第2話 シャコタン浜辺のぼうけん

酒蔵(さかぐら)


 のぶ君は、おじいちゃんとおばあちゃんが、ホッカイドウという大きな島に住んでいるので、毎年夏にホッカイドウへ遊びに行きます。今年も、夏休みに、お父さん、お母さん、弟のあっ君と一緒にホッカイドウに来ています。去年は、フラノへ行きましたが、今年はシャコタンというところへ行くというので、なんだかワクワクしています。シャコタンでは海で一杯遊べるらしいのです。そういえば、去年はフラノでフラメロに会って、色々冒険をしました。今年は、また何かあるかなと、今から楽しみなんです。


 さて、いよいよ、車に乗って、シャコタンへ向かって出発です。お父さんとお母さんは、シャコタンへいく途中にお酒の工場の見学ができるから、そこへ寄って行こうと話しています。のぶ君は、そんなとこより、はやくシャコタンの海で遊びたいなぁーと思っていました。海辺には色々な魚がいるんだろうなぁー、と考えているうちに、あっという間に、お酒の工場に着いたようです。


「え、もう着いたの?」とのぶ君が聞くと、お母さんに、「そうよ、のぶ君は寝てたからね。なんだか、お魚がむにゃむにゃと寝言をいってたわよ」と言われてしまいました。


 お酒の工場は、広くてきれいなところでした。大きな酒樽があちこちに置いてあって、なかなかいい雰囲気の場所です。歩いていると、お酒の博物館があって、見学することになりました。中には、昔からこの工場で作られたいろいろなお酒が展示してあります。奥のほうへいくと、さっきよりはちょっと小さいけど、酒樽だらけのちょっと暗い感じの部屋がありました。


 あっ君が、「おにいちゃん、なんか、お化けがいそうだね」と怖がってるようです。のぶ君もちょっと怖かったけど、おにいちゃんなので、「だいじょうぶだよ」と言って、中に入っていきました。


 すると、酒樽が一杯並んだ棚の奥の方でなにやら小さな音が聞こえてきました。のぶ君は、何の音だろうと思って、耳を澄ませました。「ぶーん」と何か羽音のようなんですが、すぐに弱くなってしまいます。のぶ君は、酒樽の棚の後ろのほうをのぞいて見ました。すると、そこには、一匹のカブトムシが弱々しくなんとか力を振り絞って飛び立とうとしています。でも、かなり弱っているらしく、飛べません。のぶ君は、そーっと、つかんでポケットの中に入れて、急いで博物館から外に出ました。そして、大きな木の日陰に放してあげて、持っていたジュースをその地面に垂らして、そのカブトムシに吸わせてあげました。しばらく、様子を見ていると、そのカブトムシは少し元気になったようです。のぶ君が「はやく、お家に帰るんだよ」と言うと、そのカブトムシは一瞬お礼をするような仕草をして中に舞い上がっていきました。


 すると、「あら、もう外に出てたの。急にいなくなっちゃうから心配したわよ」とお母さんが声をかけてきました。

「ああ、ごめんなさい。死にそうなカブトムシがいたから、逃がしてたんだ」とのぶ君が言いました。

「あら、そうだったの。のぶ君は、虫にやさしいのね」とお母さんが誉めてくれました。


 さて、いよいよ、シャコタンへ向けて出発です。のぶ君は、また、海辺で何をして遊ぶかに夢中になってしまいました。


シャコタン


 さあ、のぶ君を乗せた車は、やっとシャコタンに着きました。目の前には、どこまでも続く海が広がっています。車は、今日泊まるお父さんの親戚のおじさんのロッジに着きました。ロッジは、全てが丸太でできていて木の匂いがぷんぷんです。二階にも部屋があって、居間は吹き抜けになっていて、広くて感激でした。お父さんが、「あれ、この扉は何かなぁ」と言っています。台所の横の床の扉を開けると下へ階段が続いているのです。


「ああ、これ、下の車庫や物置に行けるようになってるんだ」とお父さんが、感心したようにしゃべっています。のぶ君は、面白そうだけど、ちょっと怖いなぁと思いました。


「さぁ、家の中も一通り見たし、そろそろ、のぶとあきが待ち望んでる海へ遊びに行こうか。」とお父さんがいいました。のぶ君とあっ君は、さっそく「いえーぃ!」と、海で遊ぶ準備を始めました。


