22日目 彼女の悲しみを慰める少年
俺は、やはり二階堂はろくでもない奴だと思う。
そんな、どうしようもない医者に大事な人の命を預けるなんて、どうしても出来ない。
だけども、現実は二階堂は医者で名医と呼ばれてるらしい。
どうやら、上の偉い親のおかげでどうにかそれは広まらないようだ。
実際は、ダメな医者で口ばかりの見栄とプライドぐらいしかない。
この、腐った大人のシステムはいい加減なくなってほしい。
じゃなければ、医者の世界も腐っていき。
まともな、人間はこの世界にいなくなるぞ。
それでもいいのかよ。
そもそも、医者ってのは人の命を救うのが仕事だろ。
偉いからって、なんだって言うんだよ。
そんなもん、何の意味もないだろ。
だって、誰も治せないんだったらこの世に医者なんていらないだろ。
一人残らず、いらねぇよ。
そして、一時間くらいたち……
杪夏は、起きてくる。
だが、そのようすは何か正気が奪われたような顔をしていて。
目に光がなく、ぼうぜんとしていた。
「大丈夫か!? おい! 杪夏!! 杪夏!!」
「……また……私の大事な人が死ぬんだわ……私の大事な……」
杪夏は、虚ろな状態だった。
俺は、杪夏を抱き締めるがその表情は相変わらず、何処か魂が抜けた感じだ。
そんな姿を見てると、こっちも悲しくなってくる。
何か、最初に会ったときと同じで重苦しい空気が流れる。
それは、こっちまで憂うつになってくるほどだ。
「もう……終わりよ……」
杪夏は、恐れいたかもしれない。
自分と、仲良くしてくれる人がいなくなることを。
そして、自分が本当に孤独になり。
心が、歪んでいき寂しさだけが残ることも。
それから、暫くして食事が運ばれてくる。
正直に言って、今はとてもじゃないけど食べれる雰囲気ではない。
看護師のおばさんとお姉さんは、不思議そうに見ていた。
それで、俺と杪夏に話しかけてくる。
「どうかしたの? 杪夏ちゃん?」
俺は、看護師のおばさんにそう言われて何だか気分が悪い。
確かに、杪夏は暗いし目に光がない。
だけど、こうなったのは医療従者の問題でこうなったのだから。
この人達が、原因であるのが確実に言える。
「あんたらが悪いんだよ」
「え?」
看護師のおばさんとお姉さんは、不思議そうに首をかしげて見てる。
その光景は、まさに他人事と言ったところだ。
だから、そこに腹が立った。
自分達は、何も悪くないし知らないと言った態度に。
「あの、二階堂を止めなかったから……」
「だから、止められないのよ!」
それは、言い訳のように聞こえたので。
俺は、さらに看護師達に追い込みをかける。
「じゃあ! 何で! あんな、医者なんかに気を遣うんだよ!!」
「それは……」
まあ、分かってはいる。
この看護師達も、医者の方が上で逆らえないのは。
だけど、杪夏にはそれは関係ないし。
患者も、医者を選べるはずだ。
「それに……どうせ、また杪夏の知り合いの子が死んだんだろ!」
「まあ……それは……そうだけど……」
その看護師達からは、何となくそう伝わった。
看護師のおばさんは、ビックリしていたようだがそんなもん雰囲気や態度で分かる。
「止めてくれ! 頼みますから……」
「……私達には……それは、出来ないわ……ごめんなさい……」
ふざけるなと、思ったが。
どうにもならない。
それの原因は、分かってる……
だけど、俺は杪夏にこれ以上悲しんでほしくない。
何よりも、杪夏の泣いている姿を見ると。
こっちも、心が痛むんだ。
とても苦しく、胸のあたりが凄く痛い。
その痛みは、どんどん激しくなる。
「お願いします……もう……杪夏を、苦しませないで下さい……」
俺は、頭を下げて頼みこうが。
看護師達は、下を向いて暗い表情をしながら、何も言わない。
「一応……教えておくわ……この病院は、あの二階堂の父親に支えられてるの……今回、死んでしまった。
「……良平君が……うう……あの……うう……」
看護師のおばさんに、死んだ子の名前を言われたら杪夏は泣いていた。
その思い出や、今までその良平とか言う子供といた事を思い出しながら……
「……うう……良平君は……私が苦しんでいるときも……さざえてくれで……うう……」
俺も、その表情を見るたび悲しく心がズキズキする。
そんな、絶望に近いこの現実に色んな出来事を思い出す。
俺と杪夏の入院生活も……
きっと、終わりがくるんじゃないかと……
そう思うだけで、俺は……
何だか、この世の中が暗い世界だと思えてくる。
苦しいんだろう……
生きるって……
そう思うだけで、立ち直れなそうだ。
こんなことを、今まで杪夏が感じてきたと思うと俺の慰めなんか無駄かもしれない。
杪夏は、川上良平と言う子供との出来事を話し始める。
「……私ね……良平君に励まされてたの……創が居ないとき……お父さんも、厳しいの分かってるでしょ……そんな私を励ましてくれた……しかも、自分もしんじゃうって分かってたのに……だけど……本心から、僕はきっとお姉さんは大丈夫だと思う。だって……お姉さんは、頑張ってるから!……って。……うう……良平君……」
俺は、やはり二階堂だけは許せねぇ。
きっと、アイツが改心したって許したくない。
こんなにも、人のことを思ってる。
杪夏が、死んでしまうなんて。
この世は、おかしい……
だから、俺は……
「だから! 俺は! 杪夏に!」
俺は、叫び続けた。
それが、どんなに無駄なことでも。
どんなに、頑張ってもダメだとしても。
俺は、杪夏を助けてやりたい。
そして、夜になる。
俺は、泣いている杪夏を俺のベッドに寝かせて寝るまで優しく抱き締める。
その、悲しみをほぐす為に……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます