第13話

 あの日予想した通り、仲違いもあった。そして仲直りした。

二人で暮らして、役者として全然違う場所にロケで駆り出されたりした。

顔をあわせればふざけたり怒ったり、まぁなにかしら、互いにちょっかいを出し合い生きていた。

 そのうちに、チョコが恋人ができたという。

バニラは白状した。もっと前から恋人がいたことを。


 兄弟もいつまでも同じ場所には住んでいられない。

いつか別れが来るのは誰でも同じことだ。

「四合院にはどちらが残る?」と二人で話した。

で、その結果。


二人で出ていくことにした。


 後ろ髪なんて引かれまくりである。

でももう、この場所自体も親みたいなものだったから。


 チョコもバニラもいっぱしの役者になり、稼ぎも安定し、ついに四合院を出る日が決まった。

仕事の都合のせいで冬の日だ。

雪の降らない日に出たいな、なんて、二人で話した。


 ストーブにまきをくべて、ぼんやりと火をみつめた。

あんまり頼りにならないストーブとも、今日でお別れだ。

家の中はもうすっかり荷物を運び出され、かなり殺風景になっていた。

なぜだか、ジャンボと出会ったばかりの頃を思い出す。

そういえば物が全然なかったね、と二人で話した。



「ふふ……初めてかぁ……あの時のジャンボめちゃくちゃ怖かったよな」

「なー。俺絶対殺されると思ったよ。内臓全部とオサラバだと思った」

「でも、ごはんは美味しかった」

「たまに大失敗もあったけどな」



 寝台にいつものように横になる。

妙に寝付けなくて、二人はグタグタと話す。

もしも、あの日、資材の下敷きにならなかったら、三人はどう生きてただろうなんて。


 ジャンボはすげー役者になったかもしれない。

もしかしたら、俺たちは京劇の方に行ったかもよ?なんて話して、ジャンボが嫌がったよきっと、なんて話して。


 もうあれから何年も経ったのに、未だに昨日までジャンボが居たような、そんな会話になる。

きっとここにいる限りずっと、自分たちはそうなのだろう。

だから明日ここを出ていく。

自分の足で生きるために。



「ま、とにかくさ、楽しかったよな」



 二人はやっと眠った。

明日、もし、13歳まで戻ってたら……。

そんな夢を見た。

寝る前に話したせいか、夢の中で二人は京劇の役者になっていた。

ジャンボがその舞台を見て「ハオ!!!」と叫んでいた。

嬉しそうなその顔に、二人は照れて喜んでいた。

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