第3話 転生者のお家探し

うーーーーーーむ」


 レベルが33上がりました、だと?

 あんな雑魚(それでも瞬殺では無い)を数匹倒しただけで?

 何故だ? 何故なんだ?

 全く分からん。


「うーーーーーーむ」


 本日四回目くらいの唸り声。

 それでもわからん、わからんのだ。

 こういう時にさっさと理由に気付いて無双ルート、というのが異世界転生物のテンプレだが、俺には分からん。


 ああ、まさにこういう時にかの有名なムハンマドみたいに天啓を受けられたらなあ……


≪お呼びですか?≫


「のわっ!?」


 突如聞こえてきた声に飛び上がるナルセ。


 なんかどっかで聞いたことがあるような声のようだ。


≪はじめまして。私はこの世界の全てのものの案内人。人は私を「天啓」と呼びます。今回はお呼びがあったため参上いたしました≫


 え……?

 こんな奴呼んだっけ?



≪ナルセ様は先程、「ああ、天啓を受けられたらなぁ」と仰いましたので≫


 ああ。

 そういやそんな事言ったけかな。

 てかこいつどこかで会ったっけ?

 なんか聞き思えがあるような無いような……


≪はい。暗黒空間での声は私の声です。ですので正確には「はじめまし」てではなく、「また会ったな!」ですね≫


 ........元気だね、キミ。

 何かいいことでもあったのかい?


≪先ほどのレベルアップはナルセ様のユニークスキル「超速成長」が原因であると思われます。効果は「取得経験値が増える」スキルのようです≫


 ほへーーーーー。

 経験値が増えるんだ。

 まあ確かに言われてみれば大したことない。

 そして単純。

 名前の通りの効果だ。

 そして普通に強い。


 ん?

 でも俺最弱魔物を五体ほど倒しただけだぞ?

 そんな程度で33もレベルが上がんのか?

 まさか――


「ついでに……何倍くらい?」


 なんか申し訳ないことを聞くような姿勢で、問うナルセ。

 まあせいぜい五倍とか六倍とか?

 そのレベルだろう。

 そう思いながら水筒の水を飲み――


≪まあざっと、三百倍、ですかね? 転生者は全員保有しているようで、みんな聞きますがね≫



 ブッ!!

 吹き出したわ。

 え? ちょっと待て、三百倍? 三百倍ねえ。

 ふーーーん。

 結構多めじゃね?

 そこそこ増えるじゃん。

 さすがユニークスキルといったところか。

 三百倍〜三百倍〜三百倍〜♪


「はは……ははははは……」


 乾いた笑い。


 てか、てか――


「三百倍!?」


 ドサ。

 何かが倒れる音がした。



 あーーー、びっくりした。

 急に「あなたの経験値は三百倍です」って言われたらそりゃびびるね。

 不可抗力だ。

 そういや転生者は全員持ってるって言ってたな。

 ってことは他にもいるんだろうか、転生者が、今。



≪否。答えられません。私は常に「中立」です。転生者を目の敵にする魔族集団もありますので≫


 あらまぁ。

「中立」ねえ。

 まあ確かに転生者を狙う集団に俺のことを教えない代わりに俺にも他の転生者の情報を教えない、というのは妥当だろう。


≪他に何かございますか≫


「もう良いよ。そんじゃまた今度」


≪了。失礼します≫





 ふう、なかなか良いこと教えてもらったな。

 それでは街に入って拠点決めでも………


 その瞬間、ナルセは悟ってしまった。

 致命的なやっちまったポイントを。

 しかもかなりまずいやつを。

 別に今着ている服が今ブレザーなのはまだいい訳だ。

 百歩譲って、いや、万歩譲ってそのブレザーはただ今バスガス爆発の影響で穴だらけなのもまだ許容範囲内。




 ただ、ただ、皆さんは彼のユニークスキルを覚えておられるだろうか?


 ユニークスキル『超速成長』。

 はっきり言おう、多分これやばいやつ。

 ラノベあるあるの爆速レベルアップできちゃうやつ。

 無双ルート一直線のやつ。


 そして『鑑定』。

 これ言わずともわかるだろうが、誰にでも、それこそ『偽造』を使っていないやつのステータスなら自由に除けちゃうスキルだ。





 …………お分かり頂けただろうか?


 つまり、こういうことが起こってしまう可能性があるのだ。


 ステップ①

 街に入る。


 ステップ②

 穴だらけのブレザーは超目立つ。


 ステップ③

 絶対興味本位に鑑定かけてくる奴がいる。


 ステップ④

 死ぬ。



 おおー、無敵の四段構え。

 流石っすわぁ。



 ていうかそうなるとまじでどうなるか分からん。

 もしかしたら強すぎて秩序を乱す可能性のある奴は奴は問答無用で…………!?なんてこともありうる。


 おお、危ない。

 気づかなかったら◯んでた。


 …………でもそうなるとどうしよーかー?

 どこに住めと?


 とりま迷宮で食料は調達するとして、寝ぐらは……


 迷宮?


 てかそれより早くレベルを上げて身の安全を図った方がいい?


 うーーーーん、どうしたことか。



「……とりまレベル上げるか」


 考えた末の結論がそれだった。









 この世界を色々と散策した結果、やはりこの世界は中世ヨーロッパのような城塞都市が点在し、全てが「点と点とで」繋がる、ファンタジー物のあるあるの設定だった。

 ただ、違うのは現在存在する八つの国のうち七こが魔物の国であること。

 つまり人間はただいま、すこぶる劣勢期なのだ。


 そして、ダンジョンについてだが、これは攻略することでクリア報酬が貰えたり、初踏破者となると特別なスキルが貰えるらしい。

 そしてダンジョンではボスは一度倒したら復活しないという。

 それなら、未踏破ダンジョンのボス部屋を改造しればいいのでは?



 グッド。


 じゃあ未踏破ダンジョンを攻略するためには?


「やっぱりレベルか……」


 そう、結局はレベルを上げる必要があった。

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