25日目 本好きの女の子と似ている美少女
俺は、さきに起きて杪夏の顔を見た。
杪夏は、泣いていた……
その顔からは、寂しさと切ない感じがしている。
「……皆……置いてかないで……」
俺は、杪夏は本当は苦しいんだろうと思った。
きっと、苦しい夢を見てると。
俺は、杪夏のベッドにいって彼女を優しく抱き締める。
その、苦しみから救うために……
少しでも、杪夏が悲しくならない為に……
だけど……
俺は……
何も、杪夏を本当の意味で救うことは出来ない。
病気も治してやれない。
友達を作ってあげることや、旅の思い出やこれから起こる未来につれて行ってあげることも……
無力な自分を痛感した。
俺は、好きな人の望み叶えてあげられないのだろうか……
この、杪夏を守ってあげることは出来ないのだろうか……
そんな気持ちでいっぱいになる。
「……うう……杪夏……」
俺は、自然と悔しくて涙がこぼれた。
杪夏の、その美しい顔を後少ししか見れないと思うと、何だか溢れてくる。
色んな、思い出を作れたかった。
そして、杪夏と結婚して楽しい明るい家庭を作りたかった。
きっと、幸せな家庭で満足して年を取っても一緒にいるだろうな。
じいさんばあさんになっても、俺と杪夏は離れないだろうと……
「……杪夏……愛してる……」
杪夏は、俺のそんな言葉を聞いて起きてきた。
「……私も、創のことを愛してる……」
俺は、また杪夏を優しく抱き締める。
杪夏も、俺を強く抱き締めた。
そんな光景は、自分が望んでいたものなのかもしれない。
そう思って仕方がない……
だが、そんな日も後わずかだ。
そう思うと、胸が苦しくなる。
何か、とてつもない痛みと息苦しさが俺を襲い。
耐えられなくなりそうだ。
このまま、ずっといたい。
離れたくないと思ってしまう。
杪夏と俺は、抱き締めるのを止めて。
お互い見つめる。
その杪夏の瞳は、とても美しく体はきゃしゃではかない感じがする。
それから、俺は自分のベッドに戻り。
大して、旨くもない病院の食事を食べる。
いつもの、看護師のおばさんとお姉さんがきて運んでくる。
静かに、何も話さずいる看護師達はある意味不気味で。
戦争があったかのように暗い。
「……」
静かな、時が流れてく……
風もそよ風が心地よく流れて気持ちがいい。
ただ、病院の雰囲気はそれと伴って重苦しい空気だった。
まるで、お通夜みたいなそんな感じだ。
まあ、当たってるかもな……
どうせ、また二階堂は手術に失敗して杪夏の大切な友達の子供が死んだのだろう。
俺は、そう思ってならない。
そんな現実認めたくないが、どうにも出来ない。
杪夏の苦しみは続くのだ。
この病院の、汚いやり方のせいで。
無意味に、それは杪夏を傷つける。
何もしてない、罪もなることも人に恨まれることもしてない杪夏をむしばむ。
むしろ、杪夏は人を救いたいと思ってる。
誰よりも、ずっと自分が一番病気が酷いのに……
人の事を思ってる。
俺は、杪夏がそう思っているのが何故か分かった。
杪夏の顔は、真っ直ぐ看護師のおばさんの方を見ていた。
多分、また嫌な事が起きるのは知っているだろう。
だけど、杪夏はめげずに看護師のおばさんに聞く。
「……話して下さい……どうなったんですか……誰が、手術したんですか……」
「……」
看護師のおばさんは、黙りこんでいた。
正直言いたくない話題ではある……
だから、看護師のおばさんが言いたくないのは分かる。
だけど、杪夏はその真剣な眼差しで見て。
答えを待っていた。
何かを、言うまで……
「……私……そんなに弱くありませんよ……だって、今まで亡くなった子供達に誓いましたから……絶対に、負けないって」
看護師のおばさんは、諦めて杪夏に誰がどうなったのか言う。
「……聞いて、ショック受けないでよ……」
その看護師のおばさんは、杪夏に根負けして仕方なく言う。
まあ、言いたくないのは誰もが思う。
特に、杪夏みたいな孤独な女の子には。
俺だったとしても、杪夏には伝えたくない。
落ち込む顔と、寂しそうな表情を見てるとなんだかやるせない。
「……
看護師のおばさんは、申し訳なさそうに自分との岬ちゃんの思い出を話す。
それを聞いて、涙が止まらなかったのか。
杪夏は、涙を大量に流して顔はグジュグジュになる。
「……グスウン……岬ちゃん……一緒に本を読みあったよね……それから、一人でいて。何だか、他人のように思えなかったわ……誰も、お見舞いに来なかったから……一緒に、寂しさをお互い話して。勇気づけて、どうにかしてたよね……うう……」
杪夏は、今回人一倍悲しく泣いていた。
この子と、一番親しかったのかもしれない。
そう思うと、こちらも心が痛み始める。
何だか、切なく寂しいような気持ちを持ち始める。
杪夏の、大切な人ほど亡くなるのは見ててつらい。
彼女の、心境を考えると二重苦だ。
本当に、なんでこんなことになるんだ。
可笑しいよ……
こんなの……
いい子の、杪夏がなにをしたって言うんだよ。
何もしてないだろ。
俺は、こんなくそみたいな真実望んでない。
もっと、明るく誰も不幸にならない世の中が作られてると、杪夏に出会うまでは思ってた。
だが、それは大きく違った。
現実は、いともたやすく大切な人の命を奪う。
「……俺……ちょっと、トイレ行ってくる……」
俺は、トイレに行きたくなって。
少しの間、病室からでていく。
松葉杖を使って……
数分して戻ってきたら、杪夏と看護師達は小さな声で何かを話してるが何を言ってるのか分からなかった。
杪夏が、泣き止んでいたので良かった。
それから、沈黙が続く。
そして、夜になり。
杪夏は、俺よりも早く寝た。
俺も、杪夏の顔を見ていつもの冷静な表情になっていて安心した。
だけど、杪夏と看護師のおばさんが話していた内容が気になっていたが、大したことじゃないだろうと納得して眠る……
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