最終日  僕の初恋は夏と共に終わりその少女ははかなく美しい

 俺は、何故か早く起きて。

 杪夏が、いると言う病室に向かう。

 やはり、足は既に治っていたようだがそんなことはどうでもよかった。

 最初は、そればかり気にして暗くなっていた俺だか今は違った。

 杪夏の事で、頭がいっぱいでそれ以外のことは手につかなかった。

 本当に、好きで好きでたまらないから……

 俺は、夢中で走った。

 一目散に、看護師達を避けて走っていた。

 看護師も驚いていた。

 俺の回復力に、だけどそんなことはどうでもよかった。

 ただただ、杪夏と会いたい一心で走り続ける。

 ボロボロになりながらも。

 地球の存亡かけた戦いをする、映画の主人公のように……

 ただただ、無我夢中で突っ走る。

 そして、着くと杪夏は顔色が悪くなっていてベッドに寝ていた。

 吸入器を口に付けられた状態で、もう虫の息なのかもしれない。


「杪夏ー!! 起きてくれ! 頼みむよ!……うう……頼む……」


 俺は、涙を流しながら叫ぶが杪夏には届かなかった。

 それから、二階堂が来てもう無駄だと言う。


「……諦めたまえ……もう、彼女の意識はもどらない……」


「ふざけるなよ! お前がやったんじゃないか! 俺の、大事な恋人の四季杪夏を返せよ! 返せよ! 返せ! 返せ! 返せぇぇ!!」


 俺は、二階堂の胸ぐらをつかみ体を揺さぶるも何も言わないで、暗く顔をしながらうつむくだけだった。

 その後、看護師のお姉さんとおばさんが来てくれた。


「杪夏ちゃんしっかりしなさい……あなたの、好きな斎藤くんもきたのよ!」


「杪夏ちゃん……うう……私は、あなたのライバルの一人なのよ! 決着ついてないわよまだ! だから、起きて決着つけてよ!」


 看護師のお姉ちゃんとおばさんは、泣きながらそう言っていた。

 その後、看護師のお姉ちゃんが電話を使って、一時間後に俺の幼馴染みや母親、杪夏の父親や母親も来てくれた。


「……杪夏……ごめんな……私が父親として……立派な事がやれなくて……仕事ばかりで」


 杪夏の父親は、泣いていた。

 今までの、行為を悔いるように……


「私も……ごめんなさい……お父さんの言うことばかり聞いて……あなたの話を耳を傾けないで……」


 杪夏の母親も、泣いていた。

 両親の、その姿はまともな立派な親だった。

 俺は、やっと杪夏の夢見ていた家族が揃ったと感じる。

 だから、杪夏は起きてほしい。

 今までの分まで、家族旅行にいって喜んでほしいと思った。

 だが、杪夏は眠ったままだ。


「杪夏ちゃん! 起きてよ! 私の息子と付き合って、結婚するんじゃないの! 私は、あなたみたいな。可愛くて、立派な嫁ならほしいわ。むしろ、息子があなたを断ったら。殴り倒していたわ。だから、家に行こう……そして、息子と幸せになって……一緒に暮らそ。私達の家で、4人仲良く……」


 母さんは、本当に杪夏の事が好きだったみたいだ。

 むしろ、俺以上に杪夏を気に入っていたらしい。


「……うう……母さん……」


 俺は、母さんが今までこんな姿があることをよく知らなかった。

 間違っていたかもしれないな……

 親が、可笑しというのは。


「ちょっと! 四季さん! 起きてなさいよ! 私との、決着ついてないじゃない! それに……うう……私は……うう……こんなふうに勝ちたいんじゃないのよ! あなたから、私の魅力を見せつけて。創を、奪いたいの! それに……うう……私も、友達あまりいないから……うう……四季さんが、いないと寂しいじゃないの………うう……」


 立花は、泣きながら杪夏を起こそうとしていた。

 立花も、寂しかったのかな……

 そう言えば、友達と遊んだところはあまり見たことない。

 だから、杪夏を友達として恋のライバルとしても見てほしいんだと思う……


「……杪夏……皆……うう……お前が、起きてくるのを待ってるんだ。だから! おきてくれよ! もう……うう……俺も、寂しくて寂しくて死にそうなんだよ!! 俺をおいてって、いかないでくれ! 頼むよ……うう……約束してくれたじゃないか! 一緒にいるって!!」