 車で数分走るともう浜辺に到着です。海水パンツを履いて準備万端ののぶ君とあっ君はウキウキして、車からとび出して、一目散に浜辺に向かって、海につかってさっそくおおはしゃぎです。


「おにいちゃん、小さな魚がいっぱいいるよ。ほら、あそこにも」と、ふたりは、海の生き物に夢中です。

「どれどれ、おー、ほんとだ。あっ君、あれみてごらん、やどかりだよ。ほら、こっちにもいるでしょ」


 見ているとヤドカリが喧嘩を始めました。喧嘩というより戦いかもしれません。大きなハサミを振りかざして、2匹のヤドカリが必死の戦いをしています。そうこうしていると、片方のヤドカリが負けそうになってきました。のぶ君は、かわいそうになって、「そのへんでやめときなよ」とぼそっと言ってみました。すると、二匹のヤドカリが一瞬のぶ君のほうを見たような気がしました。そして、二匹は、そこで戦いを止めて、どこかへ泳いで行ってしまいました。のぶ君は、ちょっとびっくりしてあっけにとられてしまいましたが、どちらも傷付かずにすんだようで、ほっとしました。


 お父さんとお母さんは、砂浜にシートをしいて、ゆったりと飲み物を飲んで話しているようです。のぶ君は、さっきから、ちょっと離れた海の中を泳いでいるものを見ていました。でも、それは、魚ではないのです。なんだだろーと、じっーっとみていると、それが突然海の中から出てきて宙に舞ったかと思うと、のぶ君の顔の前に降りてきました。のぶ君は、驚いて「うわぁ!」というなり、しりもちをついてしまいました。


「いやー、ごめんごめん、すっかり脅かしちゃったね」

「あ、あー、えー!、フラメロじゃないか!」

「あれ、なんでフラメロがここにいるの?」

「君は、フラノにいるんじゃなかった?」

「それに、海の中を泳いでるなんて、...」

のぶ君は、聞きたいことが山ほどあるのに、それ以上言葉が見つかりませんでした。


「いやね、さっき、仲間のカブトムシがまた君に助けてもらったって聞いて、飛んで来たんだよ」

「そうか。うれしいよ!僕もまたフラメロに会いたいなぁって思ってたんだ」

「ところでさ、また、君たちの助けを借りたいことがあるんだけど、いいかな?」

「え、僕たちの助け?もちろん、いいけど、僕たちで何ができるかな?」

「だいじょうぶさ。とにかく、今晩7時に迎えにいくよ」

「ああ、わかった。待ってるよ」

のぶ君が、そういうと、フラメロはあっという間に、宙高く飛んで行ってしまいました。

「あっ君、これは、またパパとママには内緒にしておこうね。どうせ信じてくれないんだからさ」

「うん、いいよ。おにいちゃん。なんか、楽しみだね」とあっ君が答えました。


夜の浜辺


 晩御飯は、ロッジで、お母さんが腕を振るった料理を食べることになりました。お母さんはうれしそうに料理を作って、テーブルの上に並べています。都会と違って、ロッジの中にはハエが数匹いて、それを追い払うのが、のぶ君とあっ君とお父さんの仕事です。お父さんが、「どっかにハエ叩きでもないかな。ママ持ってない?」と言うと、お母さんが「そうねぇ。ハエ叩きはないけど、扇子が幾つかあったと思うわよ。あぁ、これこれ。これ使いなさい」と言って扇子を二つ渡してくれました。のぶ君とあっ君はその扇子で、なんとかハエを追い払いました。


 さて、おいしいご飯を食べていると、夜の7時が近づいてきました。

「おにいちゃん、フラメロ来るかな?」

「きっと、来るよ」

「なんの話。メロンが食べたいの?」と、お母さんが聞いてきました。

「のぶとあきは、まだ何か食べたいようだな。ママ、何かデザートないの?」

「実は、あるのよぉ。そのメロンが。」といって、お母さんが、メロンを皿に乗せてもってきました。

「はい、どーぞ」とお母さんが、メロンを一つ爪楊枝に刺して、お父さんの口にあーんと入れようとしたその時でした。また、フラノの時の様に、どこからか「アダマール!」という声が聞こえてきて、お父さんとお母さんの動きが止まったのです。そう、フラメロがまた時間を止めたようです。


