第2話 痛みに似た思慕
九 月曜日(2日後)
昨日の日中一度止んだ雨が夜になって再び降り始め、今朝も雨の音で目が覚めた。
ずっと雨が降っている。
自分の心の中にもずっと雨が降っている…。
言葉の欠片を繋ぎ合わせて言葉にしようとしても言葉にならない。
でも、そんな気持ちを振り払うように、彩花はベッドから起き上がった。本当はせめて今日ぐらい休んでも良かったのだけど、部屋に一人でいても塞ぎ込むだけだとわかっていたし、それに一つだけ終わらせなければならない仕事もあったので出かけることにしたのだ。
あんなことがあったせいで、さすがに今朝の占いを見る勇気はなかった。いつもとは違うチャンネルに合わせ、ニュースだけ観て出社した。午前中に予定の仕事を終えると、体調不良を理由に早退した。確かに体調は良くなかったけれど、本当の理由は、おぼろげな未来をたぐり寄せるために千堂ほのかに直接自分のことを占ってもらうためだった。
きっと自分ひとり分の幸せぐらい残っているはずだから…。
会社を出るとまだ雨が降っていた。
まるで酸のような雨に都市そのものが腐蝕し発酵してしまいそうだ。
電車を乗り継ぎ、目的の駅にたどり着いた。駅から5分ほど歩くとほのかの占い部屋があるビルが大きな通り沿いにあった。
わざと大きく息を吸い、それをため息にして吐いた。
日曜日一日かけて自分が決めることが出来たのはほのかに会うということだけだった。そこでしか自分の未来は見えないような気がして…。自分はまだ愛というものに未練があった…。自分はまだ幸せというものに未練があった…。
これまでは朝テレビで観る占いの内容に日々一喜一憂してきた。それが楽しみでもあった。でも、そんな生活に疲れた。
『どうしたらいいの』
自分に問い詰めた結果、千堂ほのかに今後の自分の人生を占ってもらえばいいのだと気づく。そうすれば、今までと違う生活が送れるはず。何でこんな当たり前のことに気づかなかったのだろう。己の愚かさに愕然とした。
早速ネットで調べたところ、千堂ほのかが運営している占い部屋があることがわかった。電話して見ると、予約のキャンセルがあったとかで、今日の午後1時半なら時間をとれるということで申し込んだのだ。
ようやく着いたそのビルは雑誌で紹介されているような、おしゃれなブティックや美容室の入る建物だった。エレベーターで3階に上がると、そこはまるでオフィスの受付のようになっていた。受話器を取って名前を告げると、明らかに自分より年下に見える若い女性が現れた。
ーまさか、この人があの千堂ほのか?ー
「お待たせしました。ではこちらへ」
どうやら受付の子らしい。自分の早合点に呆れる。彼女の後を追って奥へ進むと、そこだけ特別感のある部屋にたどり着いた。
「こちらの中で千堂がお待ちしておりますので、どうぞお入りください」
「わかりました。どうもありがとうございます」
女性が去ってしまうと自分一人になった。急に緊張感が襲ってくる。一度深呼吸をしてからドアのノックをする。さっきから自分はどれだけ緊張しているのだろうと呆れる。
「どうぞ」
想像していたよりも若い女性の声だった。彩花はほのかは50代の女性に違いないと勝手に決め込んでいたのだ。
「失礼します」
ドアを押して中に入ると、いかにも占い師というゴージャスな装いの女性が座ったまま自分のことを見上げていた。
『きれいな人』
切れ長で粗野な瞳。高い鼻梁は冷たい気品を漂わせている。肌は透きとおるように白く、その美貌を引き立てていた。典型的な美人だけど、どこか人を寄せ付けない冷たさもあった。ただ、小顔の中のひときわ大きな目から放たれる光の中には慈悲のようなものも見えた。
同じ一人の女性として、彩花はあさましい妬み心が湧いた。
彼女の真っ白な首筋から甘い香りがかすかに立ち上る。
どこかで嗅いだことがあるような匂い…?。
年齢は自分より少しだけ上のような気がするけれど、独特な化粧が年齢より上に見させているのかもしれなかった。ほのかの目に吸い込まれそうになりながら立ち尽くしている彩花を安心させるように、ほのかは始めて少しだけ笑みを見せて言った。
