第33接種「激突!三傑!三英雄!」

「よし……これからテイアラ・ガイウ・スクマの三名との決戦だ! みんな準備はいいか?」


「いや、ムダイが仕切ってんじゃないです。ミュウカは別にムダイの仲間になったってわけじゃねーですので」


「そうだぞ。パイータもムダイに指図されると、腸が煮えくりかえっちまうってーの」


 不服な様子をあらわにする二人。だが、それも本心からではないことは分かっている。二人も俺も、時間遡行のからくりを明らかにして、元の時代に戻るという目的は同じだからだ。


「アルフとルフアは……」


「お姉さんは、いつでも大丈夫……」


「我も師匠と同じく、戦の準備は万端」


 現在のルフア、そして過去のルフア。両者の戦意も高揚しているようだった。


「それじゃ、いきますか!」


 俺はそう言って覚悟を決める。これは俺たちの未来を取り戻す戦いだ!


「おい、準備はできたのか?」


「まさか、その程度の力で俺たちを倒せるとでも……」


――思っているのか?


 急に背後から声がした。俺たちの時間が切り取られたかのように、突然現れ、唐突に飄々と奴らは現れた。


「テイアラ・ルコアール、今から貴様らを殺す名だ」


「ガイウ・ケンオーン、俺は……負けない」


 おそらく、鉄帝テイアラ・ガイウ。二人は無敗の戦士、鉄の掟を順守する騎士団長。手を合わせゴキゴキと鳴らしている。絶対に見逃さない、絶対に殺すという殺意が感じ取れる。


「じゃ、作戦通りにいくぞ」


「歯ァ食いしばれよォ!」


――いっせーのーで!


 そう、こうしてテイアラとガイウが現れた場合、ミュウカとパイータが最初に行動を起こすことが決定していた。これが、俺たちが元の世界に帰還できる可能性が高い。そう判断してのことだった。


「うああああああああ!」


――俺は二人に全力で吹き飛ばされた!


「せいぜい、元気でな!」


「あばよです! 絶対生きて再開するから!」


 そう、俺はテイアラの相手もガイウの相手もしない。


 俺は……


「スクマ・グショウド。お前一人で、俺に勝てると? そう思っているのか……」


 この【ショクイキ・セシュ】の長、スクマと戦うのだ!


「パイータ、ミュウカたちはこっちを!」


「ミュウカ、了解。パイータたちは、テイアラをやっつける」


 ミュウカとパイータはテイアラと対面する。二人はこれまでも幾度となく危機を乗り切ってきた。だから、今回も二人でなら……


「なんとかなるとでも? 思ったか?」


――着火引火爆火ばーーーーん


 テイアラ・ルコアールは右手の指をぱっちんと鳴らした。大きな轟音とともに、灼熱の煙火が広がった。何かの爆ぜる破裂音が聞こえ、豪炎がその場を覆いつくした。


「ははっ。これで終いだ」


 隣で二人が燃焼する様を見ていたルフアとアルフ。二人は完全に震えあがっていた。


「師匠、師匠なら……なんとか……」


「ならないわね……」


「我は……我は……最強の……陰惨……」


「ああ? 何言ってるか聞こえねぇぞ!」


「ひぃ……」


 ガイウはルフアの方をぎろりと睨む。その凄みですっかり蛇に睨まれた蛙の如く、怯んでしまった。


「命だけは……命は……」


 情けない声で命乞いするルフア。アルフはただ黙ってガイウを見つめている。


「…………」


「あ? お前も何じろじろと見てる? こいつよりも先に死にたいってか?」


「いいえ、ワたし、いやワたしたちはハウツ君があいつを倒すまでの時間稼ぎさえできればいいのよ」


「……師匠……まさか……」


――陰惨魔術、凄惨なる痛み分けドレッド・デッド・ドロップ


「ふん! 受けてやる、お前の覚悟を!」


 アルフはガイウとともに影の中へと姿を消した。


「ハウツムダイ。お前はここで平穏に過ごす人生もあったはずだ。どうしてそれを選択しない。俺たちは無駄な殺生は好まない」


 スクマは言った。


 たしかにその通りなんだ。俺たちは争う必要がない。本来ならば、この【ショクイキ・セシュ】に侵攻する理由などなかったのだ。



「でも、そっちが俺たちをこの時代に飛ばしたんだろ! 俺たちをこの時代に飛ばし、魔王の攻撃で俺たちを殺そうと……」


「…………」


 スクマは険しい表情に変わる。まるで、そんなこと知らないとでも言わんばかりの、いったい何のことだと言わんばかりの訝しむ表情。


「まさか……犯人は別にいる?」


「確実に言えるのは……俺たちの中に時間を操ることができる人間は存在しない」


 スクマのその言葉を聞いた瞬間、俺は、時空がまた歪むのを感じた。


「一体何がどうなってるんだ!?!?」

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