30日目 彼女を死なせてしまった医者と美少女を愛し続ける少年

 俺は、あれからあまり眠れなかった。

 嫌な予感がして……

 もしかしたら、杪夏は死んでしまうんじゃないかと思うと……

 トイレが行きたくなり、用をたしてあの二階堂の部屋の前で話が聞こえたので盗み聞きをする。


「……もう、ダメかもしれない……四季さんは……」


 それは、明らかに二階堂の声だった。

 どうやら、父親と電話をしているらしい。

 俺は、怒りをぶつけたかった為にその部屋のドアを勢いよく開ける。


「どういうことだよ! 二階堂!!」


 二階堂は、一瞬はビックリして驚いて言葉を失っていたものの元の表情に戻り話す。


「……なんだ君か……驚かさないでくれ」


 俺は、そんな事どうでもよかったし。

 杪夏ことに関して、電話で言っていた事が気になるので問い詰める。


「そんなことはどうでもいい! それより! 杪夏がもうどうにもならないって本当か!!」


「……ああ……ダメかもしれない……」


 俺は、二階堂の胸ぐらをつかみ怒りながらずっと顔を睨み付ける。


「おい! あんた、医者だろ! 責任とれや!」


「無理なものは無理だ……」


 その、無責任な発言と行動に腹が立ってしまった俺は二階堂に怒鳴りちらす。


「無理だ。じゃねぇよ!! じゃあ、なんで手術お前がしたんだよ! ふざけるんじゃねぇ!!」


「四季さんは……誰も、手術をしないよ……私とかじゃなければね……」


「なんだと!? どういうことだ!」


 二階堂の言ってる意味が分からないから、俺はその答えを聞くために質問する。


「杪夏が、お前しか手術しないってどういう意味だ!」


「そのままだ、他の人じゃ。手術なんてしたくないんだよ……あの子病気は、それぐらい治す事が出来ないってことだ。私じゃなくてもね……」


 俺は、二階堂に杪夏の事を責任をとらせるため、なんでじゃあ杪夏の手術をしたのか聞く。


「じゃあ……なんで、杪夏の手術なんてしたんだよ! 初めから分かってたんだろ!」


 二階堂は、深刻そうな顔をしていつものようにプライドや見栄しかない発言はなくて、本音で俺に彼女が死んだ経緯と杪夏の病気が何故どうにかも出来ないか説明し始めた。


「……まあ、前からダメだと分かっていた……私の彼女、青木夏希あおきなつきと同じ病気だったからだ。あの時も、必死になってやってみたが……ダメだった……」


 俺は、二階堂は真剣にことにあたってる事を知るがなんだか信じられない。

 今までの、あの威張っていて大して何も出来ない態度のせいで。


「……必死なって……彼女を蘇生させる為に、心臓マッサージやら電気を流したが……どうにもならなかった……そして、医師会の連中に言われた。お前が、悪いわけでないと……」


 俺は、そんな話可笑しいと思い。

 二階堂に、お前の妄想だと言わんばかりに言う。


「可笑しだろ! そんなわけあるか! どうせ、お前の妄想だろ!」


「本当だ……」


 俺は、思い出した。

 実は、二階堂と青木夏希と言う二階堂の彼女にあっていたことを……


「思い出した! 結局、青木お姉ちゃんも……お前が、死なせたんじゃないか!! ふざけるなよ! お前の腕が悪いから皆死んだんじゃないか!!」


「……もしかして! お前は、あの時。夏希が、面倒を見ていた子供か!?」


 俺は、青木お姉ちゃんが可愛がってくれた事を思い出す。

 あの時は、自分も小さくてよく面倒をみてくれた。

 確か、死ぬ手前は病気に負けないから俺にも喧嘩に負けるなって言われたっけ。

 その後、二階堂のせいで青木お姉ちゃんは死んでしまった。

 確か、手術した奴を恨んだ事があったがまさか彼氏の二階堂がしていたなんて夢にも思わなかったな……


「二階堂!! お前わ! 責任とれよ! 手術したのお前じゃないか!! そもそも、出来ないのなら手術なんて引き受けるじゃねぇよ!!」


「……しょうがないだろ!!」


 二階堂は、逆ギレでもしたかのように言っていたがそれは違った。


「夏希も! 四季さんも!! 誰も、手術して治そうとは引き受けなかった!! だから、私は助けようと! 自分しか、やらなかったしたんだ!! だけど……今回も上手くはいかなかった……これが現実だ。まあ、医師会の奴らはそれを誤魔化して。私を祭り上げたがな! あはは!! 本当に、この世界は腐ってやがる! 君の思った通りだ! どうだ!

私のせいじゃないだろ!」


「ふざけるなぁぁ!!」


 俺は、二階堂その無責任な発言に怒りを覚えた。

 その声は、多分すごいデカイ声だったことはたしかだ。

 今までに、出していた声より相当大きかった。


「お前!! 自分の彼女が救いと思ったんじゃねぇのかよ!! 杪夏も、同じように助けたいと思ったんじゃねぇのかよ!! だったら、助けろやぁぁ!! それに、いつものプライドの高い発言は嘘だったのか! お前は、医者だろ! いい加減にしろよ……勝手に引き受けたくせによ! 杪夏もそうなんだろ! だったら、今度こそ。救ってみやがれ! そうしたら、そんな医師会なんかに。気を遣って、やる必要ないんだから」


 二階堂は、俺の話を聞いて目の色を変える。

 それは、なんとも真剣な顔つきに変わっていた。


「……そうだな……私は、やっていみる……」


 俺は、別に二階堂が医者なのが問題じゃない。

 コイツが、いい加減に杪夏の手術を請け負ったのが悪いから言ってるだけだ。

 本当は、病気を治せるなら誰でもいい。

 しかし、今は二階堂しかその役割は居ないのだから。

 まあ、気にくわないのはあるが。

 そんなもんどうでもいいからな……



 そして、二階堂は部屋を出て手術に向かう。

 俺は、待合室で待つことにした。

 夜通しまったが、その二階堂のでてきた顔を見て分かった。

 もうダメだと……


「ふざけるな!! どうにかしてくれると言ったじゃねぇかよ! 自分なら、出来るって……彼女さんの分まで、杪夏を頑張って病気を治すって。言ったじゃねか……うう……」


 俺は、待合室で泣きながらうつむく。 

 その、廊下には暗い雰囲気と寂しさと悲しみが流れる。


「……明日までなら生きてる……何か、言い残してる事があるなら……明日言ってくれ……今日は、面会はできない」


 俺は、落ち込みながら下をむいて自分の病室へと帰る。

 そして、いつの間にかベッドでぼーとしていたら夜になっていた。

 絶対に、明日は杪夏と一緒にいるんだ。

 何を言われようと……

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