Life is not fair; get used to it.

第44接種「人生は公平ではない。そのことに慣れよ。」

 おみ黒雨くろうは哄笑した。


「ははは!第〇波なんて、いつまで言ってるんだろうな。ウイルスは終わらない。いつまでたっても収束しないじゃないか」


――この作品だって、ウイルスが終われば完結予定だったのに、いつまでたっても完結することができないんだよ。


「まったくシャレになんねー」


 行きつくところまでいったら、次はどうすればいい。世界を征服したんだぞ。中国では二億人、人口の何分の一だ?とにかく膨大な人間を苦しめた。殺した。この世を去ったものだけでない。


 失業、離別、辛苦、悲壮。あらゆる負の感情を生み出し、経済を停滞させ、意欲を、意識を逓減させた。ここまで人類にデバフをかけたものなどあるだろうか。


 喪失の限りを尽くした先には何があるのか。


 それは希望か。


 いや悪あがきってやつだ。


 泥臭く藻掻いて足掻いた者だけが富を手にする世界。


 病人を手玉に、藁をも掴もうと躍起になっている人間から毟り取り、狡猾に生きた者だけが、勝者となる。


 悪人が弱者を淘汰する世界の完成だ。


 緩やかにその事実が迫っていることに人類は気が付かないふりをしている。今日を生きるのに必死で、物価上昇、人員削減、賃金低下、出生率最低なんかの負の事実から目をそらすんだ。


「ははははははは!」


 笑うしかないだろう。未来は暗澹たるものだ。希望や光なんかない。これから待つものは地獄だ。みんなは地獄をどう生きる?どう生きたい?


 俺は悪だ。これからも困ることをして絶望の淵に突き落としてやるよ。


 反骨精神を持て、いつかこんな現状を打破してやる。この沼から出てやるなんて強い意志が必要だ。


 この世を変えたいと強く願う奴だけが生き残る。怠惰に人任せに生きている人間に未来はない。


 それだけ、覚えていればいいさ。

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