「また、お父さんとお母さんをビックリさせないように、時間を止めておいたからね。」と、フラメロが言いました。

「おにいちゃん、ほんとに来たね!」と、あっ君が興奮して言いました。

「フラメロ、今回はどこへ行くの?」と、のぶ君が聞きました。

「今回はね、海の中さ」とフラメロが答えました。

海の中か。もっと、プールの練習をしておけばよかったなぁとのぶ君は思いました。


「さぁ、こっちだよ」と、フラメロが台所の横の床の扉を開けて下に続く階段を指差しています。

「えー、そこ、なんだか怖いなぁ」とのぶ君がいいました。

「大丈夫だよ。僕と一緒なんだから」とフラメロが先に階段を下りていきました。

のぶ君とあっ君は顔を見合わせて、よしっとフラメロの後に付いていきました。

階段はフラメロ自体がぼーっと光を放っているので、明るくて別に怖くはありませんでした。

「実はね、ここから秘密の抜け道があって、さっきの浜辺に繋がっているんだよ」とフラメロがいいました。

「そこに鏡があるでしょ。僕の後について、鏡の中に思い切って入ってきてごらん」というなり、フラメロが鏡の中に消えました。のぶ君とあっ君は、手をつないで、えいやっと鏡にぶつかってみました。すると、するっと鏡を通り抜けて、気が付くと昼間の海岸です。もちろん、夜の7時なので暗いのですが、確かに昼間遊んでいた海岸にいるではないですか。


「ほら、抜け道があったでしょ」

「これ、どうなってるの。すごいや」と、のぶ君がいいました。

「まぁ、それはそのうち分かるときがくるよ。ところで、これから、海の中にもぐるから、のぶ君とあっ君にはこれをあげるよ。」と、フラメロは、なにやら取り出して、のぶ君とあっ君に渡しました。ひとつは、オカリナのようなもので、もう一つは、な、な、な、なんと「たこ」のようなものでした。

「そのオカリナのようなものは口にくわえるんだよ。それがあると海の中でも息ができるからね。それから、もう一つのタコみたいのはね、そうだなエンジンのようなものさ。君たちが進みたい方向に押してくれるよ。」というなり、フラメロがそのタコみたいなのをのぶ君とあっ君の背中につけました。タコみたいでくねくねしてて気持ちが悪くて、背中がむずむずして思わず笑いそうになりました。


「それじゃ、行くよ。僕に付いて来てね」というと、フラメロは海の中に入っていきました。のぶ君とあっ君は、オカリナのようなものをくわえて、恐る恐る海の中に入ってみました。そして、恐る恐る息をしてみると、確かにそのオカリナみたいなもののせいで、ちゃんと息ができています。あっ君が「これ、最高!」と言っています。そして、フラメロがぼーと光っているので、海の中もちゃんと見えます。フラメロの後をついていこうと思ったら、背中のタコみたいなのが、海の水を吸い込んでジェット噴流のように吐き出すので、すいすいと泳いでいけます。あっ君が、また「おにいちゃん、これ、いいね!」とはしゃいでいます。


海の御殿


 そうこうするうちに、洞窟のようなところに入って行きました。中をズンズン進んで行くと上の方が明るくなってきて、水面の上に出ました。そこは、たいまつで明るく照らされた御殿のようなところでした。「すごいや」とあっ君が興奮しています。天井は透明になっていて、その上の海で魚たちが泳いでいるのが見えます。のぶ君は、水族館みたいだなぁと魚たちに目が釘付けになりました。


 フラメロについて進んでいくと、右手にまるで雪の妖精とでもいう集団が喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしているところに出くわしました。

「今年は、昨年のような失敗は許されない」

「だから、雪虫をさっさと放さないと雪が降るのがまた遅れてしまうじゃないか」

「しかし、早すぎると、雪虫達がすぐに死んでしまって、かえって、雪の量が減ってしまう」

 のぶ君が不思議そうに雪の妖精たちの話を聞いていると、フラメロが、

「彼らは雪の妖精さ。毎年のホッカイドウの雪の時期と量を調整しているのさ。雪を降らすには、まず、雪虫を放って、雪を迎える準備をするのさ。それをいつ頃するかを話し合ってるみたい。去年は失敗したらしいよ」

