第3話 配信は盛り上がり

「こんキラ〜! 清楚系VTuberの、星音きらるだよ〜」


コメント欄


・清楚じゃない定期


・きらる様、おっはよ〜


・性楚の間違いだろ


・座布団もってこい!


早朝、我が家のリビングにて。

俺はソファーに寝転がりながら、深雪──いや、星音きらるの雑談配信をリアルで眺めていた。


今日は日曜日だが、父さんは仕事に囚われており、兄さんも姉さんも各々の用事で忙しい。


つまり、この家に長く留まっているのは俺たち2人だけなのだ。


「そっちの性楚じゃねぇよ! あーもう駄目だコレ、センシティブだよセンシティブ!」


PCの前に座る妹は配信のコメント欄に流れるコメントを抜粋して読んでいき、面白いコメントに対して的確なツッコミを入れていく。


……凄いな。

何というか、会話の繋ぎ方がプロ級のそれだ。

話題を切らすことなく、見ている人達を盛り上げている。


「てか、あんな荒々しい声も出せたんだな……初めて知ったぞ」


呟くと、深雪が俺の方をチラチラと見てきた。

……やべ、俺の声が配信に入ったのかもしれない。

小声で言ったつもりではあるが、気をつけないとな。


「今日は最初に2時間くらい雑談して、その後にスパチャを読んでいく流れになってるよ〜」


可愛らしいアバターの首を左右に動かしながら、今後の流れを説明する深雪。

その間にも沢山のスーパーチャット……通称スパチャが流れており、配信開始から数分しか経っていないにも関わらず、合計で12000円を超える大金が投げられていた。


コメント欄


・¥500  初見です!ファンになりました


・¥3000 負けてたまるかッ!!


・競ってて草


・¥200 俺の全財産


「みんなスパチャありがとう〜! あ、でも、お財布は本当に大切にしてね! 本当に」


コメント欄


・なら二度と投げないわ


「ごめんなさいスパチャどしどし投げてください一生の頼みです」


アバターの認識範囲外にも関わらず、絨毯に頭を擦り付けて懇願する深雪。

みっともないぞ、我が妹よ……。


「あ、そうそう。今から皆に重大発表があるよ!」


コメント欄


・引退ですか……。


・重大発表って普通、前日に告知するもんだよなw


・おっぱいマウスパッド発売ですか?


・いくらだい


「チッ、この変態ゲス野郎共が……」


え、急に口わるっ。

そういうキャラ設定なのかな?


ともあれ、重大発表は俺も気になるところだな。


「昨日の夜! 私は実の兄に! VTuberであることを明かしましたぁ──っ!!」


コメント欄


・え、まじ?


・急すぎてwww 


・明かしちゃって大丈夫なの?


「問題なしっ!」


PCに向かって嬉しそうに昨日のことを話しだす深雪。

……なんだろう、なんだか嫌な予感がするな。


「──というわけで今回は! 声だけにはなりますが、お兄ちゃんに出演してもらいたいと思います! どうぞ〜!」


……は?


「ちょ、おま、そんなこと聞いてねぇぞ!?」 


「頑張れ〜」


驚きを露わにする俺に対して、他人事のように笑う深雪。

後で覚えてろよ……。


「────」


コメント欄


・お兄ちゃん登場キタァァァァ──ッ!!


・声めっちゃイケボで草


・おい、俺と声帯を交換しろ!


・お兄ちゃんは俺の嫁


高速で流れるコメント、漂う緊張感。


……ええい、もう何にでもなれ!!


「ど、どうもー。星音きらるの実の兄、秋……やべ、これ本名だから言っちゃダメだった。今のナシで」


次の瞬間、コメント欄は物凄い勢いで流れだしたのだった。










































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