夏想

 開け放たれた教室のトビラ前にするしかし独特どくとくの感性の彼女、こんこんとノックの音は三回目にして無重力でした。


 嗚呼ああ、待ちがれています。

 壊したはず、なのに、どうしてその一つだけ、記憶が目と胸の肉を刺突しとつするのでしょう。


――回想。いえ、夏想かそう


 窓を優先される風の心地よさ。


 学習室の大窓おおまど、そのなみなみ外れて薄いカーテンのかげに隠れた群像劇的ぐんぞうげきてきシルエット。


 ここ、三階です。花壇かだんのレンガに落ちた飛び降り死体でも見ているのでしょうか。


 悪趣味あくしゅみ冗談じょうだんともつかない個のからかいに、


「こうやって風に当たるのが好き」


 彼女はそう言って初めて笑った気がしたのですから。


 なるほど、製氷器せいひょうきのケズリ氷菓ひょうかと成り果てる前の幽霊のこまのごとくにして非現実的にり固まっていた疑問はたちまち解しました。


 個の集まりは、他の面子めんつの何らかの意思で作為的さくいてきに生み出されたであろう仲良しグループでしたが、所詮しょせん、二人だけでした会話は、その時だけだったのです。


 夏草かそういこう彼女の回想。


 今はカソウを生きています。


 夏草かそういづれ仮想かそう火葬かそう

 あくまでも爽やかにしておごそかなる崇拝対象すうはいたいしょう


 青春とは偶像ですすねねねねねねねねねねねね

 それを思えばさっきからららら笑いがこみあげててててて止まりませんんんんん。


 何もかしこも、作っては壊したくなる青さの、ゔぁんだりずむ。


 ひとりの机に何人 もにて集った我らが日々、戻らない、戻りた い?それから、壊し てみたい?

 

 そんな 回りくど いことを個/errorがして まで?????


 答えを求めたとき、炎天のナイフに結ばれた矢文が、眼球を突き抜け、直接、脳で、響く。教室の窓辺から、焦がれし声が聞こえました。


 

――何を 迷う必 要 があるの ? って。


 きっと初めから、彼女 にはお見通しだっ たん です。


 壊すた めに作る事こ そ、本質 なんだ よ

 って、


彼 女は 夏想かそう の 中で微 笑ん で いるん です。





 

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