のぶ君は、よく分からないけど、「ふーん」と相槌をしてみました。


 もっと進んでいくと、どう考えても、鬼の集団に出くわしました。何やら、酒を飲んで、嬉しそうに話をしています。のぶ君は怖くておしっこをちびりそうになりましたが、お兄ちゃんとして、一応「怖くないもん」という表情をしてみました。あっ君は怖くて半べそになっています。

 フラメロが、「そんなに怖がらなくてもいいよ。彼らは鬼のような顔だけど、それに似合わず優しいのさ。実は、僕と同じ妖精なんだよ。時々ああいう怖い顔をした妖精も必要なのさ」と教えてくれました。のぶ君は、それを聞いて、少し安心しました。


「ここは、海の御殿シャコタンというところだよ」と、フラメロが説明を始めました。「ホッカイドウには、妖精たちのための御殿が幾つかあるんだけど、ここはシャコタンという名前の御殿で、ウミ族の妖精たちの聖地なんだけど、他の妖精も時々集まってくる。さっきの鬼たちや雪の妖精達がそうなんだ」


 さらに奥へ進んでいくと、とてもいい匂いのする、明るいきれいな部屋に着きました。そこには、とても美しい女神さまのような妖精がいたのです。フラメロが、「紹介するよ。ホッカイドウのウミ族妖精達の女王、ホタテンさまだよ」

「のぶ君、あっ君、よく来てくれました。」と、ホタテンさまの透き通るような美しい声が聞こえてきました。

「最近、イカとタコの争いが多くなってきました。戦う度に墨を吐くので、この近くのウミが黒くなってきたのです。黒くなった海を何とか元に戻せないかとフラメロに相談していたのですよ。」

「今日は、のぶ君とあっ君が来ているので、何とかしてくれるかもというので、お待ちしてたのです。」

「僕らなんかに何ができるかなぁ?」とのぶ君が不思議そうにしていると、フラメロが「とにかく、海の中へ行って、イカとタコたちにあってみよう」と言っています。

 のぶ君とあっ君は、ホタテン様に挨拶をして、フラメロについて今来た通路を戻ろうとしました。すると、ホタテンさまが、「もし、のぶ君、あっ君、そのポケットのものは何ですか?」と聞いてきました。のぶ君が「あ、これは、扇子と言って、暑い時に仰ぐもので、涼しくなるんですよ」と言って扇子をホタテンさまに渡しました。あっ君も「僕のは、絵が違うんだよ」と言って、ホタテンさまに渡しました。ホタテンさまは「まぁ、いいものを持ってるのね。海の中でも使えるようにしてあげるわね」と言うなり、のぶ君とあっ君の扇子に何やら吹きかけて、「さぁ、これを持ってお行きなさい」とのぶ君とあっ君に扇子を返しました。


海中の戦い


 フラメロは、のぶ君とあっ君と海に戻ると、まず、チョウチンアンコウの一団に一緒に来てくれと頼みました。チョウチンアンコウが先に前を泳いでくれたので、あたりの海の中も一面とても明るく見えます。しばらく泳いでいくと、彼方になんだか大きな塊のようなものが二つ見えてきました。イカ軍団とタコ軍団がにらみ合って、盛んに墨を吐いて威嚇しているのです。


 フラメロとのぶ君とあっ君は、その二つの塊に近づきました。フラメロが、ホタテンさまからの争いを止めるようにというメッセージをイカ軍団とタコ軍団に伝えましたが、聞く耳を持たないようです。のぶ君も力の限り大きな声で、「海を汚すのはやめようよ!」と叫んでみました。すると、イカ軍団とタコ軍団が、のぶ君達目掛けて墨を吹き付けてきます。のぶ君とあっ君は、手で払い除けようとしますがうまくいきません。ふと、お尻のポケットの扇子に手が触れました。のぶ君はその扇子を取り出し自分の周りで振ってみると、強烈な水の旋風のようなものが放たれました。「あっ君、扇子を振ってごらん」というと、あっ君もやってみて「これは凄いや!」とどんどん扇子を振り続けました。すると、付近の墨がどんどん流れて行って、付近は綺麗な海に戻りました。


