23日目 勝ち気な女の子と美少女の告白
俺は、杪夏が昨日泣いていた事を思い出す。
本人は、まだ寝ているが。
だけど、本当は苦しいんだと思う。
苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくてどうしようもない気持ちで……
いっぱいだ。
誰が、杪夏の責められるか。
俺は、そんな奴は絶対に許さない。
たとえ、どんな事をしたとしても仕返しをする。
杪夏の寝顔を見ながら、そう誓う。
この顔が見れないと思うと、何だか寂しくて切ない……
俺は、本当に正しいのだろうか……
何か間違ってるのだろうか……
そう言う、何かが俺の心をむしばむ。
こんな、なんとも言えない気持ちは始めてだ。
今まで、こんなに人を愛する事をなかった……
俺は、きっと入院生活杪夏の美しい姿を見たいが為に居たんだと思う。
そして、杪夏はあの看護師達が噂をしていたが、八月までしか生きれない。
朝早く、デカイ声で噂話が聞こえていたから分かる。
決して、この前みたいに盗み聞きしていたわけではない。
そう思うと、俺も涙がでてくる。
「……うう……俺と……一緒に居てくれよ……頼むよ……うう……」
俺の声は、誰にも届かなかった。
だけど、それでいいんだ。
だって、もしも杪夏に届いたら彼女は耐えられない。
そして俺もだ……
一時間くらいして、俺は泣き止み。
杪夏も起きてくる。
「……おはよう……斎藤君……」
「……おはよう……四季さん……」
その他人行儀な、喋り方で俺と杪夏話す。
お互い、本当はすごす時間は少ない……
後、一週間もすれば杪夏がいなくなると思うと俺は……
何だか、また悲しくなってきた。
例えるなら、闇の中に一人だけいる感覚。
「……今日何があるんだろうね……」
「……何があるんでしょうね……」
その他愛もない会話わ。
特に何の意味もない。
だけど、俺にとっては本当に大切な思い出になるかもしれない。
そんな、気がしてならない。
そんな会話をしていると、朝食が運ばれてくる。
看護師達により、いつもの大して旨くもない刑務所の方がマシな飯だ。
俺は、この飯が嫌いだし。
この病院も嫌いだ。
だけど、本当に残り少ない時間しかない杪夏との限りない時間だから大切にしたい。
また、どうせろくな報告がないんだろうなと思う……
どうみても、看護師達は黙り込み。
何も言わないで、俺たち患者のご飯を運ぶ。
毎日、戦争があるかのような顔をして。
何も、希望はないと言わんばかりに……
「……おばさん……俺は、どうしたらいいと思う……」
看護師のおばさんは、そんな俺の質問にこう答える。
「……それは、あなたしか分からないわ……だけど……きっと、あなたなら後悔しない道を行けるわ……」
それは、答えになってなかった。
どうみても、看護師のおばさんは普通の顔をしてなかった。
いつものように、明るい顔もしてない。
本当に、悲しんでいる。
自分の罪と戦ってるような……
「……ごめんなさいね……いつも、こんな料理しか出せなくて……」
俺は、おばさんの謝罪は何となく可笑しいと思った。
謝るべきは、あの二階堂とか言う医者のほうだ。
結局、看護師のおばさんも逆らおうとしたんだな……
苦しいのは、自分だけじゃないな。
全員苦しいんだ。
「……おばさん……止めたの……だけど、ダメだった……本当は、二階堂先生が手術しなかったら……助かったの……」
看護師のおばさんは、涙を流して俺と杪夏に頭を下げる。
「……ごめんね……うう……あの子達を救えなくて……うう……杪夏ちゃん! あなたのお友達を、死なせてしまって……うう……」
「……私は、平気だから……分かってるから……皆、優しいって……だから、泣かないで……おばさんは、悪くない……悪くない……」
自分も辛いのに、そう言う杪夏は何でこんなに優しいくて、いい女の子なのに神様は救ってくれないのだろう。
現実って、なんて残酷で理不尽最悪なんだ。
この世界は、可笑しいのかもしれない。
俺は、この世のシステムが支配されてるのかもと思ってしまう。
全部、二階堂とか言う家系に。
そう言えば、上級国民と言う言葉を耳にしたことがある。
何で、腐った奴らがのうのうと生きてて。
杪夏みたいな、頑張っている人は報われないのか。
余計に、その事実は俺を責め立てる。
たとえ、頑張っても、頑張っても、頑張っても報われない……
そう思いながら、俺は食事をとる。
泣きながら、亡くなった杪夏の友達を思いながら。
「……うう……もぐもぐ……うう……」
俺は、やはり二階堂が言うように世間知らずで、現実を知らないのかもしれない。
だけど、アイツみたいに割り切ることなんて出来ない。
人の心を持ってるから、あの二階堂とか言う医者と違って。
二階堂が、どんなに自分の恋人が死んで悲しんだかは知らない。
自分の無力感に襲われて、精神的にダメージをくらったかは知らない。
これから、俺は杪夏の為に支えていかなくてはならないんだ。
「……杪夏……愛してる……俺は、お前を裏切らない……」
杪夏は、再び泣いていた。
俺の言葉を聞いた、杪夏は何故か笑顔だった。
看護師のおばさんは、申し訳ないように言う。
「……ごめんなさい……また、死んじゃったの……杪夏ちゃんの友達の子が……名前は、
「……真知子ちゃん……うう……私頑張るから……勝ち気だった、真知子ちゃんのぶんまで……」
杪夏は、泣き止み。
俺の方を向いて、意外な言葉を発する。
それは、俺が待ち望んでいた言葉だった。
「……私と付き合って下さい……斎藤創君……」
俺は、真剣な杪夏を見て。
心が、どんどん清んでいく。
最初は、こんなに真剣に付き合うと思ってなかったかもしれない。
今は、杪夏と真剣に付き合いたい。
どんな事が起きても、杪夏は離さない。
そう誓い、俺は杪夏の告白の返事をする。
「……こんな俺でもいいなら……喜んで……」
「……いや! あなただからこそいいの……あなたじゃなければ嫌だわ……」
そんな意外な事を聞いた。
俺は、ここまでの杪夏の熱い恋愛感情があると知らなかった。
その後、暫くして夜になり一緒にベッドでまた寝る。
「もう、離さないからな……」
「……絶対に……離さないでよね……私、そう言う事があったら怒るから……」
俺は、ベッドの中で杪夏の体が当たり少し離れようとする。
「……離さないと言ったのに……もう」
「……ごめん……体当たってて……それで……」
杪夏は、笑いながら俺の方を見てこう返す。
「冗談よ……ふふふ……」
俺は、本当に幸せものだな……
だけど、こんな幸せもいつかは無くなると思うと……
何だか、切なくなってくる。
この夜は、俺にとってかけがえのない思い出になるだろう。
ずっと先の未来でも……
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