人造物

 携帯禁止の教室で、こっそり響いた左右不揃ふぞろいのイヤホンケーブル穴倉に落ちる。


 草刈りの刺激臭、少女は知る浮ついた火曜。



 立入禁止の鉄塔で、いっそのこと全てを終わらす落雷の願望。


 書架しょかに捧げた残滓ざんし、河川敷の頂上から覗く心象しんしょうはもはやなまりの色、丘上の鉄校舎。



 田舎道の人造物もはや見向きもせず。


 超常の刺激が貫き通す机の上のスマートフォン。

 夢を追った彼女、変わらない理由は無く。

 映画のような高鳴りは泡沫うたかたとなった。


 青春とは所詮しょせん、性の最も美しき昇華にして幻想と悟り、空虚に涙して、変わり、変われず、何度でも再生される。



 群青色ぐんじょういろの幻影に目が眩んだ愚か者達の季節は何処までも立体。


 ブルーベリーの香料引き金として再生されし思い出を、有象無象うぞうむぞうが塗りつぶした。

 醜さの表出ひょうしゅつすなわち過去の否定。


 遊具さへ引っこ抜かれたいこい場の公園。


 枯れた古井戸埋め立てられた、無気力なタイムカプセル覆う、こけむしたセメントと剥き出しの鉄格子。


 びた鉄橋見つける度に覗く、あの夏の中に、それは未だうごめいている。


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