第7話 あたしは客
春川麗桜(はるかわれお)は子供の頃からオテンバで近所の男の子をよく泣かせていた。
足が早く小学校の時はバスケットのクラブチームに入っていて、大人相手でも目を見張るプレイを見せた。更に4年の時からボクシングを始め、ジムではとても筋がいいとよく褒められ、同年代では男の子にも負けなかった。
中学校に入学した位でギターを覚え、友達とバンドを組み麗桜はそこでも才能を開花させた。コピーだけではなく自分で曲を作るようになると音楽の楽しさに夢中になり、バンドとボクシングを両立させながら充実した日々を送っていた。
最初麗桜はメインのボーカルではなかった。ボーカルのメンバーは元々他にいたということだ。澪という子だった。麗桜の手が夢なら、澪の歌声はその夢を叶える為の希望だった。
このバンドの魅力はなんと言ってもこの澪の声と存在だった。まだ中学生でありながら、その声はすでにできあがっていて、大人顔負けの声量と正統派なのに個性が光り、麗桜も他のメンバーたちもいつか必ずデビューし売れる日が来ることを信じていた。
しかし、人に希望を与えられる力を持って生まれた澪を、あまりにも悲しすぎる運命が襲った。
中学3年の頃、澪の耳が聞こえなくなってしまった。それは徐々にだった。
最初は少し聞こえにくい程度だったので、すぐに治ると思っていたのだが、少しずつ悪化し耳に水が詰まったような非常に聞こえにくい状態になってしまった。メンバーたちは澪と一緒に病院へ行ったものの原因は分からず、治す方法も見つからなかった。
麗桜はボクシングをやめ、あらゆる病院を訪ね、ダメでも諦めずいつも澪の側に寄り添い励まし支えていた。だが本人にとってはツラいだけの日々だった。治す方法はなく、これからずっと音のない世界で生きていかなければならない。それは歌い手にとって絶望的で受け入れることなどできるはずのない残酷な運命だった。
それでも歌いたい。そのツラさは計り知れないはずだ。澪の耳の状態が悪化し、ついにほとんどの音が聞こえなくなっても麗桜もみんなも嫌な顔1つせずいてくれる。
常に病院を探し、例えば耳が聞こえなくてもバンドを続けられる方法なども考えたりしてくれたが、澪はもう耐えられなかった。
ある日彼女は切り出した。
『やめる。あとはみんなに任せるね』
それが自分の出せる答えだった。麗桜はもちろん止めた。
『このバンドは澪以外ありえない!』
『みんなで支えるから頑張ろう!』
思っていること全てを真剣な表情で伝えたが、ついに澪は目に涙を浮かべ言った。
『麗桜…あたしにはもうさ、あんたが今なんて言ってくれてるのかも聞こえないんだよ。』
麗桜は何も言えずにいた。
『ツラい。怖いよ。音のない世界なんて生きてる意味がない…もういいの。あたしのせいでみんなの夢邪魔したくないよ。ね?分かってよ…』
澪はそう言って悔しそうな涙を見せ、それからもう顔を見せなくなってしまった。麗桜やメンバーが電話しても家を訪ねても会うことはできなかった。それで一時は解散も考えたのだが、ある日家で澪の声が入った音源を聴いていた時、麗桜はふと思った。
『…俺が澪になればいいんだ』
そして麗桜は澪の代わりに歌うことを決めた。メンバーも意見はそれで一致した。今まで澪が歌った曲を何度も何度も聴き直し、彼女の歌う姿を記憶の全てから引っぱり出して胸の中の澪になりきって、それからずっと歌い続けてきたのだ。
愛羽の感じていたセクシーさや女らしさは、そうやって澪になりきっている時の麗桜の姿で彼女が必死で表現した澪の姿だった。正に努力の結晶なのだ。
『そうすれば、澪はいつだって帰ってこれる』
それは澪の耳がいつか直り自分たちの所に絶対戻ってきてほしいという願いであり、彼女の居場所を守り続けていくことでもある。
麗桜たちの夢はメジャーデビューすることでもミリオンヒットを飛ばすことでもない。澪が歌うバンドで自分たちの音を鳴らすのが何よりの望みで、それで自分たちの曲を色んな人に聴いてもらえればそれ以上はないのだ。だから麗桜はその日まで何がなんでも歌い続け、澪の歌の良さを伝えながら自分のギターを鳴らす。それができるのは麗桜しかいない。
だから春川麗桜の手は、澪を合わせたメンバー5人の手で夢なのだ。
「 女の振りかぶったブロックが最高地点に到達した時だった。こいつは間違いなく全力でブロックを俺の手に叩きつける。きっとその場にいた誰もがそう思ったその時、信じられないことが起きた。
羽交い締めにされ、両手を地面に押さえつけられている俺の目の前を、1人の少女が宙を右から左へ飛んでいく。その瞬間の出来事があまりにも衝撃的だったせいか、俺にはまるでスローモーションのように感じられていた。
(羽?…天使か?)