 杪夏の目が、徐々に開いてく。


「……なに! こんなことって……」


 二階堂が驚いていた。

 皆の声と、俺の杪夏と一緒にいたいと言う気持ちが届いたのだ。


「……は……じ……め」


「杪夏! 杪夏!!」


 俺は、必死になって今死にそうになっている。

 杪夏の名前を叫ぶ。


「……私……嬉しい……皆が来てくれて……創が来てくれて……今まで、こんなことなかった……」


 杪夏は、その小さい声でなんとか話していた。

 俺は、そんな杪夏を見ると泣けてくる。


「杪夏……ごめん……助けられなかった……」


「う~ん……私の方こそ……ごめんね……一緒にいるって約束破って……」


 俺は、杪夏が自分が約束を破って悪いと思っていることを思うと余計に悲しくなってくる。

 自分の、体がもう持たないと言うのに……


「杪夏……君は、悪くないんだ……だから、いいんだよ……うう……そんなことは思わなくて……」


 杪夏悪くない、それだけは真実だ。

 二階堂が悪いんだ、もとはと言えば出来もしないことを引き受けるから。

 俺は、杪夏を抱き抱えて。

 自分が、杪夏の事を愛してると言い杪夏も私も愛してると抱き締める。


「愛してる杪夏……」


「……私も……創の事を……愛してる」


 そして、抱き締めるのを止めて杪夏はキッスをする。

 その後、杪夏は意識を失う。


「……杪夏! 杪夏!! 杪夏!!」


 俺は、必死になって叫ぶも目を開けることはなかった。

 皆も、泣いていた。

 杪夏の死を、惜しむように……

 ただ、一人だけは違った。

 それは、二階堂の野郎だ。


「……まあ……しょうがないよ……」


 俺は、その後二階堂の胸ぐらつかみずっと怒って叫んでいたようだ。

 意識をうしなっていたので、自分でも覚えていない。



 起きると、何故か自分のベッドで寝ていたようだ。

 誰が運んだのかは知らないが。


「……起きた……」


 看護師のおばさんに、起こされたみたいだ。


「……ごめんなさいね……今日は……」


 俺は、杪夏のベッドの方を確認する。

 だが、そこにはやはり杪夏の姿はなかった。

 その光景に、杪夏が死んだことは事実だと分かった。


「……あと……ちょっと、外に出てくれるかしら……もう、退院できるから。そこで退院祝いをするわ……」


 俺は、全然祝われたくなかったが杪夏は看護師のおばさんを気に入っていたので、仕方なく病院の外へ出る。

 外は、俺の気分とは違い明るかった。

 それも、快晴の空で余計に落ち込む。

 そして、看護師達が集まり。

 看護師のおばさんが、花束を持っていた。

 そこで、俺の退院祝いをするらしい。

 そこには、ムカつく二階堂の姿もあった。


「いや~君は、治ってよかったよ。怪我が。本当に、よかったよかった!」


 その二階堂の、言い草には腹が立った。

 だけど、俺はなんとか我慢する。

 今にも、爆発しそうな怒りを。


「……退院おめでとう!」


 看護師のおばさんが、俺に花束を渡して看護師達は拍手する。

 看護師達は、笑っていた。

 そこに、俺は怒りを感じて渡された。

 花束を地面に投げつける。


「はぁ!! 何が、おめでとうだ!! ふざけるなぁぁ!! 杪夏と子供達が死んで。何が、嬉しいんだよ! お前ら、可笑しいだろ! それに、二階堂は責任とれよ! お前が死ねばよかったんだ! 生け贄なって、杪夏を返せよ! 杪夏は……もう……戻ってこないんだぞ!! 分かってんのか!!」


 俺は、車できた父親に腕を引っ張れて車の中に入れられる。

 車の中で、運転していたのは母さんだった。


「くそ! くそ! 杪夏は、もう戻ってこないんだ……うう……杪夏わ」


 そんな泣きじゃくる、俺を見て母さんはとあるビデオカメラを渡す。


「それね……外出するとき撮っていたらしいの……杪夏ちゃんと杪夏ちゃんのお父さんが、だから見てみなさい。創に渡してくれって、頼まれたのよ。杪夏ちゃんのお父さんに」


 俺は、ビデオカメラの内容を再生した。

 そこには、杪夏が写っていた。

 しかも、何が言ってるようだ。


「……創……聞こえるかしら……私はもうすぐ死ぬと思う。だけど、創は私がいなくてもやっていくのよ……」


「……うん」


 俺は、杪夏のビデオカメラの声に返事をする。


「……それと、あなたは私の代わりに。お医者さんになってね……それで、沢山の病気で苦しんでいる人や子供達を救ってほしい……私からのお願い……」


「……うん!」


 俺は、絶対に医者になって杪夏の夢の沢山の子供達や大人を救うと誓った。


「……本当は死にたくない……それに、会えなくて苦しいけど……私の事は忘れないでね……忘れたら、承知しないわよ……」


「……うん!! 絶対に……うう……忘れないよ。だって、杪夏の事が世界で一番すきなのだから」


 俺は、ビデオカメラを止めようしたがまだメッセージはあった。


「……愛してる……ずっとカメラを、てばなさいでね」


「……てばなすかよ……ここには、杪夏がいるんだから。これは、杪夏自身だから。絶対にてばなすもんか!」


 その、ビデオカメラのメッセージはそれで終わった……

 暫くして家に着くが、俺はずっとその日は泣きながらそのビデオカメラを何度も再生した。

 夜になって、食事も食べず自分の部屋で見続けた。

 杪夏と一緒にした事を思い出しながら……

 眠くなるまでずっと見続けた……

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