i《実数ではない複素数とも。》

 壁見る見ている見ている見てやいる?


 繰り出した駆け足、片腕、片足、軸のブレを生じつつ走る走る。


 おなじみの都市伝説的怪異、時速80キロにて並走してきたコークスババァが僕に並んだ。


 「安物の瓶入りコークスいかが。」


 一本30円、僕は瓶入りしゅわしゅわ買い買い奇々怪々。


「コークスのプールもいかがかね?

 終日泳ぎ放題、入場料は500円。

 今なら溺死体つきどうだい見ていかぬかね?」


 僕は黒い炭酸飲み飲みしつつ、コークスババァの申し出断り駆け足ダッシュ。


 ミステリー研究会の始まる時間に間に合わなくなっちゃう。

 

 背徳開始。


 かの殺人鬼の残虐性から想起される惨状を一言で表すなら、因幡いなばうさぎ


 ピッポーシンボル。笛鳴らせ。


 窓辺の外、狂い狂い。


 虚数の部員、輪になって踊る。


 実態のない連続猟奇殺人。


「ごめんごめんお待たせお待たせ」


「遅かったわね副部長」


 待ち合わせ場所はいつもの部室じゃなくカフェでした。


 陰気なマスターの経営するカフェです。


 差し出されたのは眼球入りの瓶詰めです。


 中身を安易に取り出すクラスメイト達先輩後輩たち。


 僕の飲みかけコークスの飲み口の上に、被害者から採取したそいつを置いて、きゃーきゃーはしゃぐ。


 探偵気取りの高校生達。


 プロにお任せ殺人鬼駆除。


 ミステリ並に警察が無能なのはちゃんちゃらおかしいね。


 部員の一人の秀才くんが生んだアマチュアDNA鑑定キットの結果待つはずもなく、彼含め僕たちは祥子しょうこも、完治かんじも、怜亜れいあも、も、僕をかばった大好きな先輩も、全員死にましたとさ。


 7人の高校生の死体、でも新聞にゃあ載りません。それがこの町の当たり前。


 ミステリー研究会副部長こと僕が最期に聞いたのは、頭数に含まれずじまいだった誰かのことば。


「――2つのまぁるいおはじきで遊ぼう。すっと、優しく、落としてよ? 地面に落ちたら0点、臓腑ぞうふに落ちたら40点、鼠径部そけいぶは60点、空っぽの眼窩がんかに表向きにはまったら100万点。よぅいドンドン、よーいドン」


 末路はきれいな小説通りじゃないから。



 





 


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