そう思ってしまったのは、ずいぶんな大きさのポニーテールが派手になびいていたからだ。
だが違った。
実際は自分の学校と同じ制服を着た小さな少女がブロックを持っていた女に、それは見事な飛び蹴りをくらわせながら目の前を飛んでいった。
しかもその女には見覚えがある。昨日自分の周りをしつこくウロチョロしていた変なチビ。あぁ、そうだ。あいつだ。なんてったっけ?
でもなんであいつがここに?」
『麗桜ちゃん。誰かが夢だなんて言ってくれるその手、大事にしなきゃダメだよ。毎日あんなに練習してるんでしょ?あの時の麗桜ちゃん、スッゴいカッコよくて超セクシーだよ。あたしは明日も見に行きたい』
少女はかがんで膝を着く麗桜の手を取り、ニッコリと笑ってみせた。そしてあのイヤホンから流れていた曲のメロディーを鼻歌で鳴らすと言った。
『あたしはあの曲すごい好き』
そう言って恥ずかしそうに笑うと相手の女たちの方に向き直った。
『なんだコノヤロウ。誰だてめぇは!』
相手の女たちは輪になって囲み凄んだが、少女はその背丈、顔からはとても想像つかないような険しい顔でにらみ返した。その気迫に20人はいよう人数が全員1歩下がってしまった。
『あたしは客だよ。このバンドのね』
それだけ言うと少女は、近くの人間からなりふり構わずつかみかかり殴り飛ばしていった。容赦なく拳を叩きつけ相手を引っぱり回したまま次の相手を殴り飛ばし、その小さな手で自分より10センチも20センチも大きい相手を次から次へとなぎ倒していく。女たちは反撃する間も与えてもらえない。ポニーテールが右へ左へと揺れ、その度に人が殴り飛ばされていき、文字通り彼女は暴れているが踊っているようにさえ見えてくる。
麗桜は今目の前で起きていることがまだ信じられなかった。あの小さな少女からどうすればそんな力が生まれてくるのだろうか。麗桜だって強いつもりだ。昨日も3人相手に勝ったし、なんなら5人相手でも勝てる自信がある。だが今目の前で暴れているこの前髪パッツンの強さと言ったら半端ではない。20人はいよう相手をてんでものともせず、たった1人で戦い続けている。
「1年3組 暁愛羽」
麗桜は少女の名前を思い出した。
『ガキ!こっち見な!』
愛羽が振り向くとバンドのメンバーが押さえつけられているその前で、1人がバットを構えている。
『お前が動く度にこいつらにバットをくらわす。いいな?動くなよ?』
これにはさすがに愛羽も止まるしかなかった。
『やれ!』
相手のリーダーの女が言うや、今度は数人で愛羽を羽交い締めにし、一気に袋叩きにし始めた。無抵抗なのをいいことに代わる代わるやりたい放題とことん殴りつけていく。愛羽は息つく間もない程連続でリンチされボコボコにされていく。
『やめろ!もういいだろ!?頼むからこれ以上はやめてくれ!』
麗桜はとても見ていられなかった。自分のせいで人が傷つけられることにもう耐えられなかった。元はと言えば自分がいけない。仲間どころか関係ない人間まで巻きこまれてしまって麗桜は心底後悔した。だが愛羽は殴られながらも言った。
『麗桜ちゃん。そんな顔しないで。あたしは大丈夫だから』
そう言って殴られながらも笑ってみせた。
羽交い締めにされたまま滅多打ちにされたかと思えば、側の電柱に頭を打ちつけられ、倒されては踏まれ蹴られだ。さすがにあんなに強かった彼女も、これではもうダメだろう。麗桜もメンバーもとてもその様子を見ていられなかった。早く救急車を呼んであげないとマズいかもしれない。地面に突っ伏された愛羽の姿を見てみんなが思った。だが、それでもこの少女は立ち上がった。
『え?』
