第4話 魔剣と聖剣!
「今だ! 勇者っ! 邪悪な王の人形めっ! 我が魔剣の呪い! 受けるが良いッ!」
俺の動きが鈍ったと見たのだろう。魔王が振り向きざまに魔剣の力を開放した。それはもう
あれにやられるなら本望だと思わせる
だが、俺は勇者である。
「甘いっ! 甘いんだよ、魔王ッ!」
俺は難なく魅了効果を打ち破ってその剣を弾いた。
どうだ! 逆に弾き飛ばされた魔王が体勢を崩すほどの威力である。
「ちっ、バカ力の勇者め! 何も考えずにほいほいと王の口車に乗ってレベルマックスなんかになりおって!」
「そうだよ! 魔王レベル90のお前が勇者レベル100の俺に敵うものか! この差は大きい! なぜ、レベルマックスにしなかった! 時間は俺よりもずっとあったはずだろ!」
ガッツ! と二人の剣が交錯し、火花が散る。
レベルなどと言っているが生と死を司る水の女神ベルーラが管理する ”霊体及び全生命体・ベルーラ能力管理機構・累積能力情報公開申請受理による開示” というやつだ。
まったくなんちゅうお役所的なネーミング。だからみんな誰も正式名称は使わない、単に略して「
神に祈ると脳裏に水の柱や水桶が見え、その水の量と色で自分のレベルがわかる仕組みだ。基本的に他人の水の柱は覗けないのだが、俺くらいの勇者になるとなんとなく分かる。
勇者レベル100はレベル300のこと、英雄レベル100はレベル200である。ちなみに一般的な騎士や兵士でレベル30程度。一般人ならせいぜいレベル10前後だろう。魔王レベルは勇者レベルと同格だがその性質は真逆、レベルマイナス300のことだ。
「魔王レベルマックスになるには条件があるのだ。貴様の知るところではないわっ!」
「歴代最強とまで言われながら、条件を満たせなかったのか? だからお前はここで滅ぶ運命なのだ! その時がきたのだッ!」
「運命だと! その言葉、軽々しく貴様が言うな!」
ギリッと歯を食いしばる魔王がいる。その瞳はなぜか聖女のように清らかに澄んでいる。俺たちがかってに想像していた邪悪な色ではない。
お前、本当に魔王か……と思わず言いそうになる。
「くらえっ!」
魔王が手のひらをかざして魔法をぶっ放した。
「目くらましか! だが、小細工は効かない! それがレベル差だ!」
純粋なパワーでは俺が上なのだ。
しかし、俺には各種の属性以上に耐性がある。そう易々と魔王の術にかかるわけはないのだ!
……もっとも自爆して、前かがみという状態異常に陥っているのがかなり間抜けなのだが……。
「レベル100になるためだけに、誰が好きでもない男と寝れるものか! 私は身も心も清らかな乙女なのだぞ! 私は運命を! 運命の相手を待っていた! 未来で待っている、そう約束してくれた大切な人をだっ!」
魔王が俺の剣を弾いた。
今のは本音らしい。ちょっと驚いた。
魔王は男を手玉にとる悪女のイメージだったのだが、まさかの清純乙女とは……
「お前はここで滅ぶ! その運命に従え、魔王!」
「お前が私の運命を左右する相手だとは認めない! 勇者め、それこそがお前たちらしい
「
「運命のだと……? いやいや、違う! 断じて違うぞ! お前は今までの勇者と同じ、強欲な人間に使役されるだけのただの人形! お前など、あの人と似ても似つかない! 乙女の体をガン見してニヤけているこの変態勇者めッ! 死ねえーーーー!」
「うわっ、危ない! どこを狙っているんだ!」
魔王の剣は俺の股間を突いてきた。
しかし、俺はひらりと軽やかにかわす。
「無駄だ! このレベル差は覆せないぞっ!」
「これを受けてもそんな口が聞けるかな!
美しい女の姿をした暗黒の魔王がステップを踏み、魔法と剣技を組み合わせた回避不可能とされる凄まじい速さの攻撃を繰り出した。その姿を俺の勇者の目はコマ送りのように見切る。
なるほどこれは見事な技だ。
人間では誰もそのレベルには達することができない
しかし、である。
「回避など不要! 聖なる力が、たった今、その剣の力を吸い尽くしたッ!」
魔王の剣と聖剣が激しい火花を上げた。
そこにはいつの間にか赤黒く
「何だとッ!」
パリーーン……!
俺の聖剣の前に魔王の剣がついに
「見たか、これが聖剣の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます