27日目 おひとよしな幼馴染みと好きな女の子とビデオカメラ

 俺は、杪夏の事が気になって早く起きてしまった。

 何もやることがないので、ライムを覗くと……

 立花から、メッセージが届いていた。

 相も変わらず、ツンデレ口調で書かれていたからいい加減正直になれよと思う。

 そんな事より、杪夏は家で何をしてるんだろう……

 俺も、全然分からなかった。

 想像もつかないことに悩み、どうにかなりそうだった。

 やはり、杪夏が居ないと俺はやっていけないのかもしれない。

 もしも、杪夏が死んだら俺はどうなるんだろう。

 もしかしたら、一生挫折して落ち込み立ち直れないのかな。

 これから、やってくる未来も生きていけないのかな。

 世界の終わりみたいになって、精神的に病んでしまい。

 そう言う、病院へ入院して現実逃避して何も出来なくなる。

 そんな、想像をしたら一層杪夏と離れられない。

 そう思い、杪夏のベッドの方を見るとやはりそこには誰もいない。

 いつもの、杪夏の美しく優しい笑顔が見れない。

 俺は、生きてく為の栄養奪われた植物みたくしおれていっているのかもな……

 何だか、昨日みたいに。

 どんどん、力が抜けていくし何も感じなくなり。

 風が吹くが、俺には全く気持ちよくない。

 カーテンはなびき、そのせいで杪夏の髪のことを思い出してしまう。

 ああ……

 杪夏……

 俺を一人にしないでくれ。

 君といないと、俺は……

 生きていけないんだ。

 だから、姿を見せてくれよ杪夏。

 その、美しく優しい素敵な笑顔を俺にもう一度。

 そんな、願いは叶わない。

 いつ帰ってくるかも分からない……

 そして、戻ってこないかもしれない。

 俺は、どんどんと嫌になってくる。

 この、病院とその人間が。

 俺が、この病室にいたいと思うのは杪夏がいるからなんだ。

 杪夏が、いない場所なんて俺にとってはなんの価値もない。




 そう暫くしていると、看護師のおばさんが食事を運んできた。

 ただでさえ、食欲がわかないのにこんな旨くもない料理食べたくない。

 だが、看護師のお姉さんが無理矢理俺に食事を食べさせようとする。


「何やってんの! 食べなきゃダメでしょ! 創君!!」


 そう言われるが、俺は口を開けて食べようとしなかった。

 看護師のお姉さんは、箸を使って入れようとするが俺は口を閉じていて。

 頑なに、朝食を口の中に入れようとはしない。


「大丈夫? 何かあったの?」


 看護師のおばさんは、心配そうに見つめるがそんな事はどうでもいいようになっていた。

 俺は、何もかもなげやりになり。

 無気力な、人間になっていた。

 もう、杪夏の事しか頭にはないし。

 自分の事でさえ、どうなってもいいからほっといてほしい。


「……大丈夫です……ですから、ほっといて下さい……」


「じゃあ……元気になったら、食べてね……」


 看護師達は、自分の定位置に戻り再び俺は一人になる。



 それから一時間くらいして、幼馴染みの立花が俺の病室にくる。


「創!! あんたどうしたのよ!」


 立花は、驚き俺の顔を見るなり心配そうに見つめたと思ったら、急に訳を聞き出す。


「どうしたのよ!? 何か、あったの?」


「……何でもない……」


 そう俺が言うと、立花は顔がふくれて怒ってしまう。

 

「何よ! 人が心配で見にきたのに!」


「頼んでない……」


 立花は、更に顔が赤くなり眉間にシワを寄せて俺を睨み付ける。


「あっそ!! だったら、そうふてくされていれば! もう知らないから! どうなっても知らないから!」


「別に……俺が何をしようが勝手だ……」


 また、睨み付けて立花は大きな声で怒鳴りちらす。


「何が勝手よ!! 創が心配させるから、わるいんでしょうが!!」


「だから! 頼んでないって! 言ってるだろ!! ほっといてくれよ!!」


 立花は、そう言われて引き下がらなかった。


「ほっとけるはずないじゃない!! だって、私は創が好きだから! こうしてきてやってんるんじゃない!」


「それは、お前の事情だろうが!! 何で、お前が俺の事を好きだからって。イチイチ、こっちが気を遣わなきゃいけないんだよ!! 立花なんか! 別に興味ないって、言ってるだろ!!」


 立花は、涙を流しながら。

 俺の方を見て、下唇を噛みながら悔しそうに言う。


「だったら……うう……四季さんにあってきなさいよ!……うう……何で、いつまでメソメソメソメソメソメソメソメソ。してるのよ!! この……意気地無しの! 根性なしの! チキンやろうがぁぁぁ!!」


「ああ!! 行ってやるよ! それで、杪夏も連れ戻すよ!! 俺は、意気地無しでも根性なしでもねぇところを見せてやる!! それで、立花より。杪夏と一緒にラブラブな幸せなところを見せつけてやるからな!!」


 俺は、病室をでていく。

 何故か、俺はこの時歩いていた。

 しかも、松葉杖なしで。

 そして、立花は去り際に小さな声で言っていた。


「……私って、バカよね……四季さんがいなければ、私が創を虜にして付き合えると思ってるなんて……だけど、好きで好きでしょうがないの……苦しくなるほど好きで………しかも、今離れそうになっている。創と四季さんを戻そうとして……」


