第4話 頑張れ、お兄ちゃん!
「ど、どうもー。きらるの実の兄、秋……これ本名だから言っちゃダメだな」
コメント欄
・最初の文字は秋か……理解理解
・妹の名前はライバー名で言えるのに、自分の名前で事故りそうになる男
・可愛いとこあるやん。結婚しよ
・じゃあキラ様は俺が貰っていきますね
(ニチャア)
「いや、結婚はしねぇよ……あと、キラはニチャアなんて笑い方する奴には絶対に渡さん」
言いながら、俺は心の中で安堵の息を漏らす。
途中で気づいて良かった……初手から深雪の配信で事故を起こすところだった。
「えー、気を取り直して。どうも、キラの兄です! Twittarで絵師なんかもやってます。妹に手を出したら潰しに来る人って感じで覚えてもらえると嬉しいかなって」
コメント欄
・お兄ちゃんの絵みてみたい!
・潰すとか怖くて草
・シスコンね……φ(..)
俺は深雪のPCに向かって、言葉を選びながら話していく。
同じ過ちは繰り返したら駄目だからな。
「尊敬してる絵師? んー、めちゃくちゃ多いんだけど──」
コメ欄の質問に答えながら隣にいる深雪の方をチラ見すると、指を丸めてOKのサインを出してくれた。
……よし、掴みは良い感じみたいだし、このまま突っ切ってやろうじゃないか。
◇◇◇
「──はい、今日の雑談配信はここまで!
昼頃に動画も上げるつもりだから、そっちも見てくれると嬉しいな! じゃあ、ばいばい〜」
コメント欄
・おつキラ〜
・アーカイブ見直しとくわ
・おつキラ!
・お兄ちゃん、結婚の話は……?
コメント欄が「おつ」の文字で溢れかえる中、深雪は手を振りながら配信終了ボタンを押した。
「はぁ〜緊張したわぁ……」
今までの緊張感が一気に解け、俺は再びソファーに寝転がる。
それを見ている深雪は笑って、
「お疲れ様! ……今日はごめんね?」
「謝ってすまされるもんかよ……めっちゃ緊張したんだからな!」
「えへへ〜、本当に申し訳ない」
深雪は頭を下げて謝罪するが、声色からして反省していない。
全く、この妹ときたら……。
「……まあ、割と楽しかったから次の配信も出てやろうかな」
「本当に!?」
途端に顔が明るくなる深雪。
俺が配信に出たところで、何も変わらないだろうに……。
「なあ、俺が配信に出て、なんかメリットとかあるのか?」
「もう、お兄ちゃんは分かってないなぁ」
「……ほう?」
「1人よりも2人で配信したほうが、楽しいに決まってるじゃん!」
「おぉ、成長したな、我が妹よ……」
「というのは建前で、貰えるスパチャが多くなるからなんだけど」
「成長しろ、我が妹よ……」
ともあれ、妹の収入が増えるのは兄として喜ばしいことである。
「あっ、今日の配信分のスパチャは私とお兄ちゃんで半分ずつね!」
「え、俺にも?」
ただコメントを読んで、それに答えていただけなんだが……。
「当たり前じゃん、今日のスパチャは殆ど
お兄ちゃんが稼いだみたいなもんなんだから」
……あぁ、思い返してみれば、俺に対して投げられたスパチャが結構あったな。
殆どが「俺と結婚して下さい」だったけど。
「──嫌、かな?」
「いや、願ってもない話だ。これで深雪の誕生日に高いプレゼントを買ってやれる」
「ちょっと、お兄ちゃん……」
俺の何気ない発言に、赤くなる深雪。
……確かに、今の発言は少し恥ずかしいな。
「じ、じゃあ、俺は勉強しなきゃだから部屋もどるわ」
未だ赤くなっている妹を置いて、俺は逃げるように部屋を去った。
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