「どうぞ、そちらにお座りになって」
「はい」
勧められた椅子におずおずと座る。ほのかは昨日電話した時に訊かれた自分の名前が書かれた用紙に目を落としている。
部屋には異様なほどに澄んだ音色のジャズが流れていた。
「確認しますけど、お名前は岡崎彩花さんで、漢字でこう書くので間違いないですか?」
見ていた用紙を彩花の前に差し出した。
「ええ」
「わかりました。ところで彩花さん、あなたは今日どんなことを占ってほしくていらっしゃったのですか?」
「自分には今後どんな人生が待ち受けていて、何に注意して、どう生きればいいか知りたいです」
「ふふ」
妖艶とも言えるほのかの顔はまるで天女のようだった。
『こんな女性になりたい』
さきほど感じた嫉妬心はもはや消え、彩花は心底そう思った。
でも、次の瞬間、自分は馬鹿にされているのではないかと気づく。
「何かおかしいですか」
「あら、何で怒るわけ。私、おかしいなんて思ってないわよ。ただ、可愛らしい顔してるのに、贅沢な人って思ったのよ」
「はい?」
彩花は言われている意味がわからなかった。
「だいたいにおいて、ここに来る人の多くは恋愛とか仕事とか、時には家族だとか、そういった具体的なことについての悩み、相談なのね。でも、あなたは自分の今後の人生すべてについて占ってほしいって言うのよね」
そう言われ、彩花は黙って頷く。
「だから、贅沢って言ったの」
そういうことだったのかと彩花は得心した。
「その分、余分な費用が必要ならお支払いします」
わかり過ぎるくらいの怒りを露わにしてしまう。
「そういうこと言ってるのじゃなくて」
呆れ顔のほのかに彩花の怒りはさらに高まる。
「じゃあ、何なんですか」
「あなたは常に自分を超えたものを望んで生きてきたんだろうなと思ったという意味よ」
「はい…?」
ほのかが言っていることが十分わかっていたわけではないけれど、自分でも気づいていなかった『自分』を指摘され、彩花はほのかの慧眼に射すくめられた。
「まあ、あまり気にしないで。じゃあ、早速占いましょうね」
十 (2日後)
ほのかが取り出したのはタロットと水晶玉だった。最初に何枚かタロットを捲った後に、じっくりと水晶玉に手をかざす。全身を神経にして何かを感じ取っていた様子のほのかが彩花に目を移した。
その目は確信に満ちていた。
「つい最近付き合っていた彼氏が交通事故に会いましたね」
艶やかな光沢の唇から、いきなり衝撃的なことが告げられた。その瞬間、胸の奥が氷のように冷たくなり、彩花の頭の中であの瞬間が再現されていた。
返事のできない彩花は、床を睨めつけるように身体をこわばらせていた。
「大丈夫?」
ほのかが心配そうな顔で彩花を見ている。
「大丈夫ですけど…。何でそんなことがわかるんですか…」
「私には見えたのよ。今あなたが頭に浮かべたことと同じ光景がね」
「そんな…」
「私は占い師よ。それもかなり優秀な、ね」
自分の言葉に少しだけ照れたのか、まつげの長い目を伏せた。
「それはもちろんわかっています」
「それに、私、透視能力も備わっているの」
「そうなんですか…」
「事故に会って亡くなられたあなたの彼氏の名前は大山斗真さんですよね」
彩花は視界から色が消えるのを感じ、軽い目眩に襲われた。
もはやそら恐ろしいとしか言えない。
自分は来てはいけない場所に来てしまったのか。
「なんで…」
「私はあなたがいつか私の元へ現れることもわかっていました」
「……」
「教えてあげましょうか」
そう言って彩花を見つめたほのかの目には怪しい光さえ浮かんでいた。
いったいほのかはこの上自分に何を告げると言うのだ。
恐怖と不安がうねるように押し寄せる。
しかし、彩花はほのかの抗いがたい眼力に、黙って頷いていた。
「大山斗真は私の恋人でもありました」
そんなことあり得ない。
ほのかの言葉はあまりに現実離れしていて、彩花は思わず笑い出しそうになったが、実際には顔はこわばっていた。
