第43接種「モテモテハーレム生活を目指して」

「な、なんだってー!」


 あからさまな反応をする庵治原。あーしはついでに言ってやった。


「ってことで王都はもう平和ってこと。特に戦う必要がないってこと」


 これで勢いがストップするものだと思っていたが、どうやら一筋縄ではいかなかった。


「よし、じゃ、次のとこいってみよー!」


「ほんと、勢いだけだな。駆け出しの芸人か!」


「うっせー、ばーかばーか! 別にいいだろ、俺は大活躍して大活躍して、女の子にモテモテハーレム生活がしたかっただけなんだ!」


 不純な動機すぎる……


「主様……僭越ながら……」


 二人のやり取りを見かねたザイファが言った。


「私のような奴隷をたくさん販売している国がありますッ!」


 あれ……?


「主様、ぜひ、その国をぜひ! ばたばたのめためたにして、ハーレムを作ってください!!」


 あれあれあれ……?


「デル姉! 善は急げだ! こうしてはいられない!」


 ザイファの一声で、次の目的地が決定した。


「いや、これめっちゃ怪しいけど……」


「ザイファは俺たちのファミリーだぞ。船員クルーなんだぞ! 疑っているのか!」


「いや、全面的に信用するのが良くないって言って……」


「いくぞ!」


「ちょっと待つ……と……か」


「いくいくいくいくいくいく!!!!」


 こんなの、ただの駄々を捏ねる赤子だ。


「ったく、しゃーねーなー」


 付き合ってやろうじゃねーか。とことん最後まで付き合ってやろう!


「そうと決まれば、いざしゅっぱー……」


「主様! ご飯食べたい!」


 随分と自己主張の激しい奴隷だ。いや、もうファミリーなんだから言いたいことを我慢する必要がないということなのかもしれない。


「うむ、ザイファの言う通りにしよう。ザイファはなんせ船員クルーだからな!」


 船員クルー呼び、こいつめっちゃハマってるじゃん……


 この時のあーしたちは、知る由もなかった。


 このザイファが本当に邪念の塊であったことに……


 あーしたちの旅路の障害となるということに……

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