『マジかよ…こいつ』
さすがに相手も気味が悪くなり、と言うよりこれ以上やったら死なせてしまうのではないかという不安を覚えた。
『もう、終わり?動いて、いいの?』
相手はボロボロだ。ヨロヨロなのも見て分かるが異様な威圧感があり、女たちはうかつに近づけなくなっていた。
『ほら、かかってきなよ。動かないであげるから。そっちの汚い手にかかってあげてるんだからさぁ』
そう言って愛羽が動くと周りの女たちは足を1歩下げた。囲まれてるのは間違いないのに一切負ける気がない、といった雰囲気だ。
『あんたたちがさっき潰そうとしたのはね、この子らみんなの夢なんだよ。きっと毎日学校終わってから遅くなるまで練習して、見てる人や聴いてる人を夢中にすることができる、そんな夢なんだよ。』
愛羽は強い眼差しを周りに向けた。
『なんであんたたちみたいなのがそれを潰せるの?ふざけないでよ!いい?この子たちの夢にこれ以上つまんないことしてみなよ。あんたたち全員、2度と夢なんて見れないようにしてやるから!』
そして麗桜と目が合うと言った。
『あたしが絶対守ってみせるからね』
『…』
麗桜は心に熱いものを感じていた。同時にあることを思った。そんな風に強く伝えられたら、あいつは今もいてくれただろうか。こんな風に強い気持ちで守ってあげられてたら、自分たちの今はもっと違っていただろうか。
今目の前に、自分が守れなかったものとそれでも諦めないで守っている夢を、ボロボロになりながらも優しく笑って守ってくれている人がいる。自分たちの曲を、自分が守り続ける澪を、好きだと言ってくれている。そんなこの少女をこれ以上傷つけさせる訳にはいかない。この夢は自分がこの手で守るんだ。じゃなきゃ澪だって戻ってきてくれない。そう思い立ち上がると拳を握りしめた。
『おい春川!動くなっつってんだろ!こいつらがどうなってもいいんだな?』
『すぐに助ける。みんな、ごめん。少しだけ我慢してくれ』
麗桜はボロボロの愛羽の前に立つと拳を構えた。
『いいだろう。望み通りテメーの連れからバットだ。やっちまえ!』
バットを持った女がそれを振りかぶろうとすると、いきなり飛び出してきた人影がバットを持っていた女の顔面に空中で綺麗に回し蹴りを叩きこんだ。バットの女が蹴り倒され武器を落とすと、その人物は続けてメンバーを捕まえている女に飛びかかり、相手の腹のど真ん中にひざ蹴りをした。
『今だ!逃げろ!』
つかまれていた手が放れたメンバーは言われてとっさに走りだした。そうしてもう2人のメンバーを押さえていた相手もあっという間に殴り飛ばし一気に人質を解放してしまった。
『くそっ、逃がすな!』
相手の女たちがそれを追いかけると今度はまた別の人物が影から出てきた。相手をつかむと髪を振り上げ、そのまま背負い投げた。相手はアスファルトにおもいきり叩きつけられものすごく苦しそうだ。
『なかなか来ねーと思ったら、こんなとこで何やってんだ?オメーって奴はよ』
『心配して探し回ったのよ?バイクはあるし電話は出ないし。あなた可愛いから誘拐されちゃったのかと思ったわ』
現れたのは玲璃と蘭菜だった。
『あ、玲ちゃん!蘭ちゃん!』
とりあえず知り合いらしいこととみんなが解放されたことに麗桜はほっとしていた。
『てめぇら、あたしの可愛い愛羽によくもやってくれやがったな』
玲璃は獣のような目つきで周りをにらみつけた。
『覚悟しろテメーらぁ!!』
玲璃のかけ声でおよそ4対20の乱闘が始まった。
仲間が解放され肩の荷が降りた春川麗桜は強かった。繰り出すパンチは速く、重く、とても相手側にかなう者などいなかった。囲まれても得意のフットワークで相手をかわすと右へ左へと敵を殴り倒していった。
