第1031話 朝食を食べながら作戦会議をする

 翌日、起きるとすぐに服を着替えて準備を始める。もちろん移動用の動きやすくて、汚れてもよい服である。

 この服ならサッと着替えられるし、色々と気にしなくていい。普段からこの服を着ることができたらよかったのに。


「おはようございます、ユリウス様」

「おはよう、ネロ。ネロも着替え終わったみたいだね」

「はい。自分で着替えなくても、手伝いましたのに」


 すでに着替えている俺を見て、ネロが苦笑している。主の服を着替えさせるのも従者の仕事だからね。その仕事がなくなってしまって残念なのかもしれない。

 俺としては自分でできることは自分でなんでもやりたい派である。なかなかみんなには理解してもらえないけど。


 そんなネロを連れてダイニングルームへと向かう。今日の集合場所はここである。到着すると、すでに朝食の準備が整いつつあった。

 まだだれも来ていないみたいだな。そう思っていたら、アクセルがやって来た。


「おはよう、ユリウス。ユリウスもワクワクしすぎて早く起きたのか?」

「いや、そんなことはないよ。ちゃんとよく寝て起きたから」


 思わず苦笑いする。どうやらアクセルは遠足の前日の子供みたいに、朝早くから目が覚めてしまったようである。どれだけ楽しみにしてるんだよ。そんなに楽しい場所に行くわけじゃないと思うんだけどな。


 そんなアクセルと今日の天気について話していると、ファビエンヌがやって来た。こちらもしっかりと出かける準備が整っているようである。

 ちなみに今日の天気は雲が多いみたいだ。もしかすると、西は雨かもしれないね。ちょっと心配だ。


「おはよう、ファビエンヌ」

「おはようございます、ユリウス様。あの、どうかしましたか?」


 ジッとファビエンヌを見つめて様子を確認していたので、気になったようだ。ここは正直に話しておこう。変なことを考えていたわけじゃないからね。


「いや、昨日の夜はよく眠れたのかなと思ってさ」

「ちょっと寝つくまでに時間がかかりましたが、眠ってからは朝までグッスリと眠れましたわ」

「それならよかった」


 ファビエンヌは西へ向かうのをちょっと不安に思っているみたいだな。でも眠れたみたいなのでよしとしておこう。睡眠不足のようなら、馬車の中で眠ってもらえばいいのだ。俺たちが近くにいれば、ファビエンヌも安心して眠ることができると思う。


 その後は続けてダイニングルームへやって来たイジドルとセレス嬢にあいさつをしてから朝食を食べる。

 もちろん朝食の時間は作戦会議も兼ねている。


「体調が悪くなったりしたら、遠慮なく言うように。ひどくなったら足が止まることになるからね」

「分かりましたわ」

「気をつけますわ」


 旅慣れしていないファビエンヌとセレス嬢がうなずいている。この中で遠慮しそうなのは二人だからね。分かってもらえたようでうれしい。

 アクセルたちはこれまでなんやかんやあったので、体も丈夫になっているはずだ。自分の体調の変化にはしっかりと気がついてくれると思う。


「天気はいまいちなのかな?」

「曇りの方がいいと思うよ。晴れていると、暑さとかが気になってくるからね」

「西の方も曇りみたいだね」


 イジドルが窓の外を確認しながらそう言った。やはり気になるのは西の天気か。まだ雨は続いているようだし、曇りの間にどこまで進めるかだな。さすがに雨が降ると、俺たちの進む速度も遅くなるだろう。

 いや、待てよ。雨が降ったら、雨よけの魔法を使えばいいのでは?


「どうしたんだ、ユリウス、雨が心配なのか? 昨日の荷物の中にはちゃんと雨具もそろっていたぞ」

「そうだったね。それなら小雨くらいなら大丈夫そうだね」

「大雨になったら、さすがに木の下で雨宿りすることになるだろうけどな」


 うーん、とアクセルがうなり声をあげた。それを聞いて、他のみんなも「うーん」と考え始めた。

 大雨か。確かに大雨に遭遇すれば、身動きが取れなくなるな。大雨にならないように、雨雲を調整しながら西へ進むとしよう。

 みんなに気づかれないように風魔法を使うことになるので、神経を使いそうだ。


「心配と言えば、昨日、湖の精霊様から連絡がなかったのも心配ですわね」

「そうなんだよね。一応、俺たちも西へ向かうことを話しておこうと思ったんだけど。まあ、ちょっと忙しくて連絡が取れないかもしれないって言っていたからね。また話す機会もあるはずだよ」


 昨日のお風呂の時間に湖の精霊様と話せればよかったんだけど、無理だったんだよね。こればかりはしょうがない。ちなみにお父様たちには精霊の加護を通じて、ちゃんと話している。


 元々国王陛下からは西へ向かってほしいと言われていたので、お父様も俺たちが西の辺境伯領へ行くことを止めることはなかった。

 西の公爵家である、ロンベルク公爵家で俺たちをとどめておいたのも、苦肉の策だったはずだからね。本来なら、西の辺境伯領まで行くことになっていたのだと思う。

 王宮魔法薬師たちはすでに西の辺境伯領へ行っているのだ。


「不安要素は多いけど、そんな話ばかりしていると気が重くなるだけだよ。ここからは西の辺境伯領へ行って、やりたいことを話そう。楽しいことも、きっとあるはずだよ」

「そうですわね。まだ起こってもいないことを心配しても、どうにもなりませんものね」

「それもそうだな。西の辺境伯領へついたら、まずは名物料理を食べようぜ」

「確か天ぷらが有名だったね。どんな料理が出てくるのか、楽しみだよ」

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