第7話

「まずな、チョコ」



二人は四合院を出てトロリーバスの停留所まで向かった。



「ジャンボは生きてた。さっきのは警察からの電話だ」



 たどり着いたバス停にしばらくするとバスが来た。

それに乗り込み、行先の病院の名を告げる。



「ジャンボが警察沙汰に……」

「というより、警察以外対応出来る機関がなかった。今は病院で寝てるらしいよ」



 無言のままバスは夜の道を進む。

財布や大事なものをふと確認してカバンを閉じた。



「警察が通報でやってきた時ジャンボはな」



 二人は病院の緊急の入口の方から入った。

正面はもう閉ざされ、明かりも落ちている。


そしてついに、二人は眠るジャンボの横にたどりついた。



「蝶を追ってたらしい」

「蝶?」



思わず聞き返すチョコに、バニラは暗い目をして答える。



「全身怪我してて、多分、どこかで車に轢かれたはずなのに。黄色い蝶を……ずっと」



 話が通じる状態でもなかったとバニラは言った。

今、目の前に寝ているジャンボは包帯まみれで、もう何がなにやら分からない。

車の前に飛び出してしまうほど意識が混濁していたのだろうか。

それとも、まさか、みずから。



「まだモンキチョウの季節には早いのに」



 チョコはふと呟いた。

バニラはその横で、やはりぼんやりとしている。



「夏の蝶だもんな。これからだ……」



 会話は途切れた。

二人は病院のベンチを借りて泊まり込むことにした。

明日、ジャンボは目を覚ますだろうか。

自分たちのことを覚えているだろうか。


 二人は考えるのを早々に諦めた。

今は寝るしかない、そう自分に言い聞かせた。

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