麗桜は嬉しかった。最初はあんなにうっとうしく思えた愛羽のことを、今はとても信頼してしまっていた。今まで出会ったことがないタイプだが、その目や行動には強い正義を感じた。出会って間もない自分の夢をあんなにボロボロになりながらも守ってみせると笑ってくれたり、それに秘かに自分たちがバンドの練習しているところを見ていてくれたりと、とにかく未知で不思議だったが、この少女が来てくれたことに感謝していた。
一方玲璃は暴れていた。ここ最近そのチャンスがなく、始業式の日の朝もケンカしそこなって少しモヤモヤしていたということもあったが、先程のカラオケで蘭菜とやったカラオケ採点勝負で何回やっても蘭菜に勝てなかった。そのせいでストレス発散に行ったはずが余計なイライラを溜めてきていた。なので今この場で途中参加の玲璃が1番イキイキとしていて、その相手の女たちが1番かわいそうな目に合っていた。
かと言って外見的におとなしそうな蘭菜の方へ行けば、おもいっきり背負い投げられたり、あっという間に転ばされ立派な正拳突きをくらわされた。彼女はどうやら色々と武術や護身術の心得があるらしく見た目よりもずっと強いようだ。真面目なので決して手加減もしない。 人数で勝る相手側だったが次々にやられていく。
そして愛羽はリーダーの女を相手にしていた。女は拳を振りかぶり大振りのパンチを当てにいくが、愛羽はことごとくそれらをよけていった。
『リーダーっぽいからどんだけ強いのかと思ったら、あんま大したことないんだね』
女もこの一言には頭にきた。
『いい加減にしろよテメェ!』
女の渾身の一撃が愛羽の顔面をとらえた。しかし愛羽は踏んばり耐えると「ほらね」とでも言うように笑ってみせた。お返しに愛羽は腹にパンチを打ちこんだ。
『はぅっ!』
相手が肺ではなく胃の中の空気を吐き出しうめくと、続いて腹を抱えて後ずさる相手のあごを下から勢いよく蹴り上げた。リーダーの女はそのまま後ろに倒れるともうそれ以上立ってこれる様子はなかった。それとほぼ同時、それぞれ自分の周りにいた敵を倒し終わったようだ。愛羽たちが勝った。3人と顔を合わせるとニカッと笑った。
『笑ってんじゃねーよボケ。ったく、何してんだよお前』
『そうだよね。ごめんね、蘭ちゃんまで。大丈夫だった?』
『あら、私結構強いのよ?見てなかったの?』
蘭菜はすました顔で答えた。
『あぁ。こいつなら心配ねーよ。隠れてろっつったのに、出てきて相手何人も投げ飛ばしてたよ、こいつ。それよりお前だよ。そんなボロッボロにやられやがって。あたしら来なかったら負けてたろ、それ』
玲璃は笑ってバカにした。
『私、初めてケンカしちゃった。なかなか盛り上がるのね』
蘭菜は初めての体験に目を輝かせて言うが、1つだけ確かなのは決してスポーツではない。
『そうだ。それより麗桜ちゃんケガ大丈夫?結構やられたんでしょ?』
玲璃と蘭菜がそういえばと麗桜の方に顔を向けると愛羽が説明しようとした。
『この子ね、春川麗桜ちゃん。えっとねぇ…えっとー…』
愛羽には上手く説明できるだけの話術が絶対的になかった。
『助けてくれたんだ、この子が』
そんな愛羽を見て、自然と麗桜の方が口を開いて起きたことの全てを説明していた。
『ありがとう。あんたたちのおかげで本当に助かったよ』
麗桜からそんな素直な言葉が出てくるなんて愛羽は意外だった。
『いいえ、みんな無事でよかったね。これからもバンド頑張ってね』
愛羽はボコボコの顔でニコニコして言う。
『…俺を、誘わないのか?』
