第3話 2週間

前回の日記から1週間は経過しただろうか、もう日記ではないな


この一週間はただ自堕落な生活を送っていた、ゲームをしたり、漫画を読んだり人の映らない字幕と風景だけの映画を観ながらポップコーンとコークハイを飲んだり

変わった事といえば、出前が取れる事を知った事と太陽が西から昇る事に気がついた事か


いや、気がついた訳ではない世界が変化しているようだ

千葉から山梨に向かう時、太陽を背にして移動していたのは間違いない

携帯電話だって、当初は日付こそめちゃくちゃだったが時計の機能は使えていたのだが、だんだんと時計も日付も文字化けしてきている

この世界に変化が起きようが、俺には現状止める術はないが、この変化があまり良くない傾向なのは間違いないだろう

この世界が元いた世界の平行世界のような物なら、確実にズレが大きくなってきているのを感じる


携帯で料理を注文する時も文字化けが激しい画面を必死に操作している

最近ではだんだんと慣れてきているが、注文を終えると次の瞬間インターホンが鳴り玄関の前に頼んだ物が置かれている、分かっていてもインターホンが鳴る感覚は心臓に悪い


物が置かれる時を相変わらず「見る」事は出来ないが俺はそれを「見えないさん」などと呼んでいる

今も見えないさんが運んでくれたピザを食べながら、たまには日記でも書くか、とボールペンを取った次第だ

見えないさんを呼ぶ時は玄関のドアを挟んで「運んでくれてありがとう」とか声を掛けてみているが感謝の気持ちは伝わっているのだろうか?


出前を頼める事を覚えてからは引きこもり生活が加速している

外に出る時はスーパー銭湯に行く時くらいか


そんな生活だが、そろそろこの生活にも限界を感じている

ゲームをしていても子供の頃ほど熱中する事はないし、2人プレイのゲームだと知れば千恵美の事を考え辛くなる

漫画も気になっていた物を見終えるとなんとも言えない虚無感に襲われ

映画に至っては人の声も姿も映らないのでは、余計に他人という存在を意識してしまう

そういえば、アニメは普通に観れるのはどうしてなのか?

最近この猫のように気まぐれな世界について深く考える事はあまりしないようにした

このまま俺はこの世界と一緒に歪み消えていく運命なのか、そんな事が頭から離れない

最近は気を紛らわす為に酒の量が増えてきているのを自分でも感じる

こうして文章にするといかに自分という人間が主体性も物欲もないつまらない枯れた人間かがよくわかる

今まで生きてきて、他人という存在はめんどくさく鬱陶しい存在だと感じていたが、やはり人は1人では生きて行けないというのは本当らしい

自分以外の存在がいないだけで、俺は何もやる気が起きないのだから


いや、この世界が悪いというのは間違いだろう、俺という人間は例えどんな環境でも、周りに流されながらなんとなく生きてきた、他人を恨み環境を恨み自分を責め、ツラいツラいと口では言いながら、何も何一つ行動をして来なかった


ただ同じ辛く苦しむなら、愛する人の隣で苦しみたいと今は願っている


動く物の無い静止した世界

おそらくこの世界は俺が考えるに死後の世界なんだと思う

霊魂の世界ではなく、肉体だけの世界、死体だけの世界

心は枯れ、体だけを動かしている俺には、お似合いの場所

そんな世界に俺は迷い込んでしまったのだろう




外に出ると風に巻き上げられた砂の影響だろうか、空が夕焼けのように赤くなっていた、よく見るとこの間まで繁っていた草木も力無く、枯れ始めていた


もうあまり時間が無いのかもしれない


この日記を書いていて良かったかもしれない、書いていなければとっくに精神を病んでいたと思う

字にする事で多少前向きになれた気がする



どうすればいいかなんて、最初から分かっている

「行動をする」それだけだ

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