第1030話 みんなで荷物を確認する

 サロンに到着すると、すぐにロンベルク公爵家の使用人たちがお茶の準備をしてくれた。ライオネルとネロは俺たちと一緒に休憩である。準備が大変だっただろうからね。


「ユリウス様、野営の練習はどうでしたか?」

「問題なく終わったよ。ファビエンヌたちもたき火ができるようになったから、いざというときに役に立つと思う。まあ、そんなことにはならないように、十分に配慮するけどね」

「そうでしたか。私の方ではしっかりと野営に必要な物を取りそろえておきましたよ」

「さすがはネロ。今度はネロも一緒に、野営の練習をやりたいところだね」


 その後はライオネルとネロから馬車に積んだ荷物についての話をする。一通りの野営セットはそろっているようだな。安心した。足りない木材や石は現地調達することにしよう。


「保存食も問題ないみたいだね」

「十分な量を確保できていると思いますぞ。もちろん、馬車と一緒ならばの話ですがね」

「そうなんだよね。万が一に備えて、それぞれで少しずつ、保存食を持っていた方がいいかもしれないね」


 この世界の保存食は干し肉とかなんだよね。正直なところ、しっかり調理しないと、あまりおいしくないのだ。俺は調理もできるけど、他の人たちはどうなのかな? ファビエンヌは魔法薬を作っているので、その流れで料理もできそうな気がする。


 他の人たちはどうなのだろうか。ちょっと気になってきたぞ。ああでも、アクセルとイジドルはこの間、王都の森の調査をしたときに一緒に食事を作ったから、野営飯くらいは作れるのか。

 セレス嬢は……無理そうだよね?


「セレス嬢は料理をすることがあるのですか?」

「いえ、やったことはありませんわ。もしかして、必要になりますか?」

「大丈夫だと思いますけど、簡単な料理くらいは作れるようになっておくと、何かあったときに便利ですよ。それに、愛する人に自分の手料理を食べさせることができますからね」

「なるほど」


 そう言ってから、真剣に考え込み始めたセレス嬢。きっと彼女の頭の中にはイジドルのことが浮かんでいることだろう。

 イジドルをエサにして、セレス嬢に必要な能力を身につけさせる。ちょっと悪い気がするけど、今後のことを考えると、持っていて損はない能力のはず。イジドルに手作りクッキーでも食べさせてあげれば、イチコロだと思うぞ。


 休憩が終わったあとは、みんなで馬車のところへと行き、荷物の確認を行う。保存食よし、魔法薬よし、魔道具よし。

 いや、魔道具は微妙か。結界の魔道具が一つしかないので、万が一、はぐれるようなことになれば大変だ。


 馬車の数も増えたので、結界の魔道具の範囲外に出る馬車が現れるかもしれない。

 これは困ったぞ。さすがに今から結界の魔道具を追加で作る時間はなさそうだ。馬車の数を減らしてもらうという考えもあるけど、ロンベルク公爵家のご令嬢が一緒なので、これ以上、減らすのは無理そうだ。


「ユリウス様、どうかしましたか?」


 俺が「うーん」とうなっていると、ネロがそう聞いてきた。何か準備不足だった物があったと思ったのかもしれない。そんなことはないので、正直に話しておく。

 ネロに不安な思いをさせるわけにはいかないからね。


「思った以上に人数が増えたなと思ってさ。結界の魔道具の範囲から出そうで、ちょっと怖いな」

「確かにそうですね。ロンベルク公爵家の護衛と使用人がそれなりの人数、ついて来ますからね」


 そうなんだよね。仕方がないとは思うけど、「ちょっと過剰なのでは」と思ってしまう。まあ、西の辺境伯家にも顔を出すことになるはずだから、「お忍びで」というわけにはいかないのだと思うけど。


「減らすのは無理そうだから、調査に出かけるときには最小限の人数になるように調整しよう」

「それがいいかと思います。宿泊場所で待機してもらえば安全も確保することができますからね」


 うなずくネロ。どうやら俺の考えが分かったみたいだな。ファビエンヌとセレス嬢が一緒についてくるのはいいんだけど、危険なところへは連れていかないつもりである。

 連絡役という名目で、残ってもらうつもりだ。


 そんなことをしたら、ファビエンヌが怒るかな? でもファビエンヌを危険な目に遭わせるわけにはいかないし。俺たちならそれなりの修羅場をくぐっているので、多少のことなら問題ないけどさ。

 やっぱり過保護すぎるのかな? この辺りのさじ加減がとても難しいぞ。


 馬車の車列が長くなること以外は大丈夫そうだ。まあ、騎士たちが分散して馬車に乗ることになるみたいだし、めったなことにはならないか。

 しっかりと荷物を確認した俺たちは、そのまま夕食の席へと向かった。


 夕食の席ではロンベルク公爵家から再度、セレス嬢のことをお願いされた。もちろん、モニカ夫人からも、ルイス様からもである。

 セレス嬢の初めての一人旅が心配で仕方がないみたいだな。一人旅と言っても、俺たちや、騎士たち、使用人たちが一緒なので、全然一人旅ではないんだけどね。


 それでも心配なものは心配なのだろう。俺がファビエンヌのことを心配するとの同じだね。

 食事が終わればお風呂に入って、あとは寝るだけである。明日の出発は早い。しっかりと寝ておかないとね。




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