第31話 それぞれのルート

『止まれぇー!そこの2台!左に停車しろぉ!』


 覆面パトカー2台に追われながら保土ヶ谷バイパスを横浜方面に向かって走ってきた麗桜と風雅はそのまま首都高速に向かっていった。


 なかなか勢いのいいパトカーらしく、かなりしつこくてあわや一般車とぶつかってしまいそうな程危険な運転で追跡してくる。


 時間のことを考えても、このパトカー2台をどこかでまく為に寄り道もできず、そのまま大黒に向かうしかなかった。


 哉原たち鬼音姫にも連絡できていない。もしかしたら横浜町田の合流地点で待ってしまっているかもしれない。


『くそっ、とんだ誤算だ。なんとか樹さんに知らせねーと』


 パトカーとのカーチェイスの中麗桜が思っていると、その速度の中後ろから何かがものすごいスピードでやってきた。そしてあっという間に2人の前まで踊り出てきた。その背中には神奈川最大を誇るチームの名前が堂々と見えた。黒い長い髪がなびき、それが誰だか風雅には一目で分かった。


『神楽さん…』


 麗桜と風雅の間まで下がると大きな声で言った。


『なんだい、あんた。あたしとの約束すっぽかしといて、こんなとこで道草くってんのかい?』


『あなたこそ、なんでこんな所に』


『バカタレ。ここはあたしの街だよ?どこ走ろうがあたしの勝手じゃないか』


 とは言っても、特攻服でここを通る理由は分からない。


『今日はこの先にちと用事があってね』


 3人は横羽線に入った。


『ここは任せて先に行きな』


 神楽は2人を先に走らせると急にスピードをゆるめ1人で2台のパトカーの相手をし始めた。


 横浜覇女の総長が2人の為にケツ持ちしてくれている。麗桜と風雅はうなずき一気にスピードを上げ走っていった。


 神楽は2台のパトカーの前で堂々と停止しタバコに火をつけた。


『ふっふ。あたしが行くまで死ぬんじゃないよ?』






 伴たち夜叉猫は玲璃より少し送れてベイブリッジのすぐ目の前までたどり着いた。東京連合に占拠された橋を見て、さすがに伴も寒気がした。


『まるで、悪魔が住みついているような景色だわ。気味が悪い』


 周りの夜叉猫のメンバーたちも改めてその数に驚いていた。


『伴!どうするの!?』


『玲璃ちゃんは多分もうあそこにいるわ!早く行ってあげないと手遅れになる!』


『あの奥ってこと!?あれじゃ橋を渡ってくのにかなり時間かかっちゃうよ!』


(あれこれ考えてる暇はもうないわ)


 伴は木刀を抜き前方を指し示した。


『正面を強行突破するわ!私が先頭を行く!』


 伴は覚悟を決めた。







 一方、悪修羅嬢たちはベイブリッジと大黒を目指す他のチームとは全く違う下道を走っていた。


『緋薙さん!これ、どこ向かってんすか!?』


『ベイブリッジさ。雪ノ瀬はそこにいるんだろ?』


『でも、こっちじゃ方向違うっすよ!?』


『黙ってついてきな』


『緋薙さん、まさか…』


 悪修羅嬢のメンバーたちは豹那の考えが分からなかった。ベイブリッジに行く為には首都高に乗って湾岸線を行かなければならない。しかし今走っているのは下道でベイブリッジとは違う方向へ向かってしまっている。


 だが、豹那の考えは分からなかったが道を進む度に1つだけ可能性として考えられることが浮かんできた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る