夏片、万華鏡door

「あれは向日葵畑ひまわりばたけの真ん中に浮かぶ、幼い頃の約束でした」


 森の奥、廃墟はいきょで「君は嘘つき」と声を宿すあの子。

  

「幽霊のような美しさと、どこか抜けたような愛嬌あいきょうは鏡の中に捨ておいて、私はラブクラフト的転回てきてんかい偶像ぐうぞうを発します」


 重低音。


 口を開けた。


 炎天下。


 空の色は見たことも無い、青と青。


 くlqひゃnlろん,ばぁ?(あの子の名前ハもはや思イ出セナイノデス 読み方モ正式ニ書キ起コソウトシテモ、モハヤ夢の中でしか聴ケヌ、存在シナイ言語ノ如キモノデシタ)だけが見える影。


 その瞳で誰かの秘密、由来ごと暴かぬよう。

 隠された過去まで、目をらして。


 「君は嘘つきです」


 お祭りの夜の何気ない欠伸あくび


 すれ違う疑念。疑心暗鬼のトートロジー。


 顔の無い唇だけの人物が踊る。


「記憶、匂いをトリガーとして色づきました。ああ、症状は重くなりまして、それから一月もしないうちに私は参列しました」


 縁日のオレンジ色に見たあの日の記憶、気のせいだった。


「君が描いた世界は優しすぎましたか? 向日葵畑ひまわりばたけの上に、君の記憶はリンの自然発火と浮かんで消えたのでしょうか」


 言い残しましテ、鏡ハ割れマシタ。


 そうして真っ暗な部屋の片隅に、ガラスの無い窓だけが開く。小指と薬指の隙間から、マツリバヤシを見聞きする空虚くうきょ


 切なさだけが本物と知リテ。


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