第四の壁越え女神『ロヴン』がナビゲートするよ♪

楠本恵士

はじめに……ロヴンからのご挨拶

 どことも知れない、適度に散らかった部屋──金髪でジャージ姿の女神が一人、畳の上に寝っ転がってスマホでデジタルコミックを読んでいた。

 ジャージを着た北欧の愛の女神【ロヴン】は、こちら側の壁外にいる読者に気づいた様子で気楽に話しかけてきた。


「!! どんな気分ですか? 女の子の部屋を覗き見している気分は、少しエッチな気分になりましたか? 冗談ですよ……初めての方、こんにちはロヴンです。くたれの女神やっています……いきなり作中のキャラクターから、話しかけられて驚いちゃいましたか?」

 ロヴンが、見えない壁をコンコンと叩く仕種をする。


「ここに、読者と作中を隔てる『第四の壁』があるんです……大概の小説キャラクターは気づいていないんですけれど」

 ロヴンは見えない壁に「はぁっ」と息を吹きかけると、布でキュキュと汚れを拭き取る。

「この壁を通して、あたしは読者と会話できたり。作者に要望を伝えるコトができるんです……でも、これは読者とあたしの秘密ですよ」

 そう言いながら口元に人差し指をあてがったロヴンは、ピロシキを口に運び食べる。


「なんでも、作者から〝お酒のツマミの乾きモノ〟みたいな各種短い作品を書くから、ナビゲーターみたいなコトをやってくれって頼まれちゃいまして……まあ、適当に力抜いてやらしてもらいます」

 その時、開演を知らせるブザーが鳴って。

 ロヴンが言った。

「それじゃまた、後ほど」

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