「あっ君、この扇子水流をあのイカ軍団とタコ軍団にお見舞いしてみようよ」

のぶ君とあっ君は、扇子で強力な水流を作って、イカ軍団とタコ軍団に向けました。すると、イカ軍団とタコ軍団の周りもあっという間に綺麗な海に戻りました。イカ軍団とタコ軍団は、突然周囲が綺麗になり、驚いて逃げていきました。のぶ君とあっ君は、「やったー!」と叫んで、ハイタッチをしました。


 フラメロが「のぶ君、あっ君、ありがとう。その扇子って凄いね!助かったよ」と言いました。

「そういえば、ホタテン様が、海の中でも使えるようにしたって言ってたよね。このことかな?」とあっ君が言うと、フラメロも

「きっとそうだよ。さすがは、ホタテン様だ」と頷きました。


 のぶ君とあっ君がフラメロと御殿に戻ると、大量のご馳走が待ってました。

ホタテン様から「のぶ君、あっ君、ありがとう!今日の活躍のお礼に、のぶんくんとあっ君の大好きなものを一杯用意したわよ。おなか一杯食べてね」とお礼の言葉がありました。さっき晩御飯を食べたところだったけど、一仕事しておなかも空いたのか、また一杯食べることができて、のぶ君もあっ君もご満悦です。


 そうこうしていると、フラメロが言いました。

「のぶ君、あっ君、そろそろ戻る時間だね」

「うん、そうだね。そろそろ、戻らなきゃ」

「じゃ、さっきの浜辺まで送っていくよ」と言うと、フラメロとのぶ君とあっ君は、ホタテンさまにお別れの挨拶をして、御殿の出口に向かいました。たこエンジンで浜辺まで戻ると、フラメロは岩場で杖を振ってドアの様なものを空間に作りました。「来た時みたいに、ここに入れば、ロッジの地下の鏡の前に戻ることができるよ。じゃぁ、ここでお別れだよ」

「うん、今年も、またフラメロに会えて、とてもうれしかったよ。また、来年も会えるかな?」

「もちろんさ。楽しみにしてるよ。じゃ、鏡の前に戻ったら、上に上がって、お父さんとお母さんがメロンを食べてるところで、「アダマール!」と言うんだよ。お父さんとお母さんが動き出すからさ。じゃぁ、また会おう!元気でね!」と言うと、フラメロがドアを指差して急かす様な仕草をしました。のぶ君とあっ君は「バイバイ、またね!」と別れを惜しみながら、ドアに向けてえいやっと突入しました。


ロッジ


 のぶ君とあっ君は、フラメロに言われた通り、浜辺のドアをくぐり抜けて、ロッジの地下の鏡の前に出ました。そして、そーっと階段を上がって上の階に出ると、そこは、お母さんがメロンを一切れお父さんの口に「あーん」と入れようとしている場面でした。そこで、フラメロに言われたように「アダマール!」というと、あ母さんが動き出し、メロンがお父さんの口の中に入りました。

 あっ君が「あ、戻ったね」とのぶ君にウインクして言いました。

お母さんが、「のぶもあきも早く食べなさい。ママが、食べさせてあげようか?」と言うので、

「いやー、なんかおなか一杯だからいいや」とのぶ君とあっ君は答えました。

お母さんは、「なーんだ、メロンが食べたいと言うから出したのに。しょうがないから、パパとママで全部食べちゃうわよ」とむしゃむしゃ食べ始めました。


 あっ君が、「今年も凄かったね!つぎはいつフラメロに会えるかな」とのぶ君に話しかけました。「来年もまたホッカイドウに来れば会えるさ、ぜったい」とのぶ君は力強く答えました。


 お母さんが「あれ、またメロンとか言ってない?やっぱり食べる?」と言ってきたので、あっ君は「いや、いいや」と答えておきました。


 のぶ君とあっ君は、フラメロとの再会と海の中の冒険を思い出して、来年も是非ホッカイドウに来たいと強く思いながら、眠りにつきました。


つづく

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