29日目 ダメ医者と名医の父親

 俺は、早く起きてしまい。

 杪夏が、心配で見てみるとまだどうやら手術はしてないらしい。

 ちょっと安心した。

 今日、手術すると看護師のおばさんには伝えられたので内心、ドキドキしてたまらない。

 いつ、杪夏が居なくなるかと思うと……


「……おはよう……」


「おはよう」


 杪夏は、寝起きで何だか眠たそうだ。


「また……心配してるでしょ……」


 俺は、杪夏に思ってることを見抜かれていた。


「そうじゃないよ……暫く、会えなく寂しいって思ってさ……」


「……それならいいわよ……」


 杪夏は、何処か俺の事を心配してるかもしれない。

 だが、俺は杪夏の方が心配だ。



 そして、そんな事をしてると。

 杪夏は、キャスター付きの移動できるベッドで治療室に運ばれていく。


「杪夏! 杪夏! 大丈夫か? 怖くないか?」


「平気だから……待っていて……絶対に病気治して……あなたと付き合って……結婚するんだから……」


 そう言って、俺はベッドの横を歩きながら声をかけていた。

 不思議と、何故か松葉杖なしで歩けていた。

 杪夏が、話を言い終わると集中治療室に入れられた。


「……杪夏……絶対に、病気に負けるなよ」


 俺は、待合室でそう呟く。

 そして、看護師達がどうやら杪夏の事に関して噂話をしていたようだ。


「……あの子もね……もうダメかもね……」


 俺は、その看護師ところへ急いでいってその話を聞く。


「それ本当ですか!」


「いや……本当だけど。」


 看護師達は、何だか嫌そうにこっちを見ながらとりあえず俺に聞かれたのでしぶしぶ話す。


「まあ……あなたも知ってるかも知れないけど……あの二階堂先生じゃね……」


 まあ、それはそうだ。

 あの二階堂じゃ無理だ。


「あ! あの二階堂先生のお父さんならいいかもよ!」


 その噂していた、看護師の傍らにその二階堂の父親の居場所聞いた。


「どこにいるの! その二階堂の父親ってのわ!」


「う~んと、確か今日は二階堂先生の部屋にいるわ。名前は、二階堂才次郎にかいどうさいじろうと言う人よ」


「分かった! ありがとう!」


 俺は、急いで二階堂の父親の元へいく。

 そして、二階堂の部屋についてとりあえず扉を開けてはいる。

 そこには、いかにもくたびれた老人が一人いた。


「……君? 誰だい?」


「そんなことはいいんですよ! それより! 二階堂秀次先生の手術を止めてくだはい! お願いします! 二階堂先生のお父さんですよね!」


 俺は、質問とお願いを一度にしてしまう。


「……すまんな……それは、出来ん……」


 俺は、それを聞いて落ち込む。


「君がどんだけ言っても……秀次は、止められないよ……」


「何で……手術を止められないんですか」


 そのおじいさん、もとい二階堂の父親は深刻そうな顔をして二階堂が、何故あんなのになってしまった語った。


「昔は……もっと、正義感溢れる性格じゃった……だけど、変わってしまったんじゃ……自分の彼女を……自分の手で殺してしまって……しかも、自分の手術の腕のなさでな……」


 聞いてはいたが、やはり二階堂も辛かったのかもしれない。

 だけど、何で俺はそこまで出来ないのに手術しようとしたのか分からなかった。


「……まあ、ほとんどワシのせいじゃがの……ワシは、勘違いしておった……初めての手術で、あやつが成功したから天才と思っていたが……それは違った……たまたま偶然、成功しただけじゃった……それからも、秀次は手術をほとんど成功してない……それは、自分の彼女……青木夏希あおきなつきもそうじゃ……」


 俺は、何故かその名前知っていた。

 青木夏希と言う名前を……


「それにわをかけて……医師会の連中も、秀次の奴を医者免許を剥奪しなかった……それどころか……あやつら医師会の連中は、秀次を名医師として……称賛して、賄賂などをして誤魔化しおった……それから、ここでは手術をすると……沢山の人達が死んでいった……」


「……そんなのって……あるのかよ! なんで……なんで……そんな事をするんだよ! ふざけるなよ………ふざけるなよ!!」


 俺は、悲痛を叫び。

 今まで二階堂のせいで、死んでいった人達の事を思い出した。


「……杪夏の……友達は……そんな事の為に死んでいったたんだぞ! 可笑しいだろ! そして、杪夏も医師会とか言う。連中のメンツかなんかで、死んでしまうんだろ! どうなってるんだよ! 二階堂が悪いんじゃないのかよ!」


「……まあ……そう思うのは無理もない……」


 更に、二階堂才次郎は深刻そうな顔をして話を続ける。


「じゃがな……この世の中……そんなに正義通るほど甘くない……だがな……君なら出来るかもしれいな……君は……秀次の若い頃にそっくりじゃ……あの……純粋で、人を救いだそうと。懸命に頑張るあの頃に……」


「似てないですよ……あんな奴なんかに……それに、ごめんですよ……あんなプライドと見栄しかない奴なんかに、似てるのなんて……」


 俺は、部屋を出ていこうと歩くと。

 二階堂が、部屋に入ってきて父親に自慢気に手術は大丈夫だと言う。


「父さん! どうやら、杪夏ちゃんの手術は成功しそうだ! だから! 安心してくれ! これで、医師会の奴らなんかに。頭を下げなくてすむよ!」


 俺は、二階堂の態度が腹が立った。

 それは、自慢気に言ってるからではない。

 自分の、成功をするために杪夏や他の人を犠牲にしてきたことだ。


「なんだい? なんで、君がここにいる?」


「じゃあ、大丈夫なんだな!」


 二階堂は、不思議そうにキョトンした顔で答える。


「大丈夫だが?」


 俺は、走ってこの部屋にでようとしたら二階堂の父親に止められた。


「ちょっとまて! 今から、行ったら杪夏ちゃんも体を悪くするぞ」


「はあ! また、ハッタリいいやがてよ! 大丈夫なんでしょ! それに、俺がついてないと杪夏はまた落ち込むからな」


 俺は、急いで杪夏が今いると言う医務室に入って。

 杪夏のいる部屋を探す。

 看護師達に止められそうになったが、なんとか見つけ出して話す。


「杪夏! 聞こえるか!」


「……創くん……」


 その顔は、ちょっと疲れたみたいで元気はなかった。

 声も、前よりでてない。


「俺がついてる! だから、負けるな。病気に」


「うん……負けないわ……」


 杪夏が、そう言い終わると俺は看護師達や医療関係者に部屋を追い出された。




 そして、夜になって俺は一人ぼっちで寝る。

 それも、暗くて寂しい時間が流れていく。

 それは、退屈とか暇とかのレベルの話の孤独ではない。

 誰もいない部屋の中で。

 好きな人と、出会えないと言う地獄のような時をすごすと言う、罰を与えられてる気分になる。

 俺は、杪夏がいないとやはりどうにかなりそうだ。

 だから、杪夏とずっと一緒にいたい。

 優しい声を聞きながら、綺麗な顔を見ながら眠りたい。

 そんな俺の願望は叶えられない。

 だが、明日でそれは終わる。

 そう思い、俺は誰もいない不気味な病院の部屋で杪夏の顔を考えて寝た……

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