第1話『水商売』
「ああ、ここまた違う店になってる。」
うどん屋が違う会社のうどん屋になり、ステ-キ店がハンバーグ店になっている。ボクシングジムがステ―キ屋になっているケースもあった。
夢いっぱいで店を作り、借金いっぱいで店を閉める。一番最初に看板作って、一番最初に看板下ろす。
月に1度はある用事で2時間かけて市内に行く。ここではある用事には触れない。
道沿いに飲食店が軋めきあってるから毎月同じ様相を見たことがないくらいだ。
「水商売だな」とつくづく思う。私の中で一番上手いラ-メン屋があって市内に来た時には必ず行っていたが、味がみるみる落ちた。大将がいて2番手がいたのだか2番手の姿を見ない。原因はそれだろうと思っている。もう行かなくもいい味だ。一番上手いがなくなるのは悲しいことだ。
同じ仕事をしている者として月一度のこの通りの運転はあっち見て、こっち見て大変だけど刺激的だ。看板の大きさと照明、店のたたずまい、駐車場の広さ、植栽の管理など車中で一瞥していく。
道中、私が働いたことのある店舗を3つ通り過ぎる。お客様の入りも気になるとこであるが一緒に働いたみんなが元気であるかが先に立つ。助けてくれた。仲良くしてくれた。
そして厳しくしてくれた。
流通業のカリスマと飲食業のプロが手を組みステ-キ店チェーンを作り上げた。その頃はまだ目新しかったサラダバ-を作り、肉の量もオ-ダ―に合わせてカットしご要望の焼き加減で提供した。一世風靡した。
その飲食業のプロは私が後に勤めることになる企業の副社長だった。その鞄持ちをしていた店長の下で働いたことがある。厳しかったどころではない。毎日の睡眠時間が3時間でそれが休みなしに3ヶ月続いた。24時間営業で店員に任せてソファーで寝ていた。強く思い出すのが誰かの送別会をやっているときに連絡があり、忙しいからすぐ来いというものだった。お酒に酔った状態での接客で、なんかいつもより感じがいいような気がした。店長のバカタレはニヤニヤしていた。
店長は次の大型店舗に異動になった。移る時、私に準備しとけよと告げた。次の店長はやさしくてパラダイスだった。しかし案の定、元の店長は異動先の2番手に駄目出しを食らわし私が呼ばれた。その店舗で後でも経験がない48時間労働をした。店長はヘッドハンティングで部長クラスで転職し、私は長崎の店舗に異動した。
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