その土魔法は鋼をも超える

「お? 階段が見えた。やっぱこっちが当たりなんじゃん」



 左の道を進んだヘイヴィアはすぐに階段を見つけ、上階へと上がっていく。



「あん? 行き止まり? いや、石の扉か。あれくらいなら……」



 階段を登り切った先には苔むした石の扉があった。



「おりゃ!」



 その扉をヘイヴィアは飛び蹴りでぶち破って中へと入った。



「広いな」



 石の扉の先には開けた場所になっており、周囲にはいくつもの石柱が連なっていた。



「先には階段があるが……」



 その広間の先にはさらに上階へと上がることの出来る階段があった。

 しかし、その前には立ちふさがるように一つの人影。



「報告は聞いて来てみれば、騎士は騎士だが、若いな」



 現れたのはガッチリとした体形をしたドワーフの男。



「その頬に刻まれた狐のタトゥーを見るに、あんた翡翠の妖狐か?」

「ご明察。俺は翡翠の妖狐、その幹部の一人、スチールだ」

「幹部か。なら、用はない。俺の目的はあんたんとこのボスだけだ」



 そう言って、ヘイヴィアは魔法を発動させる。



「“サンドリバース”」

「っ!」



 ヘイヴィアの魔法によってスチールが立っていた地面が砂に代わり、穴となる。

 だが、スチールはそれを察知し、下階へと落ちる前に横に飛びのいて回避した。



「なるほど、簡易落とし穴か。これは厄介。だが、お前の魔法属性は俺と相性が悪い」

「どういう意味だ?」

「お前の魔法属性は土だろ? 俺はその上位互換……」



 スチールの魔力が彼の体を覆っていき、そして……。



「俺の属性は鋼だ」



 全身を覆う鋼の鎧。それが彼の魔法。



「お前の土魔法では傷一つ付かない」

「そうかよ。だけど、そんだけ重いもん身にまとってんだ。速さはガタ落ちだろ」

「そうでもない」



 スチールは手にした鋼のランスを構え、ヘイヴィアに向かって突進する。



「っく!」



 想像以上のスピードにヘイヴィアは躱しきれず、頬を少し掠めてしまった。



「っつー」



 ヘイヴィアは頬の傷から流れる血を拭いながら、スチールを睨む。



「どうだ? これで俺に弱点はない」

「へっ! 言ってくれるじゃねぇか。でもよ、要するに俺の土魔法であんたの鋼魔法をぶち破れば問題ないわけだ」

「何を言っている? 鋼魔法は土魔法よりも硬度が上だ」

「なら試してみるか?」



 ヘイヴィアは右手で握りこぶしを作る。

 すると、それに合わせるように二メートルほどの巨大な土の塊の拳が生成される。



「大きければいいというものではないぞ!」



 スチールはヘイヴィアの魔法に臆することなく正面から突っ込んでくる。



「“アース……”」



 ヘイヴィアの右手の動きに合わせて、土の拳が動く。



「“インパクト”!」



 ヘイヴィアが右拳を突き出すと同時に土の拳がスチールを殴りつける。



「がはっ!」



 すると、スチールの鋼の鎧はいともたやすく砕け散った。

 鎧がなくなったスチールはそのまま土の拳に殴りつけられ、石柱へとめり込んだ。



「俺の土魔法の強度は鋼を超える」



 スチールを破ったヘイヴィアはそのまま上階へと進むのだった。

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