第12話『業態変更の可否』
営業初日を終え、チ―フの来客予測が正しかった。ということは今のメニューで営業できるのはあと2日だ。「チーフ、セントラルキッチン頼らずに作れるメニューは何%くらい」「20%くらいです」「ふう~ん、そんなに依存してるのか!逆に何なら作れる?」「ステーキ、ハンバーグ、オムライス、パスタくらいです。全く同じものを作れと言われたらステーキのみです」「わかりました。ステーキ屋でもやりますか!それでも新規の仕入れ先見つけないとね。また、あとで打ち合わせしましょう。ちょっと松田さんと話していい?」「はい。大丈夫です」「じゃあ、お願いします」
「お忙しいのにすいません」「いえいえ」「何かお飲み物お持ち致しましょうか?」「恐縮です。緑茶をお願いします」「はい」「どうぞ、立ち仕事で疲れていませんか?」「前からそうですからエヘヘヘ」「失礼なこと言ったら申し訳ないのですが、松田さんのキッチンでの包丁さばき、素人ではありませんね」「……」「言えないなにかが……」「寿司屋を営んでいました。小僧とふたりで小さい店です」「そうでしたか」「いつの頃からかゴロつきが常連になり、それまでの常連様が来なくなってしまいました。それでそのヤクザに来ないでほしいとお願いをしました。すると目か締め料を払えと言ってきました。私も若い時は恥ずかしながらその道の者でカっとなって相手の左小指を切り落としてやりました。バカなことしました。それからというもの嫌がらせが続き、困りはて、リョンヤンレストランで弁護士に相談している最中のトイレのなかで爆発してしまったというのがお恥ずかしながら本当の話しです。」「……松田さん、2日で3名を寿司職人にできますか?」「無理です」「やっていただかないとお給料どころか食べていけません。お願いします」「……」「回転寿司で機器も準備します。松田さんには提供前の出来映えを確認してほしいのです。大手チェーンの傘下に入ることも考えなければいけないでしょうが……」「……回転寿司ならなんとかなるかな……」「決まりです。みんなの同意を取りましょう」
2日目の営業後、みんなに集まってもらった。チ―フ、キャプテン、松田さん、日野さん、マッキー、エム、私の7名だ。
「皆さん、お疲れさまでした。私一人では決められない案件があるので集まっていただきました。今のメニューで営業できるのは明日が限度です。もう食材、ソ―ス等が底を尽きます。これからどうするか。みんなの率直な意見を聞きたいです」日野さん「そうなることはわかっていたのでしょ。何も手を打ってなかったんですか?おかしわよ」マッキー「でも時間なかったと思うよ、みんな仕事しながらだから」エム「……」チ―フ「キャプテンと一緒にセントラルキッチンから搬入されるソ―スの味に近づけないかなんども試みましたが無理でした。私の力不足です」私「誰が悪いとかそんな話はいらない。どうするかだ」
キャプテン「今までと同じような料理は作れます。しかしそれはリョンソンレストランの味ではないし、メニューブックとは違ってくるのでクレームになるのではないかと思います。」私「キッチンだけの問題ではなくてドリンクバ―、パフェの食材がなくなるのも時間の問題です」日野さん「今日どこまでを決めるつもりですか?みんなが出来ない話をしている間は先には進みませんよ!」私「日野さん、代案があって発言しなさい。そうでなければすべて私の一存で決める。決めたことに不満があるやつは出て行け」日野さん「……」エム何か言いたいことない?「ドロドロの営業はしたくないです」私「なるほど。賛成」マッキー「あ、それ私も賛成。忙しい時と暇な時の差がありすぎる~」私「みんな回転寿司はどうかな?」日野さん「改装しなければいけませんよね?お金は?」私「ない、3日間の売上で180万円。暫くは借金生活だ。しかしここで行動しなければ先はない。2日の閉店で内装と外装の工事を終わらせる。チ―フ、キャプテン、私は松田さんから寿司の基本を教えて戴く。ホ―ルは日野さんに全権を委ねる。忙しくてもドロドロにならないオペレーションにしてください」日野さん「わかりました。がんばります」私「女の子たちは2日間、店閉めますのでお休み。美容院でもいきなさい。お金はレジから勝手に持って行っていいよ」
これでみんなが同じベクトルを向いて仕事が出来る。茶番でも必要なことだと思う。
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