ほのかの鋭いナイフのような真剣な眼差しが事実だと告げている。
彩花の身体中に電流が流れた
ただ、ここまでくると、彩花の頭の中に形にならない疑問が芽生え始めてもいた。
不吉な気配が鎌首をもたげている。
何も返事をしない彩花に、ほのかが平然と言った。
「驚きましたか?」
「驚いたなんてものではなくて…」
「無理もないわよね。で、あなたが斗真と付き合い始めたのは4年前くらいよね」
付き合い始めた時点を当てたが、すでにここまででほのかがすべてを見透かしていることはわかっていたので驚かなかった。でも、ほのかが「斗真」と呼び捨てにしたところには抵抗があった。
許せないと思った。
でも言えなかった。
「ええ。そうですけど」
「私は1年前くらいから。斗真が仕事のことで占ってほしいことがあると、ここに来たことがきっかけ」
いくつもの異なる感情が交錯していた。
そう言われれば、当時斗真は転職するかしないかで悩んでいた。彩花は彩花なりに相談に乗っていたつもりだったけど、斗真は彩花の意見にはあまり納得していないようだった。そして、その後少し経った頃から斗真の自分に対する態度に変化があった。
まさか、ほのかにその原因があったとは。
ほのかは確かに斗真の好む顔立ちだし、しかもほのかは自分にはない妖艶さや、不機嫌な猫のような魅力を持っている。きっと、好きになった男を手玉に取って自分の自由にしてしまう。決して男の自由になることはない。斗真が夢中になったことは容易に想像がつく。だからこそ、斗真は自分に別れ話を切り出した。
でも…。
さっきほのかは斗真が仕事の占いのためにここに来たと言ったが、本当だろうか?
もしかして、自分と斗真のことを占ってもらいに来たのでは…。
もし、そうだとしたら、ほのかは何と答えたのだろう?
「斗真は二股をかけていたんですね」
完璧主義者の彩花は、自分の恋愛が汚されてしまったようで悲しかった。
「そういうことになるわね」
「千堂さんはそのことを知っていたんですね」
「知っていました。斗真と会っていると、必然的に斗真のことを愛している自分以外の女性が傍にいることが私には観えてしまうの。ただ、その相手が岡崎彩花という女性だということは今日あなたがこの部屋に入ってきた瞬間に初めてわかったことなのですけどね」
「斗真を通して私が見えることを、斗真自身には話さなかったのですか?」
「話していません」
「それはなぜですか?」
「私にとって、それはたいして重要なことではなかったということです」
「ということは?」
「私にとって斗真はボーイフレンドの一人に過ぎませんでしたから」
今の言い方からすれば、斗真はそのボーイフレンドの中でも下位にランキングされていたのだろう。自分を裏切ろうとしていた男だけど、こんな扱いを受けていると聞くと可愛そうになるし、自分まで惨めな気持ちになる。自分の中に、ほのかに対する憎しみの感情が生まれてくる。
「そうですか…」
「本人にもそう伝えていたはずなのですが、斗真は最近ひどく私に執拗になってきていて、実は手を焼いていました。なので、私のほうから別れを告げたのです」
『えっ、待って、どういうこと?』
「それはいつのことですか?」
「先週の火曜日のことです」
「ああ」
思わずそう言っていた。
今まで見えていなかったことが見えた。
斗真は千堂ほのかという占い師に夢中になったが、自分はボーイフレンドの一人に過ぎないと知らされプライドが傷つけられた。そこで、彩花とは別れ、ほのかとの関係を深めて自分がほのかの一番になろうと考えたのではないか。
だから、斗真は月曜日に彩花に別れ話をし、翌日ほのかを訪れ自分の愛情の深さをアピールしたのに違いない。ところが、逆にそのほのかからあっさり別れを告げられた。
「その時、斗真はどんな反応をしたのですか?」
「泣いてたわ」
「泣いてた?」
あのプライドの高い斗真が? 少なくとも自分の前で涙を流したことなど一度もない。
何事にも動じず、堂々とした男らしい男であった。逆に言えば、彩花には自分の素を見せなかったということなのか?
