恐怖の鬼ごっこヘようこそ

@morino_neco

不穏な空気

俺は夢を見た。


 あらん限りの力を振り絞って、

 

 とんでもなく恐ろしい“何か”から逃げている俺の姿がある、


 そんな不気味な夢。



 ◆◇◆◇



 何処にでもいるようなごく普通の高校生の俺──暗影光くらかげ ひかるは毎日学校へ通って、つまらない授業を受けなければならない。


 それに、親友と呼べるような友達もいないので休み時間は独りで過ごしている。別に悲しくない……。


 長い長い授業がすべて終わり、ようやく放課後になる。


 家に帰宅して、ゆっくりテレビでも見ようと思った矢先に、親から勉強しろと精神的な攻撃を受ける。


 俺は、その攻撃をのらりくらりと躱している間に時間は溶けていって、ゆっくりとテレビを見る暇が無くなってしまう。


 それから入浴し、夕食を食べ、寝支度を済ませた後に、また、今日のような、何の面白味もない明日がやって来るんだろうな、というような憂鬱さをひしひしと感じながら、ベッドへ飛び込む。するとあっという間に朝が来てしまう………。


 そんな感じで、俺にとっては退屈な、そして何の変哲もない平和な日々を送っていた。



 ◇◆◇◆



「はぁ……毎日、同じような生活ばっかりで何が面白いんだよ、何でも良いから面白い事とか、起きてくれないかなぁ……」


 俺だけしかいない自室で、俺は課題のプリントをグシャグシャに丸めながら一人呟く。


 窓の外を見てみると、今はまだ正午が過ぎたばかりの時間帯だと言うのに薄暗く、土砂降りの雨が、ここら一帯に住んでいる生き物すべてに猛威を振るっている。


 それにしてもすごい雨だな。雷も鳴ってるし……どれくらいこの悪天候が続くんだろうか。学校もあるし明日の朝までには雨、上がって欲しいな。


 そう思った俺は、天気予報を見るためにスマホを開こうとした途端、急に意識が遠のいていく。


「あ、あれ…………」


 俺は、吸い込まれるように、床に倒れこんでしまったのだった……。



 ◇◆◇◆



 あれ、俺って……いつの間に寝てたんだ?


 起きたばかりだからなのか、意識が朦朧とする中、力を振り絞って上体を起こしてみると、俺はベッドの上で眠っていたのではなく、床で眠っていたことに気付く。


 いつの間に床で眠ってしまったんだろうか、と考えながら周りを見渡してみると……、


「えッ! ここ、何処だよッ!? 」


 俺はあまりの出来事に驚愕してしまう。


 なぜなら……自分の座っている場所が、昔から見慣れている自分の部室の中ではなく、全く知らない部屋の中だったからだ。


 一体全体、どうなってるんだよ!?


 もしかして、これって誘拐ッ!?

……これが本当に誘拐だったら、俺結構ヤバくない!?


 俺は必死にこの冴えない脳をフル回転させて、なぜ今、自分は知らない部屋の中にいるのか、そして、これは誘拐なのか、それともそれ以外の出来事なのか、はたまた、家族たちのドッキリなのか、というようなことを考える。


 こんなこと考えてても仕方ないな………よし、とりあえずこの部屋を調べてみるか。そうすれば、何か分かるかも知れないしな。


 しばらく考えて、結果が出なかった俺は、まず現在自分がいるこの部屋はどんな部屋なのか、そしてここが何処なのかを調べ始めたのだった………。

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