第2話
「彼のご家族は……」
「いや……いないらしくて。あの子たちの面倒を見てるってことは聞いてます」
現場から近い病院で、医師の問いかけに現場の責任者は苦しげに答えた。
なんとか資材の山を退かし、見つけ出した彼は血まみれで倒れ、それからずっと意識が戻っていない。
その胸の下に抱えられた子供たちは、幸い酷い怪我は負ってなかった。
しかし、目を覚まさないジャンボの横で、ずっとうつむいて、ほとんどなにも話さない。
資材を倒してしまった作業員も自責の念にかられ、見舞いにも来ても、ずっと謝り続けるばかりだった。
「先生……」
ふと、子供たちが袖を掴み合いながら、医師の方へ歩いてくる。
「ジャンボ、いつ起きるの?」
誰も答えられなかった。
無言の時間ばかり流れて、チョコとバニラは一層沈んだ顔になり、泣きもせずに床を見つめる。
現場の責任者はここ数日、ずっと迷っていた言葉を口にした。
「……あいつが目を覚ますまで、俺のとこへ来ないか?」
チョコとバニラは顔を上げなかった。
けれど、それは真剣な申し出で、子供たち二人に選択の余地などないことも分かっている。
分かっているけれど、初めて二人は大声で泣き出した。
「ジャンボは……ジャンボはすぐ起きるよ!!!」
「ジャンボ強いもん!!!キョーゲキのすごい人なんだもん!!!」
ぼろぼろ涙を流す子供たちに、これ以上声をかけられる者はいなかった。
しかし、次の瞬間、空気は一変する。
「江白さん……!?」
ハッと全員がベッドの方を見た。
きっと看護師の声だったのだろう。
その視線の先には、上半身を起こしたジャンボがいた。
「ジャンボ!!!!」
子供たちは夢中ですぐさま彼の元へ駆け寄った。
頭や腕に包帯を巻いたジャンボは、ぼんやりと視線を二人の方へ向ける。
「ん……?」
「ジャンボ!!!良かった……!もう起きないかと思った……!」
「あれ……?ここ、どこだ」
「ジャンボー!!!」
子供たちはさっきよりもわんわん泣きながらジャンボにしがみつく。
その二人をぼーっとした目でジャンボは見ていた。
確かに視線は二人を追っているのだが、どこか虚ろで、焦点があっていない。
子供たちは必死に泣いていたので異変に気が付かなかった。
しかし、医師やたまたま居合わせた現場の責任者は、覇気のないジャンボの顔を見て、なにも言えずに黙り込んでしまう。
「家、帰るか」
ジャンボは子供たちの頭を撫でた。
二人は泣きながらも何度も頷いた。
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