を促された。

――お前は誰からも愛されないんだ

 その言葉に胸がきしむ。

 悲鳴を上げる。

 ふと思う。

 この崖から落ちて電車にひかれて死んだら楽になるのだろうか? 

 と。

 顔を向けると電車が都合よくやって来た。

 死ぬなら今だ。

 死ねば楽になる。

 死ねば辛くない。

 自分で自分の考えに興奮した。

 一歩を踏み出そうとしたとき。

「お客様、白の線まで下がってくださーい」

 なんてアナウンスされる。

 急いで待合室付近へ戻る。

 電車は何事もなかったかのように止まりドアを開けてくれる。

 

 電車の中で私は静かに泣いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る