第6話 現実を知れ

 ――バキィィィン!!

 瞬間、何かが折れたような音が響いた。


「ぐあぁ!!」


 肩を押さえ、転げ回る。

 骨に直撃。折れたか?

 だとしたと結構やばい。


「ゔあぁぁぁぁ!!」


 血が、血がァァァ!


 ――って、あれ?

 


「おかしいな……。鑑定アナライズ


 ##########

 ステータス


 氏名 なし

 レベル 88

 称号 なし

 種族 ゴブリンソルジャー


 スキル

 棒術 加速 馬鹿力

 ##########


 レベル88…………。

 確か俺は、


 ##########

 ステータス

 氏名 ナルセ

 レベル 1583

 称号 なし

 種族 人族


 ユニークスキル

 超速成長


 スキル

 固形魔力ソリッド 魔力剣ソリッドソード 剣術 索敵 鑑定アナライズ

 ##########


「…………」


 あーー、うん。なんつーか。

 超速成長がなかったならレベル5ぐらいだな。




 ……………。

 ………。

 ……。




 超速成長が無かったのなら…………。


 うん……。



 そりゃこんなにレベル差があったら、


「攻撃が通る訳ないだろ!!」


 当たり前である。

 ってことは、さっきのあの音はまさか……


「ぎゃぁぁぁぁ!! 剣が折れてるぅぅぅぅ!!」


 それはゴブリンの剣が折れた音だった。

 もう、こんなレベル差があるならワンチャン素手でも、


 ――ドッゴォォォォォン!!


 倒せるみたい……ね。

 そして敵は空の彼方へ。

「俺は、星になる!!」って感じで。

 …………グッバイ、尊い犠牲よ。忘れないぜ、お前のこと。


「さあて、と」


 再びゴブリン達に向き直る。

 この前は良くやってくれたな、雑魚共め。

 蹂躙の、始まりだァァァァァァァ!!


 ――ドッゴォォォォォン!!

 ――バッカァァァン!!

 ――ドンガラガッシャーーン!!


 圧倒的な戦力差。

 ナルセは次々とゴブリンを殴り飛ばしていった。

 そして五分後、そこには地獄ができていた……魔物の。



 ##########





「あーー……。やり過ぎたか?」


 大量のゴブリンの死体に囲まれ、ナルセは一人呟く。

 流石にこんなに大量の死体があったら行商人とかが見つけたときに問題になりかねない。

 どうにかしてこの事実を隠蔽しなくては。


「と、言ってもだなぁ」


 FOR EXA例えMPLEで考えてみよう。

 まずは、一番簡単そうな「埋める」

 うーーーん、祟られそうだ。夜、夢に出てきそう。

 あんまりそう言うの得意じゃ無いんだよな。

 てか本当にアンデット系モンスターが来そう。


 なら、「燃やす」

 めんどいなあ。魔法を使えれば便利なんだが。

 ぶっちゃけまだ火すら起こす段階にないし。

 ああ、焼肉を手軽に食べれたあの前世ときに帰りたい。


 次に、「どっかに捨ててくる」

 論外だ。このクソ重い死体をどこまで運べと?

 そもそも何往復しろと? どこまでブラックなんだ。

 って言うか、そもそもこの世界には不法投棄とか無いよな?流石に。


「はて……」


 頭の上にクエスチョンを浮かべる。

 楽な方法。楽で手間がかからず、さらにアリバイを作……ゴホンゴホン。騒ぎにならない方法。何かないか?



 そしてナルセの思考時間は待つこと五分。ついに頭上のクエスチョンは電球へと成り変わった。


「なあんだ、簡単なことじゃないか!!」


 彼のとった方法とは、それは――



 ##########


「紐無しバンジーー!!」


 広大なる崖に、彼の声が響いた。

 そして同時に大量のゴブリンの死体が放り出される。

 既に動くことのないそれらは重力に身を任せ、落下してゆく。

 まるで奇妙な踊りのように身体をくねらせて……






 いやーー、近くにこんな格好のゴミ捨て場があって本当に良かった良かった。

 なあに、不法投棄ではないよ。

 広大なる自然に肥料を与えているんだ。

 いつかは腐って土に還るさ。

 いつか、そう、数十年後かな?

 俺は、そんな不法投棄なんて阿呆なことばっかやるやつじゃない。

 たまには自然に貢献するんだよ。たまには、ね。





 ##########



 翌日の地方紙『キャニオンニュース』より。


 先日、本都市付近の某渓谷にて、討伐者不明の数体のゴブリンソルジャー及び、一体のゴブリンキングの死体が発見された。

 これは我が街を襲う予定に編成されたゴブリンの群れであることが発覚しており、討伐者には特別報酬の手当も検討中である。

 また、一部の住人の間では、付近のツリーハウス内に住む、通称『大樹の仙人』の仕業では、と言われているが、真偽は不明である。

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