それほどにほのかのことが好きだったのか。ということは、それほどに彩花のことは好きではなかった?
斗真にとって彩花は、自分の望んだ通りに愛してくれる都合のいい女に過ぎなかったって言うの?
確かめたい。
確かめたい。
でも、もう確かめる相手はいない。
「そう。別れたくないって言いながら。でも、そんな姿を見せられたら余計に冷めてしまうものじゃない。だから、私はもう終わりって一言だけ言ってあげた」
ほのかはまるで魔女のような笑顔を作って言った。
きっと、母親が子供を諭すように言ったのだろう。
「斗真はそれをちゃんと受け止めたと思いますか?」
「受け止め切れていたとは思わないわね。でもそれは当然じゃない。斗真からすれば突然の、しかも思ってもいなかった別れ話だったんでしょうから」
ほのかにとっては過去のどうでもいい話なのであろう、言葉はどこか上の空だった。
「あのお~」
「何?」
「さっきから、ずっと斗真、斗真って呼んでますけど、止めてくれませんか」
ずっと苛立っていた理由を初めて言えた。しかし、当のほのかは彩花が怒る意味がわからないようだった。
「そんなことがずっと気になっていたんだ。私はどのボーイフレンドも下の名前で呼んでいるから普通のことだったんだけど、聞かされるあなたにとってはすごく嫌だったのね」
指摘した自分のほうが惨めになるような上から目線の柔らかい声で言った。
苛立ちに似た感情に支配されながらも、彩花は黙って頷いた。
「それならもっと早く言えばいいじゃない。私は拘っているわけじゃないんだから」
「そうですね。すみません」
『なんで私が謝らなけらばならないの』
「それはそうと、その翌日も彼から電話があったのよ」
「えっ」
翌日ということは水曜日だ。その日には彩花も斗真から電話をもらっている。
『どういうこと?』
斗真は水曜日に彩花とほのかの二人に電話を入れている。
「日曜日にもう一度話し合いたいって」
「……」
土曜日に彩花と会い、日曜日にはほのかと会うことになっていた。斗真はいったいどうするつもりだったのだろうか?
「あなたは何も知らなかったのね」
「……」
敗北感で身体中の体液が波打つ。
「先生、一つお訊きしていいですか?」
彩花にはどうしてもほのかに訊いておきたいことがあった。
「何?」
「先生の占いでは斗真が事故に会う可能性を予見していましたか?」
「う~ん、今思い起こすと、彼ということではなくてその日のおうし座の人の運勢は最悪だったと思いますね。当然、その中には交通事故の可能性も含まれていたわね」
「そうですか。そのことを斗真にも知らせたのですか?」
「何でそんなことしなければならないんですか。彼はともかく、私の中で彼は火曜日にすでに過去の人になっているんです。彼がおうし座だったいうことすら、その時点では忘れていたわよ」
不快なものから顔を背けるように横を向いて言った。
「なんだか冷たいですね」
口をあけ大きく息を吸い込んで抗議するように言った。
「冷たい? 男女の別れなんてこのくらいのほうがいいのよ、彩花さん」
そんなこと、自分だってわかってる。
だけど…。
やりきれない哀しさが胸の奥に沈んでいった。
その時、彩花はあることに気がついた。
「あっ、でも土曜日のテレビの占いではおうし座の人の運勢はそんな悪くなかったですよね」
「ん? テレビ? ああ、あの局とはちょっとトラブルがあって、私は先週の木曜日からあの占いコーナーは降りてるの」
「えっ、そんな…」
私は木曜日から違う占い師の運勢に乗っかろうとしていたのか?