正直な疑問だった。
『え?あぁ…最初はそのつもりだったんだけどさ、なんか麗桜ちゃんたちが放課後バンドの練習してるの見て、すっごい好きになっちゃったんだよね』
麗桜は正直、理解が追いつかなかった。
『だって歌ってる時の麗桜ちゃん、本っ当にカッコいいんだもん!表情とかすっごいセクシーで、しぐさも可愛くて女っぽくて、声がめっちゃ綺麗で歌も上手でさ。この子にはこうやって生きる世界があるんだって思ったら誘ったらダメだなって思っちゃって。だからもういいの。あたしもバンド頑張ってほしいし、みんなの夢大事にしてほしいもん』
麗桜は驚いた。彼女自身、助けられたことでチームに入ることを求められると思っていたのに、この愛羽という少女は1ミリもそんな見返りを求めないどころか、あれだけ突き放した自分に対して「夢を大事にしてほしい」と笑顔で言いきった。
何よりも嬉しかったのは歌のことを褒められたことだった。自分のこともそうだが澪のことを褒められている気がして、それが心に響いていた。愛羽のことを見る目も気持ちも、もう最初とは変わってしまっている。
麗桜は1つのことを決めた。だが恥ずかしくてまわりくどい言い方をした。
『お前はなんか夢とかないのか?』
『あ、あたし?夢かぁ、夢はね~…アイドルになること』
愛羽は少し恥ずかしそうに言った。
『あら、私はまだそれ聞いてないわ。アイドルって、あの歌って踊るあぁいう人たちのこと?』
『あー。こいつさぁ、完全なアイドルオタクなんだよ。家とかでDVDとか見ながら真面目に踊っちゃってる系の奴だから』
『玲ちゃんだってウチでよく一緒に踊ってるじゃん!なんでそういう冷たい言い方するの!?』
『あ、れ、は!お前が下手くそであんまりにも違うことしくさってるから見本を見せてるんですぅー!』
『嘘ー!いつも楽しそうにやってるじゃん!』
『2人は本当に仲がいいのね。羨ましいわ』
『あ、じゃあ蘭ちゃんも今度一緒にやろうよ。あたしが教えてあげるから』
『あーあーやめとけやめとけ。教えるだけならあたしが教えてやんから。こいつのはやめた方がいいぞ』
『何よ!』
『何だよ!』
すると麗桜がまた喋り始めた。
『アイドルか。それは俺じゃ何もしてあげれそうにないなー。なんかもっと身近な夢はないか?』
愛羽はとても難しそうな顔をして悩んだ。
『うーん。身近だとやっぱり自分たちのチーム作って、特攻服とか単車とか作ったりして、可愛くてカッコよくてどこにも負けないチームにすることかな!』
『そっか、分かった』
麗桜は1歩愛羽に近づくと愛羽がしてくれたように手を取った。
『どうしたの?麗桜ちゃん』
『お前がどこにも負けないチームを作るのが夢なら、俺はその夢、叶えられるようにしてあげたい。是非俺をお前たちのチームに入れてくれ。誰が相手だろうと、お前は俺が守ってみせるからさ』
思いもしなかった展開に愛羽もどんな顔をしていいのか分からない。だが、嬉しい。
『…いいの?別に無理しなくていいんだよ?今日のことも全然気にしなくていいし…』
しかし麗桜はもう決定したものとして話を続けた。
『あとさ、俺も愛羽って呼んでいいか?それからバンドもまた見に来てくれよ。みんなにちゃんと紹介もしたいし』
麗桜が昨日とはあまりにも変わりすぎてちょっと照れくさい。でも愛羽は麗桜の手を握り返し笑顔で答えた。
『もちろん、行く』
『愛羽。俺たちの夢守ってくれて、ありがとな』
そうして今日また1人仲間が増えたのだった。
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