†異世界ワクチン接種†~注射で死んで2回目接種したら、肉体が退行しちゃったけど【状態異常無効】etc……スキルを手に入れたから、仕方なく第二の人生謳歌する~
第31接種「俺たちのワクチン接種はここからだ」
第31接種「俺たちのワクチン接種はここからだ」
「ってことで、サクッとやっちゃうですよ!」
「ま、こんなのパイータ達には効かないし……」
――!?!?
ミュウカとパイータの体が重力に押しつぶされる。
「我は、世界を
所詮は中二病だと侮っていた二人は、あっという間に彼女の魔法の餌食となった。
「ちょっと、ルフアさん……昔の自分なら、当然、倒せますよね?」
俺がルフアに耳打ちするが、ルフアの表情は固く、
「力任せの粗削り、若い力には適わないのよ……」
まったく、なんてこった。もう一度、ルフア・マーガンと対峙する羽目になるとは……
しかも、パワーアップしたルフア。過去の自称闇の力を得たエルフと戦わないといけないなんて……
俺の脳内には唯一選択肢があった。この方法ならば、きっといける。そんな秘策があった。
俺は、息を目一杯吸い込んで、目の前のルフアに言った。
「エルフのお姉さん!! 最高!!!!」
隣の現ルフアを攻略した時と同じように声を掛けた。
これで、効果があればと考えていたが、どうやら人生そう甘くはない。
「は? 誰がお姉さんだ? 我に向かって生意気な奴め……」
違ったアプローチの方が幾分か可能性があっただろう、そう感じた時には陰惨魔法の影響で、頭を全く上がらないほど地に押し付けられていた。
「うぐ……」
こうなってしまえば、俺もミュウカとパイータのように手も足も出せない。腕だけ巨大化させるあの【巨人の腕】も使えない。
万策尽きて万事休すってやつだ……
すべての望みは現ルフアに託すしかなかった。
「さ、残るは、貴様一人だが?」
現ルフアと過去のルフア。過去のルフアは目の前にまさか未来の自分がいるなんてまったく想像もできないだろう。
「ほら? 怖気づいたか? 我の力に……」
だが、現ルフアは知っている。己の弱点を。己の暴かれたくない素性を……性癖を……
「引き出しの上から二番目、そして、その中の奥……」
「……!?!?」
過去のルフアの動きがぴたりと止まる。だが、それを気に留めることなく現ルフアは淡々と続ける。まるで、呪文のように。それを唱えれば、過去のルフアの痛いところを突くことができると確信しているようだ。
「その中には……慰み用の……」
――その口を今すぐ閉じろおおおおおおおおおおお!!!!
過去のルフアは激高する。それでも、なお、現ルフアは眉一つ動かさずに続ける。
「『ショタおね絶対主義だもん』、『ショタっ子ぐらし』、『少年と姉の日の思い出』」
「やめろ……やめろ……」
頭を抱える過去のルフア。これらは彼女が所持する書物にすぎない。だが、その書物は他人に知られたくない性癖の塊、それをつらつらと暴露されたのだ。顔から火が出るような心境なのは間違いがなかった。
「もう、やめてくれ……一体……貴様は……何者なのだ……」
憔悴しきったルフア。先ほどまでの生き生きとした姿はどこかに消えてしまっていた。
「ふふ……ワたしは、アルフ。あなたの行動は全てワたしに筒抜けよ。あなたじゃ絶対にワたしには勝てない……」
現ルフアはアルフと名乗り、過去の自分に対してマウントを取った。
「アルフ……」
自分しか知らないはずの秘密を知っているアルフを、過去のルフアは完全に全知全能の神だと信じ込んだ。
「我を……アルフ様の弟子に……してください!」
アルフはしばらく考えて、こう言った。
「ワたし、弟子はとらない主義なの……」
「そこをなんとか!!」
懇願するルフア。アルフには、過去の自分を弟子に取るなんて、そんな背徳的な行為が許されるのだろうかという葛藤が見えた。
「ふふ……それじゃ、この家を10年ほど明け渡してもらうわよ」
「構いません! アルフ様! よろしくお願いします!!」
こうして、俺たちはターベの丘にあるルフア宅で修練の日々を送ることができた。
テイアラ、ガイウ、スクマの三人を打倒するため。
ただ、その一心で、俺たちは鍛錬を重ねる。
俺たちの物語は一旦小休止だ。
だが、止まるわけじゃない。逃げたわけじゃない。
力を蓄えて、培って、磨くだけだ。
全ては魔の称号を取り戻すため。
そして、チオを救い出すため。
「俺達には時間も技も、力も、何もかも足りないんだ……だから……」
ワクチン接種の弊害が肉体が退行すること以外にあるなんて、この頃の俺達には分からなかった。
時間をかけて力をつければ然るべき場所に辿り着く。
そんな勘違いをそんな思い違いをしてしまっていた……
【第一部 完】
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