いつの間にかほのかが再び水晶玉に手をかざしている。
「土曜日の午後2時頃、車が二人に向かって突っ込んできた瞬間、意図的かどうかは別にして、あなたは斗真の背中を押しましたよね。私には見えるのよ」
『ああ、この人には私の心の中まで見えている』
彩花の頭の中に再びあの瞬間が再現されていた。
あの時斗真は『実は女と』と言い、その後を続けようとした。まさにその瞬間にあの黒い車が突っ込んできたのだ。
斗真が次に何を言おうとしたのかはわからないけれど、結局、自分は裏切られたと思い、憎さが湧いたことは確かだった。
「でもね、その瞬間、彼が言おうとしたことがどっちだったかわからないように、あなたの行動も意図的だったかどうかもわかならいのよね。私が言いたいことがわかる」
ほのかの手は水晶玉から外れていた。
「いえ」
「占い師の私がこんなことを言うのもおかしいんだけど、占いなんてそんなものよ。だから、私は他人のことは職業として占うけれど、自分のことを占ったことはないわ。たとえば、自分の恋愛なんてどうなるかわからないからワクワクするものじゃない。わかりすぎる未来に人生なんてないのよ」
「そうかもしれませんね」
「こんなことお客さんに言ってはならないんだけど、私にとってあなたは特別な人だから教えたあげたのよ。これが今日あなたが占ってほしかったことへの答え」
占い師には似つかわしくない誠実そうな瞳を彩花に向けて、一語一語を慎重に吐息の中に滑り込ませるようにして言った。
わけのわからない感情のせいで、涙が零れていた。斗真が亡くなってから一度も流していなかった涙がここで流れてしまった。
ほのかがもう一度水晶玉に手をかざしながら言葉を重ねた。
「あなたは自分に自信が持てないから、ずっと誰かに、何かに頼って生きてきたのよね。誰かに、何かに依存しないと不安だった。それはたとえば母親であり、恋人であり、占いだった」
なぜだか、母親の細く筋張った指のことが思い出された。
でも、ほのかはもう一つつけ加えた。
「それと、結婚にもね。そうよね」
ほのかの強い眼差しが彩花を突き刺した。
まだしてもいない結婚に自分が依存していた?
そんな…
でも、
でも…
100%思い当たった。
すべてがほのかの言う通りだった。
すべてが1本の線のように繋がった。
ほのかの言葉には反するけれど、これから先も千堂ほのかという人物に依存じたいと思ってしまう。
「はい」
「でもね。これからは他の誰かとか、他の何かではなくて、もっと自分に目を向けて。もっともっと自分のことを好きになって。自分を心から愛してあげて。自分を愛し切って初めてあなたは自分から自由になれる。奇妙な磁気が人を狂わせることもあるけど、あらかじめ失っていたもう一人の自分を探そうとしてはダメ。誰でもその人にしか出せない輝きがあるものよ。それに、悲しみを知っている人のほうが美しく輝けるものなの。だから、大丈夫。きっとあなたはうまくいく。それは占わなくてもわかる」
ほのかの言葉の中には彩花が理解できない部分もあったが、自分の中の何かが溶けて、違う何かが息づいたように感じた。
固く張っていた心が緩んでいく。
心に風が吹き抜けていくような心地だった。
ぼんやりと幸せになるのを感じた。
ほのかの占い部屋が入っているビルから外に出る。
『私は私の新たな日常をちゃんと作っていかなくちゃいけない』
まだ細い雨が降っていたが、緩やかな坂道を見上げると東の空には虹がかかっていた。
彩花が大好きなBABYMETALの「NORAIN、NORAINBOW」という曲がSU-METALこと中元すず香という歌姫のどこか可憐で、どこか切なく、それでいて力強い歌声とともに頭の中に流れてきた。
どうして眠れないの?
どうして夜は終わるの?
いらない何も明日さえも
君がいない未来
どうして笑ってたの?
どうして? 寂しかったのに
誰も知らない 本当はただ
そばにいてほしかった
絶望さえも光になる
止まない雨が降り続いても
絶望さえも光になる
悲しい雨が虹をかけるよ
どこまでも
……
細かい雨の降る土曜日の午後だった シュート @shuzou
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