 立花は、聞こえてないと思ってる。

 だけど、聞こえてしまった。

 俺は、立花がバカだと思わないし。

 今回は、自分が悪いと思う。

 勝手な、勘違いで怒鳴ってしまって。

「すまなかった……」


「私の話しなんて聞いてないで! 早く行きなさい!!」


 立花は、俺が病室から出て聞いていた事を知っていた。

 それから、俺は走って今までの怪我が嘘のように早く走る。

 何故か、外には親が待っていた。


「行くんでしょ! 杪夏ちゃんのところへ!」


 俺は、母親の車に乗り。

 杪夏の家へ向かう。

 そして、一時間くらいして着くと。

 そこは、豪邸で俺ら庶民がどう頑張って買えないような家だった。

 俺は、インターホンを鳴らして鍵を開けて貰い、家の中に入ってく。

 鍵を開けたのは、執事みたいな人で髭が長くてどうみても老人だった。

 それから、杪夏の部屋へと案内してもらい執事のおじいさんは仕事に戻る。

 中には、杪夏が父親にビデオカメラを回してもらっていた。


「……でね……」


 少し、杪夏の声が聞こえた。

 その声は、清んでいて何度も聞いてはいるがずっと聞きたくなるほど。

 そんな事は、今はどうでもいいので俺は部屋のドアを開けて杪夏の顔を見て話す。


「……ごめんね……言わなくて……何も」


「そんな事はいいんだよ! 杪夏! 体大丈夫なのかよ! 心配したんだぞ!……うう……本当に、心配で心配したんだからな! うう……」


 俺は、泣きながら杪夏を抱き締める。

 杪夏は、優しく俺を抱き締めてその美しい潤んだ瞳で見る。


「……ごめんね……ちょっと、やっておきたい事があったの……」


 俺は、杪夏を抱き締めるのを止めて。

 杪夏が何をやっていたのか聞く。


「杪夏、何をやっていたの?」


「別に……何でもないよ……」


 俺は、杪夏の父親がビデオカメラを持っていたので取ろうとするが、杪夏にビデオカメラは渡されて、俺はその中身を見れなかった。


「さっきの、ビデオカメラ何を撮ってたの?」


「うーん……何でもないから……」


 俺は、話をはぐらかされて病院まで杪夏と一緒に母親の車で送って貰う。

 着くと、そこには看護師のおばさんとお姉さんと幼馴染みである立花が待っていた。


「遅い!! 創! 罰として、私に今度何か料理を作れなさい!」


「大丈夫だった?」


「本当に、創君は騒がせてくれるな! 全く!」


「ごめんなさい……俺……次から、心配させないように頑張るから……」


 俺と杪夏は、看護師達に支えられながら自分の病室に向かい、ベッドへと運ばれた。

 そして、看護師のおばさんは今日と昨日死んでしまったこの子名前を言う。


「……ごめんなさい……一応伝えとくわ……昨日亡くなった子が……浜辺海はまべかいくん……そして……今日、死んじゃた子が……磯村渡いそむらわたるくんよ……二人とも、元気いっぱいでヤンチャだったわ……」


 杪夏は、壁の方を見て泣いていた。

 それは、前のように何にも出来ないほどは落ち込んではいなかった。


「……海くん……渡くん……二人とも、何だか暴れまわっていたけど……二階堂先生には、怒ってくれたわ……手術成功させろって言いながら……じゃなければ、自分らがお姉ちゃんと遊べないからって……」


 俺は、その子供達を知らないが。

 悪い子ではなかったのだろう……

 だって、こんなに悲しんで杪夏が泣いているのだから。


「ちょっと! 四季さん! 私が創にどうにかするように言ったんだよ! お礼言ったら!」


「ありがとう……立花さん……でも、やっぱりあなたは。もうちょっと、素直になった方がいいわね……うふふふ」


 立花は、頬を膨らませて顔を赤くして照れながら杪夏を見て言う。


「何よ! 私がわざわざやってあげたのに! その言いぐさわ! それに、素直よ! 私わ!」


「いや~俺も素直になった方がいいと思うぜ! あはは!」


 立花は、また顔を赤くして俺を見て怒る。


「何よ! 創だけには、言われたくないわよ! また、グジュクジュ言い出したら。今度は何もしてあげないから!」


「はいはい!」


 立花は、顔を赤くして怒り。

 杪夏は、嬉しそうに笑っていた。

 案外、仲いいんだな……

 俺は、てっきり仲が悪くていつも喧嘩してるのかと思ってた。



 そして、暫くして立花は母親の車に乗り帰っていった。

 暫く、立花の話題をして俺と杪夏は雑談をして。

 楽しかったから、夜までその話をして喋っていた。

 杪夏は、寝る前に涙が少し出ていたが。


「大丈夫だから」


 そう言って、いつの間にか寝ていた。

 杪夏の寝顔は、やっぱりいつ見ても綺麗だ。

 俺は、そんな杪夏の顔を見ながら一時間くらいして、安心したのかようやく眠れた。

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